第54話 「会長、黒瀬くんの脳内に住んでいるらしい」
黒瀬くんが言った。
「テスト中、白鳥先輩の声が聞こえました」
もちろん、本当に聞こえたわけではない。
勉強会で教えたことを思い出してくれた、という意味だ。
けれど、ミレイの胸は妙に騒がしかった。
(黒瀬くんの脳内に、私の声が……)
その響きは、少し恥ずかしくて、少し嬉しい。
リコはにやにやして言う。
「会長、黒瀬くんの脳内常駐おめでとうございます」
「常駐って何かしら」
「ずっといるってことです」
ミレイは顔を赤くする。
「ずっと……」
「今、嬉しそうでしたね」
「違うわ。教育効果があったことが嬉しいだけよ」
「はいはい、教育効果ですね」
テスト期間中は生徒会活動も控えめになる。
それでも、黒瀬くんは短い時間だけ生徒会室に顔を出した。
「勉強の息抜きです」
そう言って、書類を少しだけ整理してくれる。
ミレイは彼を見ながら思う。
(黒瀬くんが来ると、部屋が少し明るくなる気がする)
でも、それを言葉にすると危険な気がした。
作業の後、黒瀬くんが英語の問題を一つ質問してくる。
ミレイが説明すると、彼は真剣に聞く。
その横顔を見ていると、自分もちゃんと応えたいと思う。
「わかった?」
「はい。白鳥先輩の説明は、僕にとってわかりやすいです」
ミレイの心臓が跳ねる。
褒められた。
それも、かなりまっすぐに。
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」
黒瀬くんは赤くなる。
ミレイも赤くなる。
最近、二人で赤くなる頻度が増えている気がする。
リコが遠くから言う。
「この部屋、暖房いらないですね」
◆オチ
その日の生徒会日誌。
黒瀬くんの英語学習に一定の効果あり。
追記。
私の声が脳内で再生されたらしい。
さらに悩んで追記。
少し嬉しい。
リコが読んで言う。
「会長、もう日誌に心拍数も書きます?」




