The fifth day【D】
三人が施設の入り口から出たとき、警報が鳴り出した。
「これは・・・」
「さっきの人達は、僕の命令には絶対に従わないといけないって決められているんです。でも、上のタクミさんに言いつければ、おそらくタクミさんが「保護しろ」と言うでしょう。こんどはその命令に彼らは従います、そうすれば僕の命令は全て無効なんです。だから、早く逃げましょう。」
「残念。エイト君、君はやはりまだ子供だな」
エイトの後ろには、一人の男性がいた。
手にしているキャノン砲はエイトの背中に突きつけている。
「・・・タクミさん・・・」
「駄目だよ?君はここから逃げられないんだから。」
するとエイトは振り返り、どこから出したのかはわからないが、蛍光色の黄緑の短剣を手にし、タクミという男性に向けた。
「やるのか?」
「えぇ、あなたが私を殺すことが出来るなら」
「言ったな?」
「言いましたよ?」
「手加減はしない・・・行くぞッ!!」
タクミは、迷わずにエイトにキャノンを放った。
エイトはそれを避けてすばやい動きでタクミの頭上へと飛び上がる。
勢い良く短剣を振り下ろすが、タクミはひらりとかわした。
「どうした?それで終わりか?」
「まだまだ」
エイトはくすくす笑うと、短剣の刃を下に向けて踊りだした。
クルクルと回り、不思議な歌を歌う。
一体何がしたいのかレイスは訳もわからず見ていた。
どうやらセシルは気が付いているようで、ただじっと見ている。
タクミは笑ってキャノンを向けたとき、異変は起きた。
「これは・・・!」
突然辺りから光があふれ出したと思ったら、エイトの上にあつまり出して、ひとつの塊になると、タクミに向かって飛んでいった。
「ちっ・・・超能力か・・・こざかしい」
「だって僕は・・・宇宙人ですから・・・人間じゃないですから。」
エイトはとても悲しそうな表情をしてみせた。
すると、それに気が付いたのかセシルが喋りだした。
「いやいや、君のような存在が一人とは限らない。私も、もう人間じゃないでしょうね・・・私は千年前の時代から魔法を使って来た者です。もうこの時代じゃあ墓の下ですよ?」
セシルは手をかざしていつの間にか辺りを囲んでいる職員にむける。
それを見ただけではピンと来ない職員は不思議そうにセシルをみる。
「そう、この世には他にもエイトと同じような人が存在するんだ。俺だって・・・その内の一人さ。今はまだ言う勇気がないけどね」
レイスはポケットから小型PCを出すと、ディスプレイを被って手を動かし始める。
「「一人じゃないよ」」
二人の言葉にエイトは驚いたようにただ立ち尽くしている。
「レイス〜。行きますよッ!」
「OK」
セシルは魔法で氷の矢を生み出すと、職員達に向けて投げ飛ばす。
もちろん、威嚇射撃なので急所には当たらないように。
職員達は始めてみる魔法に驚いてあわて始め、手にしていたキャノンを打とうとするが・・・
「キャノンが動かない?!」
「へっへ〜ん☆残念で〜した♪そんなもの俺のPCでデータベース上に侵入してキャノンに指示出す機械を眠らせたんでv」
PCを片手に得意げに言うレイスは少し高い街灯のうえでキーボードを滑らせて行く。
「小僧ッ!!」
「あ?小僧じゃねぇよ?え?名前?名前はね・・・――」
レイスは地面に降りると職員の目の前まで目に見えぬ速さで踏み込み
「芥川 光太郎って言うんだ」
と、言って職員に重い一発を食らわせて吹き飛ばした。
「レイス〜。誰ですか?芥川光太郎って?初耳ですよ〜?」
「あははははははv俺は昔から芥川光太郎だが何か?まぁ・・・そんなことよっか・・・丸腰同然の職員の皆さん?どうするおつもりで?」
レイスが聞くと、職員達は懐から小さなナイフを取り出して構えた。
「あら〜・・・物騒なエモノだしちゃって・・・」
「レイス、中級魔法はもう覚えましたか?」
「おう!大体覚えたぞ」
「それじゃあ対属性同士の属性合体しましょうか。貴方の属性は光なので私が闇を担当します」
「了解!」
そう言うと、セシルは手の中に黒い光を集め、レイスは白い光を集める。
そして、だいぶたまったところで・・・
「「喰らえッ!」」
二人は同時に光を放った。
それは空気中で交わりあい、大きな竜のような姿となって職員達に向かって進んでいく。
その時だった
「待て!!!」
初めて聞く年老いた怒声にレイスとセシルの魔法は一時停止し、二人は声の聞こえたほうへ目をやった。
するとそこには・・・
「長官・・・?」
エイトがつぶやいた。
「お前ら何をやっているのだ。騒がしいと思ってやってきたら、エイト保護のためか?くだらん。エイトがここから出たいといっているのだ、出してやれ。これも学習の一環になるだろう」
「長官・・・いいんですか?だって・・・僕の研究を始めたのは長官じゃ・・・」
エイトが驚いて問いかけると、長官は申し訳なさそうに言った
「すまなかったな、エイト。私はまだ知らない生物がどうゆう風に生きているのか、どうゆう能力を持っているのかしりたかった・・・だからお前を捕らえて実験サンプルにしてしまった。すまなかった・・・」
「じゃあ・・・実験はもういいんですか?」
「あぁ、もういい。お前の好きなように生きろ」
まさにドラマの最後のワンシーンを飾るようなこの場面に職員達は見とれていた。
長官はエイトから目を離すと、セシルとレイスの方へ振り向き近寄ってきた。
目の前までくると長官の凛々しい顔が良く見える。
「君たちが・・・エイトを連れ出そうとしたのかい?」
((ヤバイ・・・怒られる・・・いや、怒られるとかそんな優しいものじゃないな・・・))
「「はい・・・」」
「名前は?」
「・・・セシルです。こちらが・・・レイス」
セシルが紹介をすると、長官の大きな手が二人に向かって出てきた
叩かれると思った二人は思わず目を瞑ってしまったが、次の瞬間頭にくるはずと思われる痛みがない。
むしろ、こそばゆいと言うか・・・頭上でごわごわした感覚。
恐る恐る目を開ければ・・・
「「え?」」
長官の大きな手は二人の頭の上に乗っかって、優しくなでていた。
子供じゃないんだけど・・・と思いつつも、歯向かう勇気が無いので停止。
「エイトを頼めるか?」
聞こえてきたのは意外な言葉。
その言葉に一瞬驚きはしたが、もちろん返事は・・・
「「はい」」