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ロストアタッチメント  作者: ガル
天使の子供
9/20

6章





 セイレンがその子供を見つけたのは、入り浸っている公共書庫の帰りのことだった。

 もうすぐ休みがあけ、王都に戻ることになっていたセイレンは、適当に土産を見繕おうと、繁華街まで足を延ばしていた。

 考えるのも面倒くさいので、店主が勧めるものでいいから買おうとしていたセイレンは、ふとそこで隣の店の軒下にうずくまっている子供を見つけた。

 短く切りそろえられた白い髪。白い肌。子供らしい肢体はすんなりとしていたが、男か女かは判別できない。

 背中に何かあるのか、時々気にするような仕草をしていて、それが妙に気になった。怪我でもしているのだろうか。

「……大丈夫か?」

 声をかけると、子供が顔をあげた。じろりとにらみつけられる。

 その苛烈な黄金の目に、セイレンはまばたきを繰り返した。この顔は。

「……トール?」

 数日前、シュエと一緒にいた子供の名前を呼ぶと、相手は目に見えてうろたえた顔をした。

 印象的だったその目は、間違いなくトールと同じものだったが、いかんせん身長が違いすぎる。

 シュエと一緒にいた子供は4、5歳に見えたが、今目の前にいる相手は、シュエや自分とそう変わらないように見えた。血縁者だろうか。

「トール、じゃないな。あいつの親戚か?」

「……ああ、誰かと思ったらあなたか。セイレン」

 得心がいったように、子供はつぶやいた。落ち着いた綺麗な声だ。

「おれを知ってるのか?」

「はぁ?なに言ってるの?この前会ったばかりで……ああ、そっか。そうだよね」

 子供はひとり納得したようにうなずくと、気だるそうに立ち上がった。身長はセイレンよりも少し低い。シュエと同じくらいだろうか。

 子供は少し首をかしげて言った。

「あなたのことはシュエから聞いてるから。幼なじみなんだよね?」

「そうだが……おまえは?」

「自分?自分は……トールの親戚?で、いいか」

「どうして疑問系なんだ?」

 怪訝そうに問うと、子供は肩をすくめた。

「詳しく説明するの、面倒くさかったから。別に間違ってもいないし」

 そういう問題だろうか。でもシュエのことも自分のことも知っているのだから、親戚というのは本当だろう。

 しかしトールはおとなしい素直な子供だったが、目の前の相手はどこか皮肉屋の雰囲気があった。顔の造作はともかく、性格はあまり似ていなさそうだ。

「おまえは?」

「うん?」

「名前」

「名前?自分の?ああ……」

 子供は視線を横にさまよわせた後、ぽつりとつぶやいた。

「トール」

「は?」

「は?って、失礼だね。あなたが聞いたのに」

 不服そうに子供が告げる。

「悪い。だが、同じ名前なのか?」

「まぁ、そうだね」

 あっさりと子供ーートールが答える。同じ名前なんてややこしい。というか、普通身内で同じ名前をつけるだろうか?

