The seventh day【D】
「今、セシルが魔法で回復させてあげてるからとりあえず一安心かな・・・」
エイトは倒れたホーリィを背負ってセシルの店まで戻ってきた。
エイトがつけた傷は軽傷なのですぐに癒えるらしくその件に関しては大丈夫なのだが・・・
「ホーリィがこれくらいの傷で倒れるわけないもんなぁ・・・」
レイスがエイトの傷の手当をしながら言う。
「・・・おそらく、彼の記憶の一部は消えています」
階段から降りてきたセシルが二人に言った。
「消えている?」
「はい。失礼ながら彼の記憶を覗かせてもらい、過去の世界まで行って観察してきました。どうもエイトの話からすると戦いとは関係のないことをホーリィが思い描いていたようなので。それで、覗いてみたんですが・・・」
ホーリィがまだ高校生ぐらいのころ、一人の姉がいました。
その姉は唯一の肉親で、共に孤児院で物心ついたころから暮らし始めていた。
彼らにとって孤児院は【ホーム】であった。
二人は特に仲が良く、いつも一緒にいることが多かったともいう。
親、家族は居ないが、それでも彼らにとってはシスターや孤児院の仲間は本当の家族であった。
この生活に十分満足して幸せいっぱいの二人に悲劇は突然襲い掛かった。
姉は孤児院に来る際、白いノートを一冊持ってきていた。
それには大切な弟であるホーリィにさえも触れさせなかったという。
ある日、ある黒服集団が来て、【ホーム】を全焼させた。
目的は姉の持つ【白いノート】。
そのノートを手に入れるために黒服集団は手段を選ばなかった。
ホーリィがいつものように時計台のおじさんのところから帰ったときには
ホームは完全に焼けきっていた。
「ねぇ・・・さん・・・みんな」
ホーリィは必死に姉とみんなを探し出した。
だが、ほとんどの者が事切れていた。
その中で聞こえたかすかな声。姉の声だった。
「姉さんッ!!」
「ホーリィ・・・お願いがあるの。聞いてくれる?」
「わかった・・・わかったから」
「このノートを・・・ね、守って欲しいの・・・このノートはね・・・私には、仕えないけど・・・ノートが主人を選んだとき、このノートの力が・・・起動しはじめるの・・・。でも、もちろん主人以外は使えない・・・けどね。これ・・・悪い人の手にあったら大変なの・・・だから・・・絶対に・・・守って・・・」
「・・・わかったよ」
そしてホーリィがノートを手にした瞬間、ホーリィの記憶から姉の存在は消えていた。
ホーリィはノートの主人に適合してしまっていたのだった。
姉は伝えていなかったが、ノートの主人となってしまうと、主人。つまり所持者の記憶から代価として、大切な記憶を消し去るのだった。
「この人誰・・・?」
つまり、今のホーリィには姉の記憶など残っていない。
「そう・・・なんだ」
何だか難しい記憶だったのでレイスは顔をしかめていた。
「それじゃあ、記憶の傷がうずきだした・・・と、いうところですかね?」
「おそらく。気が狂ってしまっていたのも、かすかに覚えている姉との記憶を呼び起こそうとしていたためにおこった記憶の暴走みたいなものでしょう・・・あっ・・・」
思いっきりセシルはこけた。
「おいおいまたかよ」と苦笑してレイスがセシルを起こす。
「回復魔法はちょっと負担がかかるもので・・・」
すみませんといいソファーに腰掛ける。
「で、何でノートが狙われるんだ?」
レイスはお茶を入れなおしながら二人からの回答を求める。
「それはですね、あのノートが【人の人生を書き換える】ノートだからです。」
「書き換える?」
「はい。あのノートにたとえばaさんが死んだから生き返らせたいなどと書いたら、aさんは生き返ったり。お金持ちになりたいと書いたらお金が。要するに【欲】のためのノート。」
「欲のため・・・ね」
「そんなの間違ってますもん。自分の人生は自分で決めなくちゃ・・・」
「だな・・・」
二階ではホーリィが目覚めていた。
ノートを手にしても決して開けず、ただ見つめているだけ。
「・・・誰だっけ・・・」
アナタハ ダァレ? ナンノタメニ ボクニ コノ ノート ヲ アズケタノ?
スベテハ ユメ?イツワリノ キオク?
ボクノ シカイ ニ ハイルノハ アノヒミタ アカイ ホノウ
シロイ ユキ ノ ウエニ アカイ エキ
タ ダ ミ ツ メ テ イ ル ダ ケ デ




