第15話「パーティーへの誘い」
次の日の朝、俺達は冒険者ギルドに行き、受付でギルドの身分証を受け取る。
ちなみに受付にいたのは、昨日冒険者の手続きをした時と同じ女性だった。
「これで依頼を受けられるのか?」
「はい、ですがお二人はまだ新人なのでFランクの依頼しか受けることはできません」
どうやら最低ランクの依頼しか受けられないようだ。
「Fランクでも、町で起きている子供の行方不明事件に関する依頼を受けることはできますか?」
俺の隣にいたイーリスが受付の女性に質問する。
「はい、可能です」
受付の女性はそう言うと、近くにあった机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
「まずこちらをご覧ください」
受付の女性が見せてくれた紙には、こう書かれていた。
※緊急依頼『行方不明の子供の捜索』
依頼主 子供達の親
条 件 S~Fのすべてのランクの冒険者 他の依頼と重複可能
報 酬 5000~50000G
内容:『テルミロの町』で行方不明になった子供18人を捜索。
下の方には、行方不明になった子供達の名前と性別や年齢が書かれていた。
年齢は4歳~12歳と幅広く、性別は男の子8人、女の子10人だった。
「こちらは緊急依頼なので、他の依頼よりも報酬が高くなってます……冒険者ギルドとしても、ぜひ解決して欲しい依頼ですね」
やはり冒険者ギルドも、行方不明事件を解決したいと思っているようだ。
「それじゃあこの依頼、俺達二人が受けるぜ」
「わかりました、よろしくお願いします」
「あの、他に情報等は無いんでしょうか?」
昨日、冒険者ギルドから戻ってから、宿屋や食堂の店員に事件に関する事を聞いてみたが、あまり詳しいことはわからなかった。
だが、冒険者ギルドなら何か詳しい情報がわかるはずだ。
「そうですね、それなら……」
「それならオレが教えてやるよ」
背後の声に後ろを振り返ると、鎧を着て大剣を背負った、黒髪で30代後半くらいの筋肉質な男が立っていた。
顔には髭が生えており、なんだか熊っぽい顔をしている。
「なんだ、おっさん?」
「嬢ちゃん達、新人の冒険者だろ?オレ達のパーティーもその依頼を受けてるんだが、良かったら一緒に捜さないか?」
熊みたいな男は、そんな事を言い出す。
「この人は、ベアボルトさんといって、この町でもベテランの冒険者なんです……怪我をしてからは新人さん達の面倒をよくみてるんですよ」
受付の女性が説明してくれる。
ようするに世話焼きのおっさんということだろうか?
「ベアボルトだ、よろしくな」
「どうもイーリスと言います」
「俺は、イブキだ」
「あたしは、コハクだよ」
するとベアボルトは、コハクを珍しそうな顔で見ていた。
「その娘は、人間じゃないみたいだな」
「えっと、それは……」
イーリスは、説明するべきか悩んでいるようだ。
今のコハクをドラゴンだと言っても、ベアボルトは信じないだろうし、余計な事は言わないほうがいい気がする。
「まあいいさ……それより、一緒に子供達を捜さないか?無理にとは言わないが、この町の事を知ってるやつがいた方が捜しやすいと思うぜ」
確かに俺達はこの町の事をよく知らないし、町に詳しい人間がいたほうが捜しやすい気がする。
「どうするイーリス、俺は一緒に捜してもいいと思うけど?」
「そうですね……念のため他のメンバーも確認させてもらってもいいですか?」
「ああ、別に構わないぜ、それじゃあこっちに来てくれ」
ベアボルトについて行くと、ギルド内で雑談場所になっているテーブル席に向かっていく。
そこには茶色の髪をした青年と少女が座っていた。
「この二人が俺のパーティーメンバーだ」
するとテーブルに座っていた茶色の髪の少女が俺達に視線を向ける。
「あっ、ベアボルトさん、その人達が助っ人ですか?」
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
突然、茶色の髪をした青年が大声をあげる。
「イブキちゃんじゃないか!!また会ったね!!やっぱりこれは運命なのかもしれない!!」
そう言って、青年は俺に近づいてくると手を掴んでくる。
よく見ると、その青年は昨日会ったロイとか言う男だった。
「おまえは昨日の……とりあえず手を離せ」
俺はロイに掴まれた手を振りほどく。
「あっ、もしかして、昨日兄さんがナンパしてた人ですか!?」
少女の方は、確かルウとか呼ばれていた気がする。
どうやら昨日会った二人で間違いないようだ。
