The fourth day【B】
魔法回路を通じてセシルは時空の狭間に飛んでいった。
飛んでいった先は暗く、何処までも果てしない夜の闇の中。
地面の砂の中には白骨化した動物の骨であろうと思われるものが埋まっている。
赤い月はその暗い夜の闇に光を落とし、セシルの足元を照らす。
その中に小さな廃墟になった教会があった。
それは地面より高い場所に立っており、普通の人間では入ることができない高さ。
そこへ、セシルは魔法を使って飛び、静かに舞い降りた。
そして、足音も立てず、教会へ近づき、大きな扉を開けた。
入り口から祭壇まではっきりと視界に入る。
「まさか貴方がこの時代に来ているとは思いませんでしたよ、バルド。」
そういってセシルは祭壇の方へ向かって歩き出す。
汚れた大理石の上を歩くとカッカッカッ…と音が響き渡る。
セシルの視線の先の祭壇には、バルドと呼ばれた黒コートを来た男性が立っていた。
黒いフードを深く被っていて顔はよく見えない。
片手には何やら侵食でもされたかのように奇妙な模様が刻まれている。
一見、タトゥーのように見えるが、その様ではないようだ。
タトゥーと思われる模様は少し光っている。
「罪の代償が大きすぎたようだ…」
と、バルドは言った。
「目的はなんだ?」
セシルはバルドへ言葉を投げつけた。
ゴーン…ゴーン…
教会のベルが鳴り、しばらくの沈黙が置かれる。
「俺はなぜココに来たと思う?」
「何故でしょう?」
「それは…」
バルドは立ち上がると、静かに言った。
「お前の首を取るためさ…」
そういうと、バルドはセシルの方へ飛んできた。
そして、バルドの拳がセシルへ向かって落とされる。
が、セシルはそれをガードし、蹴り飛ばす。
後方へ飛んだバルドには効いていないのか、また殴りこんでくる。
セシルは拳を受け止めると、片手に持っていた杖の先でバルドの腹を押し、バランスを崩したところで杖で押し上げると、投げ飛ばした。
そして、手を広げると何かを叫んだ。
よく聞き取れないが、おそらく呪文を。
する、みるみるうちに雲行きが怪しくなり、雷が四方八方…めちゃくちゃに落ちだした。
バルドはその雷をひらりひらりと避けながらセシルの方へ駆けてくる。
ほぼ同時にセシルとバルドは不敵な笑みを浮かべた。
その時、バルドのフードが外れた。
セシルと似ている顔。同じ髪の色。同じ瞳の色。仮面はセシルがつけていた時とは逆…。
まるで兄弟のような…。
二人は拳と杖を交じ合わせ、激しい攻防戦をしばらく繰り広げた。
おそらく、今の二人の速さは他の人から見たら尋常じゃない。
しばらくして、バルドの拳によってセシルの杖は粉砕された。
「……あーあ…杖折れちゃいましたね…」
セシルは苦笑しながら折れた杖を見た。
杖の持つ部分から上は粉々になって地面に落ちていた。
装飾品として付いていた魔法結晶石はダイヤででもないと砕けないのに割れていた。
セシルは折れた杖をしっかり握り締めると、杖からオーラのような光を出して、棒のように伸ばした。
かと思うと、そのまま途中で曲がり、大鎌の形になった。
「武器は杖だけと思わないでくださいね」
普段あまり開かない瞳孔を開くと、セシルは異常なほど高く飛び上がり
大鎌を振り下ろした。
バルドは避けきれず、右腕を失った。
「ちっ…」
でも腕一本ですんだのならましだった。
セシルの振り下ろした跡の地面は深くエグリ取られていた。
まともに喰らったら腕だけではすまなかっただろう。
ターンをしてバルドもセシルへ殴りかかる。
バルドは動き回るセシルの動きを止めるべく、足を打ち狙う。
「ぐあっ…ッ…!!;;」
「一本折らせてもらうぜ?」
セシルを押し倒して足を掴むと
「うわああああぁぁぁぁぁぁッ!?;」
酷い激痛に悲鳴を上げた。
「はっ…脆い。脆すぎる」
「くっ……ふざけるなッ!!」
電撃の玉を手の内に出し、バルドの顔面に叩きつけた。
もろに喰らった。
が、痕は残っていない。
「流石俺の…」
「流石私の…」
ついに魔法回路編が終わりかけてきました。
早いなぁ〜終わるの・・・