The ninth day【B】
知ってるか?ホーリィ
この街の北の方にある古い屋敷を
そこにはな、ウィルの遺品が置かれているんだってさ
その屋敷は、前世紀のものでとても古く、嫌な気配がした
ホーリィはその屋敷の中へ入っていった
王はウィルの遺品でもある武器を愛した
だから、もしかしたら何か手がかりがあるかもしれないと考えて
中はとても暗く、音など聞こえない
沈黙の世界
黄泉へと繋がっているのではないのだろうかと思うくらいの闇
しばらく進むとそこにはパスワード式の扉があった
おそらくウィルの仲間で最も技術長けていたランが作ったと考えられる
【過去 現在 未来 司る三姉妹
邪神は追放され 戦争と死の神は狂いだす
光の神の消滅
同時に邪神も消滅】
「・・・北欧の神話か?」
ホーリィがそうつぶやくと、正解だったらしく、ロックが解かれた
ホーリィはロックの解かれた先へ進んだ
すると、そこには
「ウィル・・・おじいちゃん?!」
前世紀の人間であるホーリィの祖先、ウィルが肉体を残したまま
水のようなものが入ったフィルターの中で目を閉じていた
白い肌にかかる少し長めの赤色の髪の毛は長いまつげにかかっていて
唇は生きているかのように赤かった
「姉さんに写真で見せてもらった人と同じ・・・そうだ、やっぱり、おじいちゃんだ。
放浪魔術師【ソロ】」
『・・・誰かそこにいるの・・・?』
突如頭に声が響いた
エリーでもセシルでもレイスでも・・・誰でもない
知らない人の声
辺りを見回すが、誰かがいるわけでもない
『君は・・・誰?』
「・・・貴方こそ・・・誰?」
『・・・僕は・・・ウィル・トワイライト』
その言葉にホーリィは驚いて目を見開いた
なぜならトワイライトと言えばホーリィと同じファミリーネーム
放浪魔術師として一族が貰うファミリーネームだったのだ
『君は・・・誰?』
閉ざされている瞼は動く気配はない
「僕は、ホーリィ。ホーリィ・トワイライト」
『トワイライト・・・君も一族の者なのかい?』
「そう、僕はウィル。貴方の子孫です。」
『子孫・・・?・・・あぁ・・・そうゆう事か・・・』
「?ウィル、貴方は何故そこにいるのですか?」
『・・・死なせてもらえなかったんだ僕は・・・分かるだろう、一族の者なら。僕ら一族は
人間の手によって作られたAI・・・』
「・・・・・・僕らは・・・死ぬことが出来ない存在。」
『そう・・・僕らは【兵器】だから』
そこでようやくウィルの瞳が開いた
『改めて、初めまして。僕の子孫・・・』
彼はにっこりと微笑んだ
ホーリィは彼のその表情に笑顔を返した
「初めまして・・・ウィル」
『良かった・・・会えて。』
「ウィル、外へでませんか?いつまでもそんなところにいなくてもいいんですよ?
もう貴方の思うような野蛮な時代じゃありませんし、貴方を兵器として捕らえる人間もいないのですよ」
『駄目だ』
ウィルは怒ったような表情でそう言った
「何故?」
『ここを離れたら、街の動力源は切れてしまうんだよ。僕はこの街自体の動力源なのだから』
「・・・ウィル、もうこの街の動力源は80年程前に魔法結晶石を使ったものに変わってしまいました」
『・・・え・・・じゃ・・・じゃあ僕はこの100年近く・・・一体何のために・・・』
ホーリィはフィルターを解除してウィルを引っ張りだした
100年近く歩いていなかったウィルはすぐには足の機能が回復するわけもなく、ホーリィの方へ倒れて閉まった
「・・・ウィル、もういいんです。僕と一緒に行きましょう」
ここには王はいなかったか・・・
そう思った時だった
ドスッ
「え・・・」
背中に何かが刺さる感触
口からは逆流した血液がたれだしてきた
「いや・・・だ・・・やめ・・・ッ!!!!」
ウィルの声が小さく、苦しそうになっていく
「ウィ・・・るさん?」
「ごめんッ・・・つっ・・・ホーリィッ!!」
ウィルの腕が刃物のようにホーリィの背中に刺さっていた
ソレに気がついた瞬間、ホーリィは血の気が引いた
「やぁ、ホーリィ。確か看護兵だったかな?」
背後から聞こえた声
ホーリィは青白い顔で振り返った