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The third day【C】

薬品のにおいと、看護師達の歩く足音。

治療器具のぶつかり合い奏でる奇妙なメロディー。

行きかう患者達はあまりよい表情はしてはいない。

白く長い廊下を足音も立てずにセシルはヴァルックの後を追うように駆けていく。

レイスも患者と看護師達を掻き分けながらセシルの後を追う。

そして広い場所に出ると、見知らぬ男性とセシルが向き合っていた。

「…アンタ…誰?」

男性は気だるそうに長い前髪のしたからセシルを見る。

身長はセシルより高く、見下ろしている状態である。

セシルの左目はずっと男性を凝視し、にらみつけている。

「貴方こそ…誰?」

「強い魔力を感じる…アンタ…魔法使いだね?」

「貴方もね…目的はなんだ?魔法使い。」

「僕は…世界一強い魔法使いになりたいんだ。だから、アンタを倒したい。いや、倒すんだ。さぁ、戦おうじゃないか。」

「ここには大勢の患者がいます。よろしければ外で戦いたいものですが。」

「いいよー。ただし、条件がある。」

「?」

見知らぬ魔法使いは不敵な笑みを浮かべて、こう言った。

「この病院に爆弾を仕掛けた。それを、解除できたらいいよ。もちろん魔法使うのはなし。ちなみに、制限時間は30分」

「爆弾?!貴方…人の命をなんだと!!!」

「ヒントは『聖域』だ。じゃあな、お前の勇気がどれほどのものか、見といてやるぜ」

そういって、見知らぬ魔法使いは笑いながら外へ出て行った。

「…汚い…レイス、早く探すよ。大勢の患者と周辺の住人に被害がでます。」

「あ、おう。」

制限時間は30分。そんなに時間がない。


とにかく二人は必死になって探した。

病室からナースステーション。売店から集いの場、エレベーターに廊下の隅々まで。

屋上行ったり…しかし、爆弾なんてものは見つからない。

「なぁ、もしかして、ないんじゃないのか?」

「いえ、あるはずです。…そう、ヒントですよ!!確か…聖域って言っていましたね。」

「聖域…?なんだよー神々の領域なんかねぇぞぉー…」

「神々の領域…あ!あります!一部屋だけ!!」

「え?どこよ?」

「霊安室!」

「うっ…;嫌な場所…」

「レイス!早く!!後20分しかありません!」

「わぁ〜ったよ!!」

とにかく急いで二人は霊安室へ向かった。


「どうぞ」

看護婦さんに事情を言って、霊安室の扉をあけてもらい、中へ入った。

霊安室だけあってやっぱり薄気味悪い。

中にはベットが6つくらい置いてあり、うれしいことに人間の亡骸は乗っていなかった。

ベットの下を見るが、爆弾なんてものは見あたらない。

壁にもない。カーテンの裏にもない。

一体何処に…。

「なぁ、ここじゃないんじゃないのか?」

レイスはそう言うが、セシルはまったく話を聞いていない。

何処からか聞こえる爆弾のタイマーの音を神経を集中させて聞き取る。

何処から…?

チッ      チッ         チッ     チッ   チッ  チッ

「上です!点検口の上ですよ!!」

「はいぃ?!」

点検口と言うのは、病院の天井の隅とかにある四角い正方形のもののこと。

あれはそもそも点検するための入り口で、通常は鍵がかかっているため、あけることは出来ない。

「どうしよう。看護婦さん、鍵ない?!」

「そんな時間はありません!!蹴り破ります!」

「は?!」

何を言って…と、言う前に、セシルは天井の隅をめがけて蹴りを入れた。

すると無残にも天井の点検口は粉々に粉砕。

この瞬間、レイスはセシルに逆らわないことを心に誓ったとか。

そして、崩れてきた点検口の上から残り18分と表示された爆弾が落ちてきた。

「うおぁ?!ちょちょちょ…どうしよう!?解除の仕方知らないよ?」

「…持って海まで走ります。さっき空から見ましたが、この病院の隣に出口のゲートがありました。そこからまっすぐ行けば海がありました。ですから、海へ投げ込みましょう。そうでもしないと、私達には解除も出来ないので人を助けられません。」