「間違えたりしないのか?」

「間違えられないよ。そもそも名前なんて呼ばれないんだから」

 どこか腹立たしそうに、そしてどこか寂しげにトールはつぶやいた。

 何か含みのある口調だったが、待ってみてもそれ以上トールは何も言わない。気のせいだったのだろうか。

 無意識にか、再びトールは背中を気にした仕草をした。手を軽く当て、顔をしかめている。

「……怪我でもしているのか?」

「はぁ?」

「さっきから気にしているだろう。背中」

 ああ、とトールは冷めた顔で言った。

「別に。少し痛いだけ。……それより聞きたいことがあるんだけど」

「なんだ?」

「あの人って、どういう人?」

 投げかけられた質問は非常に唐突で、セイレンは眉をひそめた。

「誰のことだ?」

「あなたの幼なじみ」

 簡潔な答えで、誰のことを聞いているのかが分かった。シュエだ。

 セイレンはますます眉をひそめた。

「なぜ、そんなことを聞く?」

「なぜって……」

 トールは少し躊躇った後、小さな声で答えた。

「あの人の考えてることって、全然分からないから」

「……」

 その声は静かで、トールがただ興味本位に聞いているわけではないと分かる。セイレンは小さく息をついた。

「……幼なじみだというが、おれだってずっと一緒にいたわけじゃない。最近は特にそうだ。おまえのほうが知っているんじゃないのか?」

「知らないよ。あの人に会って、まだ10日も経ってないし」

 確か近所に引っ越ししてきたのだとシュエは言っていたが、そんなに最近のことだとは思わなかった。

「だからあなたのほうが知ってる」

「……まぁ、そうだな」

「あの人の親ってどうなってるの?一緒に暮らしてないよね」

 いきなりトールは深いところを尋ねてきた。セイレンは渋面する。

「……亡くなった」

「死んだ?ふたりとも?」

「そうだ」

「どうして」

 セイレンは無邪気に聞いたトールを、軽く見据えた。

「他人が軽々しく話していいことじゃない。知りたいなら、シュエ本人に聞け」

「けち」

「けち?」

 その単語に渋面していたら、ふとトールが顔をあげた。人通りの多い道へと目を向けている。

 その視線を追うと、人混みに紛れて歩く兵士の姿にたどり着いた。ここ数日、この街に逗留しつづけている兵だ。

「……あれは?」

「兵士だな」

「見れば分かるよ。あれは何をしてるのか知ってる?」

 問われ、セイレンは一昨日のことを思い出した。兵士たちはそこら中で聞き込みをしているらしく、セイレンがそれに捕まったのが一昨日だった。

 確か……。

「悪魔を探しているらしい」

 記憶を掘り返しつつ答えると、トールは一瞬驚いたような表情になった。それから目を細めて聞き返してくる。

「悪魔?」

「ああ」

「この街に悪魔がいるの?」

 さぁ、とセイレンはそっけなく言う。

「いるから探しているんじゃないのか?」

「……ふーん」

 トールは目を細め、何かを考えている様子だった。それを見下ろし、セイレンは口を開く。

「気をつけろよ」

「……は?何に?」

「悪魔だ。あいつらは人間を喰うからな」

 トールは華奢で、いかにも腕っ節が弱そうだ。捕食者からしたら、格好の獲物なんじゃないだろうか。そういえば男か女かもよく分からないけれど。

 一応気を使ってそう言ってみると、トールはきょとんとした顔をした。それから愉快そうに微笑む。こう言っては何だが、悪い顔だ。

「……なにを笑ってるんだ?」

「ああ、ごめん。あなたがあまりにもおかしなことを言うから」

「何か変なことを言ったか?」

 眉をひそめて聞き返すと、トールはゆるく微笑した。

「心配しなくてもいいよ。クソ悪魔なんかに喰われるほど、弱くないし」

「クソ悪魔?」

「うん」

 綺麗な顔立ちをしている割に毒舌らしい。親の顔が見てみたいものだ。

「とにかく自分は大丈夫。心配するなら、あの人に言ってよ」

「あの人?シュエか?」

「そう」

「あいつは心配するだけ無駄だ。人の言うことなんて聞かない」

 ため息混じりにつぶやくと、トールも思い当たる節があるのか「本当だよね」と力強くうなずいた。







 待っても待ってもなかなか帰ってこない相手に痺れを切らして、シュエは家の外に出た。