「イブキ、知り合いですか?」
「昨日ギルド前で会っただけだ、詳しいことは知らない」
まさかこの二人がベアボルトの仲間だとは思わなかった。
「イブキは、もう面識あるみたいだけど、一応紹介しておくぞ……その軽そうな茶髪の男がロイだ、とりあえず魔法使いだな」
「とりあえずってなんですか!?僕は立派な魔法使いですよ!!」
ロイが文句を言うが、ベアボルトは無視して話を続ける。
「それでこっちの娘がロイの妹のルウだ、この娘も魔法使いだな」
「はじめまして、ルウ・ガルセイドです、よろしくお願いします」
ルウは俺達に向かって頭を下げる。
「イーリス・アルトリアです、よろしくお願いします」
「イブキ・ユーフレットだ、よろしくな」
「コハクだよ、お姉ちゃんよろしくね」
コハクは、そう言うとルウに向かってにっこりと微笑んだ。
「か、かわいい……」
ルウは、コハクを見ながら目を輝かせていた。
「ロイの性格はともかく、二人とも魔法使いとしての腕は悪くないと思うぞ」
「性格はともかくってなんですか!?」
「兄さんの女好きが異常だからでしょ、かわいい娘を見かけたらすぐに声かけるんだから……」
「言っておくけど、僕はかわいい娘だけじゃなくて、美人なお姉さんにだって声をかけるよ!!」
ロイは、そんなどうでもいい事を言い出す。
ようするにロイは女好きってことらしい。
「こいつらの紹介はこんなところだが、どうする一緒にパーティーを組んでみるか?」
騒がしい連中のようだが、悪い奴らでは無いような気がする。
一緒にパーティーを組んでも問題無いだろう。
「ああ、俺は構わないけど……」
「そうですね、お願いします」
イーリスも問題無いと判断したようだ。
「それじゃあオレ達は、これから同じパーティーの仲間だ」
「イブキちゃんと同じパーティーになれるなんて僕は幸せ者だな……これもやっぱり日頃の行いがいいからかな♪」
なんでロイは、俺がパーティーに入ってそんなに喜んでいるんだろう?
「兄さんの戯言はどうでもいいとして、イーリスさん達の事を教えてもらっていいですか?」
「そうですね、私達の事も話しておきましょうか……」
イーリスは自分が王女だということを隠して、竜騎士になるために王都を目指して旅をしている事等を簡単に説明した。
「ほう、二人は竜騎士を目指しているのか……なるほど、確かにそこらの冒険者よりも腕は立ちそうに見えるな」
「竜騎士か……可憐なイブキちゃんにはぴったりだね!!」
「コハクちゃんってドラゴンなんですか!?」
イーリスの話を聞いた3人はそれぞれ違う反応を見せる。
「でも、それならなんで冒険者なんかになったんだ?」
「冒険者になれば、今起きてる行方不明事件の情報を集められると思ったんだ」
ベアボルトの質問に俺はそう答える。
「今町で起きてる事件は、おまえさん達には関係ないと思うんだがな……」
「関係あります、竜騎士を目指す者として、今町で起きてる事件は放っておけません」
イーリスがベアボルトの方を見て、はっきりと答える。
「だが、騎士団は動いてないようだぞ?」
「だからこそだ、騎士団が動かないなら俺達で解決してやるさ」
「ふっ、若いな……だが、そういう考えは嫌いじゃねえぜ」
そう言うとベアボルトは、にやりと笑った。
「さすがイブキちゃんだね、僕も今回の事件は放っておけないと思っていたのさ」
「兄さんは、また調子のいいこと言って……まあ私も今回の事件は放っておけないと思ったけどね」
ロイとルウも町で起こっている行方不明事件を解決したいと思っているようだ。
「そういえば事件について教えてくれるって、おっさん言ってたよな?」
「そうだったな、それじゃあまずはこれを見てくれ」
ベアボルトがテーブルの上に地図を広げる。
そこには、冒険者ギルドの場所や俺達が泊まっている宿屋の場所が書かれていた。
どうやらこの町の地図のようだが、なぜか赤色の×印がたくさん付けられている。
「この町の地図みたいですけど、この×印はなんですか?」
「それは行方不明になった子供達が最後に目撃された場所だ」
×印がついているのは、宿屋の近くの公園や町外れにある空き地の周辺が多い。
「それじゃあ公園や町外れの空き地が怪しいってことか?」
「そうなんだが、いくら調べても何も見つからなかったんだ……」
どうやら、すでに調査済みのようだ。
「他の冒険者達は、この事件を調べていないんですか?」
「もちろん調べてるさ、だがこの町の冒険者は他よりも少なくてな……高ランクの優秀な冒険者は大きな街に行っちまうし、こういう依頼を解決できる冒険者がいないんだ……まったく情けない話だぜ」