「でも遠いよ!?」

「飛びます。」

そう言うと、セシルは走って出て行った。

「ちょ…?!」

看護婦に一礼してレイスは追いかけた。


「よぉ、魔法使いさん。見つけたんだ、爆弾。」

病院の正門をセシルが出たとき、上から声が降ってきた。

それは先ほどの魔法使いの声だった。

「さぁ、どうするの?」

「この身を持って処理します。」

それだけ言うと、セシルは背中に蒼いガラスのような翼を生やすと海へ向かって飛んでいった。

「セシル…」

レイスは去り行くセシルの後姿を目で追いかけた。

「アンタ、郵便配達屋のレイスだね。」

いつの間にか後ろに降り立っていた見知らぬ魔法使いはレイスに語りかけてきた。

「アンタ誰だ?」

「俺は下級魔法使いのウェクセル。俺さ、ずっとお前のこと監視してたんだ。」

「何?」

「ちなみにあの爆弾だけど、あれはフェイク。セシルをアンタから引き離すためのね。まぁ、時間が来たら閃光だけ光るようになってんだ。もっとも、しばらくは気絶してると思うけど。」

「俺に何のようだ?」

「それはね…――」

ウェクセルは笑みを浮かべながら、ゆっくりレイスに近づいてきた。

「…君の力を…見てみたかったんだ。」

「俺の力を?無駄だと思うぜ?俺はまだ見習い魔法使いだ。」

「ならば、剣をとりなさい。剣を取り、魔法剣士になりなさい。」

「魔法剣士?」

「僕の剣を差し上げます。レイディアントです。大切にしてあげてくださいね」

ウェクセルはレイスへ剣を投げた。レイスはそれをしっかり受け取ってじっくり眺める。

白く、透き通る刃。デザインは何やら羽のような感じのもの。

振り下ろしてみる。すると以外なものだった。

何だこれ?!風のように軽い…

ウェクセルは小さめのロッドを魔法で出し、握り締めると、両手を開いて

「さぁ、かかって来なさい!!」

と、言ってレイスが飛び掛ってくるのを待っているようだ。

おもしろい…なってやろうじゃねぇか。魔法剣士とやらに。

レイスはレイディアントを握り締め、ウェクセルへ向かって走っていった。

剣を振り下ろすと、ウェクセルは小さなロッドで受け止める。

「振り方が甘いですよ。そんなんじゃ、ブーツの厚底も切断できませんね。」

「野郎ッ!!」

蹴りを入れて吹き飛ばしたのだが、ウェクセルは綺麗に着地した。

さほど効いていないようだ。

「魔法剣士となるため剣を取ったのなら、魔法を使った技のひとつくらい出してみてはどうですか?」

「魔法を使った技?」

剣を手にして魔法を使う…俺は魔法剣士になるために剣を取ったんだ。

何か…魔法剣士って言うくらいだ。剣と魔法を組み合わせるのか…?

でも、どうすれば剣と魔法は組み合わさるんだ?


『へー。魔法ってぇのは、体内から魔法の種みたいのを作ってそこから出すようにして発動するのな』

『はい。あ、でも、物質へそのまま種を持ってきて魔法を出すことも出来ますよ。』

『物質に?』

『そう、たとえば…』

そう言ってセシルは壁に立てかけていたロッドを手にすると、魔法をロッドに発動したらしい。

すると、ロッドは勝手に動き出した。

『こうやって杖に魔力を注いで"意思を持て"と、唱えると、このようにロッドが勝手に動いたりとか。ね?』


分かった!

「こないのならこちらから行きますよッ!!クレイジーコメッ…!!」

「させるかよッ!!」

ウェクセルが唱え終える前にレイスは剣に魔法を注ぎこみ、炎を切っ先に灯すと、炎の剣となったレイディアントでウェクセルの左腕を斬りつけた。

「ヴアッ!」

ウェクセルの左腕からは鮮血が流れ出す。

「流石ですね……ふふっ。魔法剣士の誕生です。」

左腕を押さえながらレイスを見て笑う。

レイスはウェクセルの後ろに回りこみ、炎のレイディアントをウェクセルの右手首目掛けて剣を振る。

そして、手首に炎が移り、ウェクセルは手首に焼けどを負った。

「…痛いですよ」

焼けどを負った手首を見て、ウェクセルは苦笑する。

「お前がかかって来いッつったんだろ?!」

「それもそうですね…私がまだまだ未熟と言う事ですね。」

不敵に笑うとロッドを両手に持って、レイスに見せるように構えた。

すると、ロッドは一回り大きくなり、刃を出した。その形はまるで鎌のよう。

「さぁ、本気で行きますよ!」

ウェクセルが鎌のような…いや、鎌を振り空中に円を描くと、二人の周りに炎の壁が立ち上った。

「Is the preparation for your mind good?」

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