The fifth day
あの後レイスとセシルは現実に戻ることが出来た。
おそらく本物のセシルの魔法だとは思うのだが・・・。
気が付けば夢の世界に入る前の建物の中だったが、そこにはセシルに似た彼の姿はもう無かった。
それから数日後
The fifth day
「レイス、違います。この魔法はこうじゃなくて・・・ここを・・・で、・・・なんですよ」
「あぁ、じゃあここは・・・で・・・なんだ?」
「そうです!」
店を営業しながら人が来ない時間、二人はこうして魔法の勉強をしている。
まだまだ修行の身だが、レイスもだいぶ魔法を使えるようになってきた。
「・・・そろそろお昼休みを終了させて、お店再開しましょうか。」
「オッケェェエエイ!!よーし!魔法も仕事も頑張るぞぉ!!」
「その息ですッ!」
こうして二人のいたって普通な生活が始まる・・・はずだった。
カランコロン と、ドアのベルが鳴り、お客が来たのかと思えば、そこにはホーリィの姿があった。
なにやら急いできたようで、髪の毛は乱れていた。
「どったの?ホーリィ。」
「はぁッ・・・聞いてよぉ、レイス!セシル!」
ホーリィは何やら腹立てているようだ。
とりあえずホーリィを椅子に座らせて、二人は話を聞いてあげた。
「変な人がいるんですッ!!!」
「え?何?変態につけられてるの?」
「違うっ!その・・・説明が悪かったです。あのですね、この街の下層下部区域の住宅街に『マザー・エンジェル』って研究所があるらしいんですけど、そこに少年を捕まえているらしんです!」
「下層・・・かぶ?」
セシルは不思議そうに問いかけてきた。
それもそうだ、1000年前には下層下部なんてなかったから。
時代が変われば街の風景だって変わる。
「あのね、セシルの時代には無かっただろうけど、この都は3つの区域に分かれるんだ。俺達がいるこの区域が『中層』。で、空に浮いている区域が『上層上部』。で、中層の下にある区域。つまり、地下が『下層下部』。人口が増加したから300年前くらいに2つ区域を作ったんだって。」
「へぇ・・・じゃあ、この下に下層下部があるんですね。この下で人が暮らしているんですね?」
「そうそう」
一見、普通の都に見えるが、意外とこの都は普通じゃない。
最先端技術の都とも言われるほどあるから、まぁそうなんだろうが。
「なんかよく分からんが、とりあえず下層下部に行ってみようか。セシル。」
「はい、では、今晩」
夜8時あたり。
レイスとセシルは下層下部へ降りてきていた。
「ここが・・・下層下部?」
セシルは目の前の光景に目を大きくして興味津々にレイスの隣でみている。
下層下部。
そこは、新技術が辺り一面に普及していて不便なさそうな近未来の姿。
上へあがる階段の部分は乗ると動き出す仕組みや、転送装置で別の街へと転送できる装置がそこらじゅうにある。
立ち並ぶ店はほとんどが電化製品。
携帯屋なんて特に凄い。
たいていの携帯は開いてそこに画面とボタンがあると言うタイプ。それが今の技術で出来る最高のレベルだが、下層下部の携帯は一味違うようだ。
見本の携帯を見てみると、それは携帯の形ではなくブレスレッド。
そのブレスレッド状の携帯にはめ込まれている宝石らしきものがボタンらしく、押してみるとフォログラフィー状の画面が宙に浮き出てくる。こういったものは中層や上層上部では販売されていないため、ここでしか手に入らない。
「おい、セシル。あんまり動くんじゃねぇぞ?」
「迷子にはなりませんよ。」
「違う違う。下層下部は確かにいい様にみえるかもしれないけど、麻薬でおかしくなった奴とかいるんだよ。」
「あぁ・・・そうなんですか。それじゃあ気をつけないといけないですね」
「そうそう」
そう言ってセシルは気を引き締めると、歩き出した。
「ここが下層下部、住宅街。」
「ここが住宅街?」
そこは鉄の塊で作られた集合住宅。
大きさはかなりのもので、住宅街エリアに何十軒もたっていた。
おそらく一軒に約70の部屋があると思われる。
夜道に使われるであろう街灯は奇妙な光を放ち、夜の住宅街を映し出していた。
(・・・・・・これが・・・未来の姿)
セシルはこの光景に少しゾッとしてきた。
「ほらセシル、何ぼっとしてるの?行くよ。」
レイスがセシルの手を引っ張ってどんどん住宅街に入っていく。
なんだか怖くなってきたセシルは思わず反射的にレイスの手を握り締めていた。
「?」
レイスは不思議そうにセシルを見ていたが、セシルは黙って付いてきていたので何も語り掛けなかった。
「うわぁ・・・おっきい・・・」
セシルはその建設物の大きさに驚いた
高さは一体どれくらいあるのだろう?
星まで届きそうだ。
「これが下層下部の研究所・・・マザー・エンジェル。」
仲間がどんどん増えていきますよ!
第二部【自由への招待状と記憶の呪縛】!!