そう言うとベアボルトは、ため息をついた。
町に冒険者ギルドがあるからといって、優秀な冒険者がいるとは限らないようだ。
「仕方ありませんよ、この町じゃCランク以上の依頼なんて滅多にありませんし、稼ぎたい人はみんな他の町に行ってしまいますから」
「そうだね、この町にいる冒険者はCランク以下の人ばかりだし、今回みたいな大きな事件は少し荷が重いかもね」
ルウとロイの話を聞く限り、他の冒険者達にはあまり期待できないようだ。
「なら俺達で解決すればいいさ」
「そうですね、私達で子供達を見つけましょう」
「あたしも手伝うよ!!」
俺達がそう言うと、ベアボルトが嬉しそうな顔をする。
「へへ、やっぱり若いってのはいいな……それじゃあもう一度公園と空き地を調べてみるか、イブキ達ならオレ達とは違った視点で調べることができるかもしれないしな」
違う視点か……俺が調べて何が変わるかはわからないが、イーリスやドラゴンのコハクなら何かに気づくかもしれない。
「それじゃあ、公園を調べるチームと空き地を調べるチームに分かれるぞ」
「はい!!はい!!それなら僕はイブキちゃんと一緒のチームがいいです!!」
そう言って、ロイが騒ぎ出す。
「ロイはオレと同じ空き地を調べるチームだ、イーリス一緒に来てくれ」
「はい、わかりました」
「そ、そんなぁ……」
ロイは絶望した表情で地面に膝をつく。
そんなショックを受けるほど、俺と一緒に調べたかったのだろうか?
「あの空き地なら女性が通ることもほとんどないし、兄さんはそっちで決まりね」
「それじゃあ俺とコハクは……」
「イブキとコハクは、ルウと一緒に公園を調べてくれ」
イーリスを別行動させるのは、正直心配だな……。
「大丈夫ですよ、ベアボルトさんだって付いてるんですから、そんな心配そうな顔しないでください」
どうやら表情に出ていたようだ。
「そうだな」
別にイーリス一人で行くわけじゃないし、そこまで心配する必要はないか。
「僕だって付いてるし、安心してよイブキちゃん」
絶望から立ち直ったロイが話しかけてくる。
「……」
「なんで何も言ってくれないの!?」
ベアボルトは見るからに強そうだが、ロイの実力は正直わからない。
「町の中で戦闘になることなんて、ほとんどないと思いますし、大丈夫ですよイブキさん」
ルウの言うとおり、町の中ならそこまで危険な事は無いだろう。
「それに何かあっても、私と兄さんは遠話魔法で会話できますから安心してください」
「遠話魔法?」
「簡単に説明すると遠くの人と話せる魔法です、まあ会話するにはお互いに遠話魔法を使えないといけないんですけど、片方だけだと一方的にこちらの声を聞かせるだけになってしまいますから」
そんな便利な魔法があったとは知らなかった。
「遠話魔法を使えるなんて珍しいですね」
「そうなのか?」
「魔法というのは、治癒魔法と属性魔法が基本で、それ以外の魔法を使える人は極端に少ないんです」
そういえば、シズクの使っていた符術も珍しいとイーリスが言っていた気がする。
「それじゃあそろそろ出発するぞ、準備はいいか?」
「ああ、行こう」
俺達は、冒険者ギルドを出ると二手に分かれ、それぞれの目的地へと向かった。
俺はルウとコハクの二人と一緒に、宿屋の近くの公園に向かって歩いていた。
すると、隣を歩いていたルウが話しかけてくる。
「あのイブキさんって、何歳なんですか?」
「15だけど」
おそらくルウも同じくらいの年齢だろう。
「あっ!!それじゃあ私達、同い年ですね!!」
俺が同い年だとわかって、ルウは嬉しそうな顔をする。
「私、同い年の友達って今までいなかったので……そのなんていうか、ちょっと嬉しくて」
「そういえば、俺も同い年の友達っていないな」
トロルの村にいた時は、みんな年上か年下だった。
「そうなんですか!?それじゃあ私と……と、友達になってもらえませんか?」
「別にいいぞ」
特に断る理由も無い。
「ありがとうございます!!」
「そんじゃ敬語は無しにしようぜ、ロイと話すのと同じように話してくれていいからさ」
そっちの方がこっちとしても話しやすい。
イーリスは誰にたいしても敬語なので特に気にならないが、ルウの場合はロイと話してるのを見てるせいか違和感を感じる。
「そ、そうだね……それじゃあ、私もイブキちゃんって呼んでもいいかな?」
「えっ!?」
なんで兄妹揃って俺をちゃん付けで呼びたがるのだろう?
