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The third day【B】

セシルの頭に生えたキノコ(面倒だから略してセシルキノコ)を頭の上から撤去したいのは山々なのだが、引っこ抜いていいのやいけないのやら…。

とにかく二人は病院へ向かった…のだが…。

「人がいっぱいですね。彼らはこれから何処へ向かうのでしょう?」

朝の通勤ラッシュに巻き込まれていた。

レイスは郵便配達屋の為人より早く活動し始めるため、ラッシュに巻き込まれないのだが、うっかり忘れていて、中央区の駅でラッシュに飲み込まれていた。

「朝の通勤・通学ラッシュだよ。嫌になるなぁ…もぅ。」

不機嫌そうにホームを見渡す。

見ただけでもうんざりする。おそらく、始発は満員だろう。

何か他に早く行ける術はないのかをレイスは考えてみた。

その間、セシルはずっと隣で「つうきん?つうがく?ラッシュ?」と、呪文を唱え続けていた。

間違っても魔法は出さないで欲しいが。

「仕方ねぇな…エリアルボート使うか。」

「?」

レイスはセシルを引っ張りながら駅員のところへ行く。

「すいません、エリアルボート残ってますか?」

「はい。まだ残っております。」

「じゃあ、一台貸して。」

「かしこまりました。ではこれを。」

レイスは駅員からカードキーを受け取ると、ホームの西側にある階段を上って反対側のホームへ降りると、『仮乗車』と書かれたゲートを開いて中へ入った。

中は真っ白な床と壁。天井は抜けていて青空が広がっていた。

「レイス…ここは何もありませんよ?」

「あるよ。こっち。」

レイスはセシルをぐいぐい引っ張って中央まで行く。

すると中央にカードキーを入れる台が自動的に床から出てきた。

台には2mmくらいの深さのある細長いへこみがある。

そこへレイスはカードキーを差し込んだ。

『右側のA―20ゲートへどうぞ。』

アナウンスが鳴り右側の白い壁に扉が浮き出てきた。

それをレイスは開いて、さらに奥にある扉でA―20の扉をあける。

するとそこには鉄の鳥が一羽静かに待っていた。

「ほら、乗って。操縦は俺がするから」

「乗る?これは乗り物なんですか?」

「そう。ほら早く。後ろ乗れよ」

「えっと…うわっ?!」

レイスは何処から乗るのか分からずにエリアルボートの周りをうろうろしているセシルを捕まえて、後部座席に無理矢理乗せると、操縦桿を握ってエリアルボートを浮上させ、抜けている天井から都の空へ飛びだした。

「しっかり、つかまってろよ!」

レイスがそう言うと、エリアルボードは回転しながら中央区の空を翔けて行った。

「うわああああああぁぁぁぁぁ嫌ーーーーーーーーッ!!やめ…恐ェーーーーーーーッ!!」

…セシルは正気を保っていないようだが、そのまま8番区の有名医師のいる病院へ向かった。


「こんにちわー!ヴァルック先生ーッ!」

陽気な声でセシルを引きずりながら裏口から入ってきた。

「ここは病院ですよ、と。もうちょっと静かにしやがれ。でねぇと殴るぞ、と。」

タバコをふかしながら白い白衣にぼろぼろのサンダルを履いてだるそうにヴァルック医師は歩いてきた。

「どうした、今日は。腹筋にコーカサスオオカブトでも刺さったか?」

「んなもん刺さったらスゲェわ。てか叫びながら走ってくるよ。今日はこいつだ」

そういって気絶しているセシルをヴァルックに投げつけた。

「グハァッ?!」

ヴァルックに500のダメージ。セシル、戦闘不能。

「…くッ…で?こいつは何?何の病気?怪我?精神障害者?」

「精神障害者じゃねぇぞゴルァ。」

いきなり起き上がってセシルはヴァルックの胸倉を掴みかかってきた。

ああ…だんだんセシルの言葉が汚れていく。

もうセシルはキノコが問題じゃなくて言葉が問題だ(あと行動)

とりあえず、ヴァルックはセシルのみぞおちに拳をクリティカルヒットさせて気絶させると診察室へ運んでいった。


「なんだぁ?このキノコは。あれか?コスプレとかでつけてたやつのあれか?」

「違いますよ、勝手に育ってるんですよ」

「ふーん…まぁどうでっちゃいいんだけど、これ3日もすればとれるぞ、と」

「3日?!」

「あぁ、3日も我慢すれば、ポロッ だ。」

なんて簡単な撤去方法なんだ!!

「まぁ…結局これって何なんですか?」

セシルはヴァルックに聞いてみた。

すると、ヴァルックは分厚い植物図鑑を取り出して真ん中辺りのページを開くとセシルに見せた。

「最初はただのウィルス菌なんだ。風邪とかの。でも何かの菌と合体してどこかに根を下ろすと、一日で生えてくる謎のキノコ。まぁ、たまたまそこに根をおろしただけだよ。」

「な…なんだ。セシルがキノコになっちゃうのかと思っちゃったじゃんか」

「ならない。絶対。」

「まぁとにかく、お前ら帰れ。もう用はねぇんだろ、と。今忙しいんだぞ、と。」

ヴァルックはさっさと診察室から出て行った。

「…忙しい?」

「…あ…」

何かに気がついたのか、セシルはヴァルックの後を追うように診察室から出て行ってしまった。

レイスも急いで追いかけた。


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