 一体どこまで行ったのだろうと探してみても、なかなか見つからない。

 焦ったシュエが街のほうに足を伸ばしてみると、子供があぜ道をひとりで歩いてくるのが見えた。

「あー、もうやっと見つけた」

 息を乱したシュエに気づくと、相手は一瞬だけ目をみはった。

「……探しに来てくれたの?」

「そーですよ。全くもう、全然見つからないし。どこに行ってたんですか?」

 子供は「街に」と、ぽつりと答えた。

「街に?なんでまた」

「なんでって別に……そこしか思いつかなかったから」

 そういえば子供が外に出かけたことがあるのは、そこだけだ。シュエは息をついた。

「まぁ、いいや。帰ろ?」

 踵を返そうとしたシュエの腕を、子供がつかんだ。

 振り返ると、首もとに腕が伸びてくる。と思ったら、次の瞬間、べろりと襟元を広げられた。

「こらこらこら」

 呆れながらその手を叩くと、今度はその手をとられ、裏表ひっくり返しながらまじまじと見つめられた。仕方なくシュエは子供の好きにさせる。

 やがて満足したのか、子供は手を離した。

「噛まれなかったんだ?」

「当たり前。ってか、あんたが釘さしていったんですよ?」

「あなたたちにその分別があるとは思わなかった」

 あなたたち、と一括りにされ、シュエは憮然とした。どうやらふたりとも信用がないらしい。

「ヤンが言ったんですよ。『腹は減ったけど、あいつに切り刻まれるのはやだから、もう少し我慢する』って」

「ふぅん?せっかく正当な理由がもらえると思ったのに」

「切り刻むための?」

「うん」

 真面目に答えられ、シュエは小さく吹き出した。

 子供はこんなことを言っているが、そもそもシュエとヤンをふたりきりにした時点で、ある程度ヤンのことを信用している証だと思う。

 笑うシュエを見て、子供が不機嫌になった。

「……なに笑ってるの?」

「いや、別に。さ、そろそろ帰ろ?」

 促してみるが、子供が歩き出す様子はない。

 視線を向けると、どこかふてくされた顔をしていた。そういう表情をしていると、本当にまだ幼いのだと実感する。

「ほら」

 手を差し出すと、子供はそれをじっと見つめた。しばらくすると、ひんやりした掌が握り返してくる。

 促すように引くと、今度は子供も大人しく一緒に歩きだした。

 ほんの数日前もこうして手を引いて歩いたのに、今は少し妙な感じだ。背丈だけなら、もうシュエとほとんど変わらないせいかもしれない。

 無言のまま歩いていると、少しして子供がぽつりとつぶやいた。

「……セイレンに会ったよ」

「セイレンに?」

 シュエは笑った。

「どうせ書庫にでも入り浸ってるんでしょ?あいつらしー」

「もうすぐ王都に戻るって」

「あー、そうなんですか?休暇、もう終わりなんだ」

 答えながら、セイレンとこの子供が会話するのを想像してみるが、なんだか不思議な感じだった。ちゃんと会話が成り立つのだろうか。

 そこまで考えたシュエは、あることに気づいた。

「っていうか、セイレン、あんたのこと分かったんですか?」

 以前会ったときは、まだ小さかったはずだ。

 尋ねると、子供はこくりとうなずいた。

「たぶん別人だとは思ってるけどね。トールの親戚かって聞かれたよ」

 トールという名前に、無意識に緊張する。

 子供が、つなぐ掌に力をこめた。

「だから、親戚だって言っておいた。名前もトールだって名乗っておいたから」

「……」

 探るような視線を感じ、シュエは苦笑した。

「親戚同士で同じ名前って、なんかおかしいですね」

「自分は気にしないよ」

「いや、世間一般的にね。どうかな」

「世間一般なんて関係ない」

 穏やかな、けれど揺るがない口調で子供がつぶやく。

 日に日にーーというか、少し目を離した隙にどんどん頑固になっていっている気がして、シュエはまたおかしくなってしまった。

 ひんやりした手に力をこめたまま、子供が尋ねてきた。

「あなたの親は、死んだって聞いた」

「……セイレンめ」

「どうして死んだのかは教えてくれなかったよ。自分で聞けって。だから聞くことにする」

「えっと、そんな面白味のある話じゃないですよ?」

「知りたい」

