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The fourth day

さて、ウェクセルも仲間になってセシルの店にやってくるようになりました。

レイスも郵便配達が終わってから店を手伝うハメになりましたが、まぁ、それなりに楽しんでいるようです。

では、店を開店する準備をしているようなので様子を見に行きましょうか。

薄暗い地下通路にある一軒のお店は一風変わった作り。

ここがセシルのお店。

レイス達は文字の見えなくなってしまっていた看板を下ろして、看板の文字を修正しなおした。

「看板はウェクセルに任せてもいいですか?」

「うん。いいよ」

「それじゃあ頼みますね。レイス、貴方は、観葉植物を運んできて、入り口と店の窓の近くに置いてくれませんか?私は商品を仕込みますので。」

「ラジャー」

レイスはボードを蹴って中央区の植物店へ向かった。


「すみませーん。観葉植物頼んでいたレイスですけどー。届いてますか?」

大きく育った植物達の葉を掻き分けながら、植物園の奥へ入っていく。

とにかく広い。そして植物が高い。葉がでかい。頬に当たってカユイ…。

ちょっと広いスペースの空間に出ると、店の者が植物に水を与えていた。

「あの〜…」

「あ、レイスさんですね?観葉植物とどいてますよ!ちょっと待って下さいね」

店員は、蛇口を締めホースを置くと、何処か別の部屋に向かった。

戻ってくるまでレイスは、ぼーっと、しているつもりだったが

「こんにちわ」

と、言う声で、その選択肢は消されていった。

振り返ると、そこには、奇妙なデザインのギターを背負った黒服のすらっとした男性。

ギターは水色の髪の毛と同化していてちょっと分かりにくかった。

「…こ…こんにちわ…」

「ここの植物よく育ってると思いません?本当、育て方がいいからでしょうね。実は僕も『アイシアの木』の子供を引き取りにきたんですよ。」

「アイシアの木?初めて聞きます。」

「そうですね、あまり普通の人は育成を好みませんし…出回っていることもあまりないですし…何せ、『食人植物』の木ですから。」

「…………………はぃ?」

待て待て待て。え?今なんて言った?あれ、俺もう耳遠くなっちゃった?聞き間違いじゃないよね?何かスゲェ残酷な植物の種類が聞き取れたような…

「ですから、食人植物ですって。」

聞き間違え無し!!やばい!この人頭おかしい!!!!

「や…やめたほうが…」

「あっはっはっはっは!!大丈夫!僕は師匠から小さい頃から食人植物の世話をやらされていましたから!あ、てかあれは師匠がほったらかしにしたからか。あっはっはっはっは!!」

やばい。この人絶対頭おかしい!!

果たして今の俺はこの人に向かって笑顔で会話できているのだろうか?

何か引きつった笑顔になっている気がする…。

「お待たせしましたー。こちらですねー!あ、ホーリィさん。食人植物ですね?」

大きな荷台を転がして、観葉植物を二体運んできた店員は彼をホーリィと呼んだ。

「届いてる?食人植物。」

「あぁ、届いてるよ。こっちだ。あ、レイスさんも見ますか?結構見られない植物ですよ。」

「え……あ…じゃあ…;;」

恐る恐るレイスは二人の後ろをついていった。


届いている植物が保管されている部屋へ導かれ、中へ入ると手前の机の上に小さな檻のようなものがあり、その中に植物が入っていた。

「あれですね」

店員が指を指すと、ホーリィは檻に近づいていった。

「あれが食人植物?」

と、レイスは店員に聞いた。

外見でしか今は判断できていないが、半分橙で半分黄色の植物。

100円均一にこんなのと似た植物を見たことがある。だから、これは普通の植物ではないのか?と、レイスは考えている。

「いや…ホーリィの方を見ていれば分かりますよ。」

「へ?」

そういわれて、ホーリィの方へ目を向けると…

『ギャアアアアアアア!!!!』

何やらマンドラゴラのような悲鳴を上げながら、葉を半分に裂き、そこから口のようなものが見えている植物がホーリィに襲いかかろうとしている。

「ホーリィさんッ!!危な…ッ!!!」

ドゴッ!!

