The seventh day
瞳ノ奥、キミハ誰ヲ想い ソコマデ頑張ロウトシテイルノ?
薄レカケタ ソノ記憶ノナカ タダノコッテイルノハ
誰カガモッテイタ大切ナ ノート
深夜。中層部セントラルシティ【幻想の館】の屋上。
「さぁ、ホーリィ。【ノート】はどこだ?」
全身黒服に包まれた20代前後の男女が拳銃を向けてホーリィに詰め寄る。
『ホーリィ・・・』
「大丈夫だよ、アイシア。恐がらないで。」
頭の上に載っている食人植物が恐がらないようにホーリィは声をかける。
それを見た黒服の彼らは威嚇発砲をしてきた。
「おい、話をきいているのか?」
「・・・渡さないならどうするの?」
「殺す」
「じゃあ殺せよ、ほら、トリガー引け。そしたらぽっくりだ。」
「ふざけやがって・・・ノートは何処にあるのか言えッ!!」
「い〜や〜♪」
くすくす笑ってホーリィは拒否する。
その時、黒服集団の中からひとつの発砲音。
ホーリィはそれを受けて屋上からまっさかさまに落ちていった。
「・・・なんてことをするんだ。カレン」
カレンと呼ばれたのはダークブルーの短い髪をした男性。
「・・・俺は別にノートは欲しくない。アレを使ったところで【歴史は変えられない】からな」
「やってみないとわからないだろう?」
「ばかばかしい・・・」
カレンはさっさと建物から降りていった。
『ホーリィ、ホーリィ!目を覚ましてぇぇ。』
アイシアが葉っぱの手でホーリィの頬を叩く。
「痛い・・・」
『ホーリィッ』
「うーん・・・危なかったねぇ・・・血のり仕込んでおいてよかったカモ。」
ホーリィが着ているロングコートの下からは仕込んで置いた血のりの袋。
ホーリィは間一髪で銃弾を避けていた。
『どうするのぉぉ?これからぁぁ』
「・・・うん。時間の問題だね。いつまでも逃げ切れるわけじゃないし」
『何処へ行くのぉ?これからぁ。』
「仕方ないね」
ホーリィは口笛で魔法のじゅうたんを呼ぶとそれに乗って夜の闇へ溶け込んでいった。
「おっはよぉ・・・セシルー・・・」
気力のない声でレイスはいつものようにセシルの店に入ってくる。
「おはようございます。」
セシルとエイトは振り返りもせず、レイスが持ってきてくれたテレビを凝視していた。
(えー・・・・?!いじめ?!)
「め・・・めずらしいね、何見てるの二人共?」
「事件です」
レイスも二人の肩越しからテレビ画面を見つめた。
『昨夜、【ノート】を探している黒服集団に街の住民、24名が銃弾で撃たれて重傷を負いました。急所は外されており、命に別状は無いとの事です。』
「ノート?何でノートなんだ?」
たかがノートのために人を撃つなんて、何て馬鹿な考え方してるんだ?と、レイスは思った。
まぁ、確かに。ノートごときにムキになるのだったら、普通拳銃なんて持たないだろう。
最低でも殴り合い程度だと思われる。
「うーん・・・ノート・・・ノート・・・何処かで聞いたことがありますね・・・」
テレビを見ていたエイトがノートについて思い出そうとしている。
「黒服集団・・・ノート・・・銃・・・夜・・・。闇・・・?・・・何か喉元まで出掛かっているんですけどね・・・」
うーん、うーん。と、うめきながら必死になって考えているエイトにセシルが「お店そろそろ開きますよ」とか、レイスが「おーい」と問いかけても反応はない。
そして開店時間、とりあえず仕方ないので階段に座らせておいた。
それからしばらくしてお客が入ってくる。
女性客が多く、小さな小瓶やオルゴールを見て、「かわいい」とか「綺麗」とか言い、店内を見回る。
そしてセシルに話しかけてなんだか和んでいる空気が香る。
レイスはレイスで他の客を接客している。
「魔法薬はどのようなものに?」
「えっと・・・気つけ薬と、回復薬を。」
「あーーッ!!!思い出したあああぁぁぁッ!!」
「「!!!!!!!!!」」
店内にいた全員がびっくりして階段に座っていたエイトの方を振り向いた。
エイトは立ち上がって急いで店から飛び出す。
「ちょッ?!エイト、何処へ?!」
セシルが入り口まで追いかけてエイトに問いかけると、エイトは「中層と上層!」と、言って走り去ってしまった。
「「いやいや、店はどうするの・・・?」」
店内には呆れたような虚しいようなセシルとレイスの声が漏れた。
=中層部 セントラルタウン 国家ライブラリ=
ルイン一巨大な図書館。
大きな本棚が並ぶ図書館、エイトは分厚い本を山のように積み重ねてページをめくっていく。
「・・・!あった。これだ・・・人の時を操るノート【A life renewal note】・・・」
「・・・・・・」
ホーリィはノートを開いてダークグリーンの瞳を蛍光色の黄緑に輝かせていた。
「・・・我今ここに契約を交わす。大神官達よ我の血を吸え。」