 変なことを知りたがるなぁと思いつつ、シュエは答えることにした。別に隠すようなことでもない。

「うちは代々猟師なんですよ。もちろんわたしの親もね。それで、わたしが13の時だったかな…山で獣に襲われて。ふたりとも。それだけ」

「……」

「ね?面白味のある話じゃないでしょ?」

「……それで?」

 子供が手を引いた。

「それでその後はどうしたの?」

「その後?その後はわりと大変だったなぁ。半年くらいセイレンの家にお世話になって。ちょっと落ち着いてから、家に戻ったんですよ。それからずっと猟で一人暮らし」

「……」

 黙ってしまった子供の姿に、少し焦ってしまった。やはりあまり楽しい話ではなかったようだ。

「まぁ、でも昔のことだから」

「……今でも、親に会いたいと思う?」

 目が合い、そう尋ねられた。一瞬、答えに詰まる。なぜか慎重に答えなければいけない気がした。

「……そりゃ会いたいですよ。でも」

「でも?」

「昔のことだからさ。正直に言うと、顔もぼんやりとしか覚えてないんですよ」

 シュエの家は裕福ではないので、写真はおろか絵姿さえ残していない。記憶の中の両親は、すでに朧気だった。

 快活だった父の大きな手。優しく、厳しかった母の声。そういった記憶が、時間が経つごとに薄れていく。同時に、ふたりを失った時の悲しさも。

「だから会いたいような気もするし、会わなくてもいいような気もするんですよ。会ったって前の生活が戻ってくるわけじゃないしね」

 不意に握りしめてくる掌の力が強くなった。子供を見るが、うつむいていて表情は見えない。

「なに。どしたの?」

「……別に、何でもない」

 抑えた声で、子供が告げた。すがりつくように握られる掌の力が、更に強くなる。

 シュエは思わず笑い、空いた手で子供の頭をぐしゃぐしゃにかきまぜた。

「……ちょっと。何するの?」

「いや。反抗期は終わったのかなーって思って」

「終わってないし」

「あ、終わってないんだ?」

 それは残念、とつぶやくと、子供が急に立ち止まった。

 シュエが乱したぼさぼさの頭のまま、子供はじっとこちらを見つめてきていた。

 黄金の光が、不安そうにゆらゆらと揺れている。

「……名前、呼んでよ」

 子供が囁いた。いつもの自信満々の声ではない。シュエは困ったように眉尻を下げた。

「あんたの親は生きてるんですよ?わたしとは違う」

「違わない」

「違うってば」

「違わない!」

 声をあげた子供を、シュエは驚きと共に見つめた。子供は不安を必死に表情の下に隠しながら、言葉を続ける。

「あなたがそうだったように、自分も今が大切なだけ。見たこともない親を待つより、あなたに名前をつけてほしいし、呼んでほしい」

 囁く声は小さく、頼りなげだった。数日前までシュエの膝にすがりついてきた小さな身体を思い出す。

 やっぱり、ちょっとは可愛いなと思うくらいには情がうつっているのだ。厄介なことに。

「……名前って、わりと重要なことだと思うんだけど。わたしが決めていいんですか」

「あなたがいい」

 躊躇いもせずに、子供は答えた。その躊躇いのなさに、逆にシュエは不安を覚えてしまう。

 子供から向けられる感情は、すべて天使の刷り込み現象の一端なのだ。そう思うと、シュエにはなかなか次の一歩を踏み出すことができない。

『あなたがいい』と『思いこんでいるだけ』なのではないかと。

 そう思うのだ。

「あなたが何かにこだわってるのは知ってる。理解はできないけれど、それが自分のためだってのも分かる」

 子供がたどたどしく告げた。

「でも、そんなの必要ないよ。あなた、頭はよくないんだから、もっと単純に考えたら?そんな面倒なことに悩まないでよ」

「……簡単に言ってくれちゃって」

「言うよ。言わないと全然伝わらなさそうだし」

 子供は真面目な顔をしたままつぶやいた。その目は不安そうにしながらも真っ直ぐで、折れる様子はない。

 それを見て、綺麗な目だな、と場違いなことをぼんやりと思った。

 黄金の目は、あの日とっさに名前をつけた時と同じように透きとおっている。


 そーゆー面倒なこと置いておいてもさ。


 唐突に、ヤンの言葉を思い出した。


 ふつうに、名前ないのって可哀想じゃね?