「……え?」

何か見てはいけないものを見た気がする。

普通なら食人植物に触れることもなく人間は怪我を負うと聞いているのだが、ホーリィは襲い掛かろうとした食人植物を殴った。

そして更に殴る…まだ何もしていない食人植物がちょっとかわいそうに見える…。

「ちょ…あれ止めないで…「いいです」…マジでか…」

「彼は食人植物を操る呪術師らしいんですよ。」

「ハイィィィ?!あ…危なッ!!!?」

「あ、そろそろ契約を交わすみたいなんで、見てたらどうですか?」

一体何故食人植物を…疑問と不安が絡み合いながらホーリィの方へ向く。

「…これが…契約…?」

もう脱力感さえ覚え始めた。

ホーリィは食人植物に無理矢理首筋を噛ませ、血を吸わせると、自分も食人植物の葉緑体を吸う。

まるでその姿は吸血鬼のようで…。

首から滴り落ちる血液は綺麗な赤で白い床を赤く染めた。

「契約だ、我の手となり、我の命尽きるまでソナタの力を我に貸したまえ」

そういうと、食人植物は抵抗をやめ、静かになった。

すると、ホーリィは静かになった食人植物を頭の上に乗っけて笑って振り返った。

「契約終了〜♪」

「ほら、首をみせて、消毒しなくちゃ。」

「いつもありがとうね、兄ちゃん」

店員が救急箱から消毒液と綿を取り、ホーリィに近づいて、消毒を開始するが、食人植物は店員に噛み付く様子はない。

「食人植物が…噛み付こうとしないなんて…」

驚いてもうレイスの口は先ほどから開きっぱなしだ。

「契約をしたときに、『敵ではない者に噛み付かないように』って、契約したからね。」

「…へ…ぇ…」

もうなんと言うか…何もいえない。

とりあえず、頭を下げてレイスは観葉植物を運びながら帰った。



セシルの店のベルがドアを開けることによって鳴き出した。

「ただいま…」

脱力感を覚えたままのレイスは重い観葉植物を二体、荷台に乗せて店へ帰ってきた。

「お帰りなさい…って…どうしたんですか?レイス?」

エプロン姿にモップが非常に似合うセシルがカウンターの奥から出てきた。

「…いや…ちょっと悪夢を見ただけさ…」

「は?;と…とりあえず、お疲れ様。レモンティーとチェリーパイを焼いています、食べてください。ウェクセル!!手を貸してください、観葉植物運びますよー!」

遠くで返事が聞こえる。

だがレイスにその声はとどかない。

椅子に座って置いてあるチェリーパイをひとつ掴むと口に運んだ。

「…甘ぇ…」

どうやらレイスは甘すぎるのは苦手なようだ。

とりあえず、レモンティーだけいただくことにした。

ずー・・・っ

なんだったんだあの変な人は…恐ぇし。

あ、でも今のセシルと変わりないのか?でもあれはキノコだ。奴は食人植物だ。

「ヴーーーん…;;;」

眉間に皺を寄せて呻っている。

セシルとウェクセルはそのレイスの様子を見て玄関口でひそひそ話している。

(何があったんでしょうね?)

(失恋ですかね?)

(レイスって彼女いるんですか?)

(知りません。)

(…使えませんね…)

(酷ッ。…でも何かすごいものでも見たんでしょう。普通失恋であんな悩み方はしませんよ。キレるか泣き寝入りして落ち込むかとか…)

(貴方の経験の話でしょう?しかも今の)

(…うるさいです。それに今彼女いるから)

(へー)

だんだん話が変わってきている。

チリンチリン…

「へ?」

突然開いたドアの方へセシルがアホ面全開で向いた。

するとそこには先ほどの植物店にいたホーリィが立っていた。

「えーっと…あのまだ店は…「あーーッ!?アンタ!!」…」

セシルの台詞を踏み倒してレイスは叫んだ。

「ここって何の店?」

「…雑貨屋ですが……あの…マジで恐いんですけど…」

「なんで?」

「その食人植物…本当に噛まないんですか…?」

「だから噛まないってばぁ。」

「あの…お二人は知り合いで?」

セシルが二人に問いかけてきた。

「「いや、ただの顔見知りだけど」」

見事に綺麗にハモって返事を返された。

「そうですか…あれ、その植物って契約できる種族の奴ですよねー?まだ生きてたんですね。こんなの」

セシルはホーリィの頭の上にある食人植物に気がついて触ろうとする。

「おぉ!知ってますか?」

「アイシアでしょう?これ。懐かしいなぁ。昔は飼ってたんだけど、もう今は姿をあまり見なくなったものだから絶滅したのかと思っていました。」

「今は…って、こいつは1000か990年くらい前に姿を既に見せてなかったんだけど…いたの?」

「いまs「あ。なんでもないなんでもない。ちょっとこの人記憶がおかしいだけだから。」」

レイスがセシルの口を塞いでそう言うと、セシルを部屋の隅まで引っ張って行って、小さい声で話す。

(セシル。お前が言ってるのは約1000年前の話だ。食人植物の奴等はな?60年前くらいまでほとんどいなかったんだよ、で、最近出現し始めたんだ。そしたらお前の言ってること、この時代じゃおかしいんだよ。つじつまが合わないし。お前が過去の人物ってバレたらどうするんだよ?あ?)

(あ…そうですよね…ごめんなさい。)

(だろ?)

(気をつけないと私の身が危ないですね)

「あの〜…」

玄関口でホーリィは正座して待っている。隣にはウェクセルも座って。

「あ、はい。で、あの、どういったご用件で?」

「あのですねー。手紙…?を、預かって参りました。セシル…さん宛てです。」

「私ですか?」

ホーリィから渡された手紙を受け取ると封を切って、手紙を開いた。

それを見た瞬間、セシルの表情が一気に豹変した。

手紙を持っていた手には力が入って手紙にしわがより始めた。

「この手紙…誰から貰いました?」

「え?あのー…なんか変な仮面つけたピエロ。」

「やはり奴か…」

手紙を捨てると、魔方陣の上に立って、魔方陣を起動させた。

「セシル何処へ?!」

セシルは返事も無く、そのまま魔方陣を通じてどこかへ飛んでいった。

店に残された3人は、まだかすかに光り続けている魔方陣を眺めていた。


ちなみに、これは一部、二部という風に分けてあるんです。

今は一部目でブログでは【魔法回路】と言う風になっていますが、初期設定では【StartingStories】でした。

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