「あっ、ダメならいいの!!気にしないで……」
そう言って、ルウは悲しそうな顔をする。
「……ロイも呼んでるし別にいいぞ」
「ありがとうイブキちゃん♪」
ルウが嬉しそうに笑う。
「イブキちゃんって、すごくかわいいのに話し方とか態度とかなんだか男らしくてカッコイイね!!」
「かわいいは余計だ」
だが、カッコイイと言われるのは悪い気はしない。
「っていうか俺よりもルウの方がかわいいだろ」
男の俺よりも、女のルウの方がかわいいに決まっている。
「わ、私なんて全然だよ!!兄さんも私のこと全然女の子だと思ってくれてないし……」
「もしかしてルウってロイの事、好きなのか?」
俺がそう言うと、ルウの顔が真っ赤になる。
「な、な、な、なんでわかるの!?」
「いや、なんとなく言ってみただけだ」
特に意味は無い、なんとなくそうなのかと思ったので聞いてみただけだ。
「もしかして、イブキちゃんって料理とか掃除とか家事が得意だったりするの?」
「えっ、まあそれなりにな」
トロルの村にいた時は、村長の家の家事は俺がほとんどやっていた。
「やっぱりかわいい娘は女子力も違うのね……私の気持ちを見抜けたのも納得ね」
よくわからないが、ルウは勝手に納得しているようだ。
「私は兄さんの妹じゃなくて、本当は従妹なんだ……まあ兄さんからしてみたら妹と同じかもしれないけど」
髪の色も同じだし、なんとなく顔立ちも似てるから、てっきり本当の兄妹かと思っていた。
「ねえイブキちゃん、男の人ってどういう女の人が好きなのかな?」
ルウは、なぜかそんな質問を俺にしてくる。
もしかして男の俺に意見を求めているんだろうか?
「男はみんな大きな胸が好きだって、俺の知り合いが言ってたぞ」
昔、ブライアンが人間の男はみんな大きな胸が好きだと言っていた気がする。
俺自身もイーリスの大きな胸が気になる時があるし、間違ってはいないだろう。
「やっぱり胸か……うん、知ってた」
ルウは自分の小さな胸を触ると、落ち込んでしまった。
「そこまで気にしなくてもいいと思うけどな」
別に胸だけが女性の魅力だなんて、俺は思っていない。
「そうだね……イブキちゃんがそう言うとすごく説得力があるよ」
なぜか俺の胸を見て、ルウは納得していた。
「パパは大きいおっぱいが好きなの?」
するとさっきまで黙っていたコハクがそんな質問をしてくる。
「まあどちらかと言えば、好きかもな……」
そうでなければイーリスの胸が気になったりはしないだろう。
「そうだよね、大きな胸は女の子の憧れだもんね!!」
隣にいたルウが力強く頷く。
「そうなんだ……あたし、パパのためにがんばって大きくなるね!!」
「別にコハクががんばる必要はないと思うぞ」
コハクにはそのままでいて欲しい気がする。
「ところで、なんでイブキちゃんがパパなの?」
ルウが不思議そうな顔で俺に聞いてくる。
どうやら俺がパパと呼ばれているのが気になったようだ。
「ああ、コハクにとってイーリスがママで俺がパパらしい」
「なるほど、そういう遊びなのね……確かにイーリスさんよりもイブキちゃんの方がパパって感じだもんね」
遊びというわけではないのだが、否定するような事でもないし別にいいか。
その後も、ルウと話しながら歩いていると公園の入り口が見えてきた。
「あっ、公園が見えてきたね……イブキちゃんと話してると楽しくて、なんだかあっという間に着いちゃった気がする」
「ああ、俺も楽しかったよ」
同い年のせいか、ルウはなんだか話しやすい感じがする。
「それじゃあ調査が終わったら、またお話しようよ」
「ああ、いいぜ」