 そうだろうか、と心の中で問いかける。すると意外なほどあっさりと「そうかもしれない」と答える声があった。



 自分だって、まだ覚えている。

 父の、そして母の呼ぶ声を。

 温かく、優しく、そして厳しく名前を呼ぶ声を、まだ覚えているのだ。



「……」

 シュエはつないだままの掌に視線を落とした。

 白くしなやかなそれは、緊張のせいか少しだけ強ばっている。

 シュエはそっと息をつくと、もう片方の手で軽くその掌を叩いた。

 緊張した様子で、子供が顔をあげる。

「これだけは聞いておいてほしいんですけど」

 視線を絡ませたまま、シュエはつぶやいた。

「わたしはあんたをお腹痛めて生んだわけじゃないし、親になる覚悟があったってわけでもない」

 子供は一瞬傷ついたような表情を浮かべたが、それでも黙って話に耳を傾けている。

「ぶっちゃければ、わたしは偶然あんたの孵化に立ち会っただけの人間なんですよ。分かる?」

「……分かるよ」

「それでもいいの?」

 その言葉に子供は目を見開いた。そのまままじまじと凝視してくる。

「……いいの、って……」

「そういう相手に、名前をつけてもらっていいのかってことですよ」

「……」

 子供はシュエを真っ直ぐ見つめた後、ゆっくりと目を伏せた。考え込むような間の後、再び顔をあげる。

「あなたなら、いいよ」

「……」

「どうでもいいことにこだわって、名前すらなかなかつけてくれなくて、そういうのすごく面倒くさいとか思うけど」

「おい、こら」

「でも、あなたがいいんだよ。シュエ。そういうことにきちんとこだわってくれる、あなただから」

 そっと囁くように呼ばれた自分の名前に、シュエは少しだけ動揺した。子供が名前を呼んできたのは、初めてのことだ。

 不思議と呼ばれ慣れているはずの自分の名前が、違った響きで聞こえた気がした。それはじんわりとシュエの身体の中に沁みてくる。

 なんかもうかなわないなぁと、そう思ってしまった。

「……シュエ?」

 不安そうにこちらをうかがってくる子供に小さく笑うと、シュエはつなぐ掌に力をこめた。ぐいと引き、そのまま前を向いて歩き出す。

「さ、いい加減帰ろう?遅くなっちゃうし」

「……ちょっと。まだ話は終わってない」

「終わりましたって」

「終わってないよ」

「終わったんだってば。……その、トール」

 ぼそっと最後に付け加えると、急に子供が立ち止まった。つないでいた掌を通してシュエも立ち止まるしかない。

「…………シュエ、今の」

 背後からかけられた子供の声は、ひどく間抜けなものだった。相手の驚きが伝わり、シュエは心の中で唸る。何これ。なんかすごく恥ずかしいんですけど!!

「シュエ」

「な、なに?もしかして、もっとカッコいい名前のほうがいいとか?」

 照れくささからぶっきらぼうに尋ねると、トールは慌てて首を振り「それでいい」と早口で告げた。

 そっと後ろを振り返って様子を見ると、照れているのか、俯いた子供の耳元が赤くなっている。

「あー照れてるー」

「……うるさいな。あなただって照れてるくせに」

 ぶっきらぼうに呟くと、トールはずんずんと歩きだした。

 掌をしっかりとつないだまま。



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