The fourth day【G】
『ねぇ、おじちゃん。この丸い落書きなぁに?』
『ははは、落書きか。それはね、落書きじゃないんだよ?これは魔法回路と言ってね、とてもありがたいものなんだよ。』
『まほーかいろ?』
――誰?誰の声?子供・・・?――
何故かレイスは宙に浮いていた
自分でもわからないが
――これがセシルの夢の中?・・・と、言うことはこれはセシルの記憶か何かか?――
暗闇の中、歳をとった男性と黄緑の頭をした子供が会話をしている
おそらく、この子供がセシルだろう
『さて、できた。どうだい?』
男性が子供に差し出してきたのは一本の黒い日傘。
――あぁ、そういやセシル日光駄目なんだっけ・・・――
『わぁ!!すごいすごい!!直った!!ありがとうおじちゃん!!』
『よかったな。』
『うん!』
子供が手にしている傘はあまり良いものではなかった。
黒いはずの生地がところどころ赤黒く染まっている。
『それにしてもどうしてセシルはその傘じゃないと嫌なんだい?』
男性が聞くと、はしゃいでいたセシルの動きが止まった。
『大切な人から貰ったものだから』
とても悲しそうな表情
――俺はこのことを生き返っても聞かないほうがいいだろう・・・――
彼を悲しませてしまいそうだから
気が付けば
セシルは一人傘をさして何処かの庭で遊んでいる
(よし、セシル。起こしてやるからな)
レイスは気を引き締めてセシルに向かって行った
「セシル!」
「・・・おにいちゃんだれ?」
聞きたくない言葉だった。
セシルは小さくなっただけではなく
レイスのことを覚えていない
この声はセシルに届くのだろうか
「聞いてセシル。セシルは俺に魔法教えてくれたよね?つか、まだ教えてる途中だよね?ねぇ、ちゃんと最後まで俺に魔法を教えてよ。途中で放りださないで。」
「ま・・・ほう?何で僕がおにぃちゃんにまほうなんか・・・」
「覚えてない?いや、覚えてるよ。絶対に。心が覚えてる。」
「やだ・・・止めてよ」
嫌がるセシルの目尻にうっすら涙が見え始めた
だけどレイスは止めようとはしなかった
セシルの肩を掴んで続けた
「止めない。止めないよ?俺が止めると思ってんの?止めねぇよ。お前が俺のこと思い出してセシルに戻ってくれるまで。」
「僕はセシルだよ」
「違う、お前は俺の知ってるセシルじゃない。俺の知っているセシルは魔法道芸師で、俺の時代に1000年前から勝手にやってきて勝手に住み着いて、いつも変なことばっかりやってるいい大人だよッ!」
「うるさいですよッレイスッ!!!眠れないじゃないですかッ!!安眠妨害罪で訴えますよッ!!」
「アンダァ?!安眠妨害罪って?!訴えられんの俺ぇえええ?!・・・って・・・え?」
目の前に居たはずのセシルは子供からレイスの知っている大人のセシルに戻っていた
「・・・セシル・・・」
「まったく、貴方という人は何でこんなとこ・・・うわっ?!」
レイスはこの時初めて涙を浮かべたのかもしれない
「レイス?」
レイスは、自分でも判らないが、何故かセシルを自分の腕の中へ引き寄せていた
何か映画で男の人たちが感動のシーンで抱き合う気持ちがよく分かった
「良かった・・・忘れられたのかと思った・・・忘れられてたら、引っ叩いてでも記憶掘り返させてやろうとおもったよ・・・」
「・・・え・・・」
セシルは血の気が引く感覚をこのとき初めてじっくりと味わった気がした。
「セシル、帰ろう!急いで帰らないと魔法が解けたらもう帰られなくなっちゃう!」
「あ、はいッ。・・・でもどうすれば・・・?」
「・・・やっぱお前もわかんない?」
―――軽く絶対絶命じゃねぇ?俺達―――