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生徒会長はオタク男子を攻略できない  作者: naomikoryo


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第50話 「会長、勉強会で黒瀬くんに集中を奪われる」

黒瀬くんに英語を教えることになった。


ミレイは、生徒会長として後輩の学習を支援するだけだと思っていた。


少なくとも、最初は。


けれど、実際に隣に座って教え始めると、思ったより難しかった。


黒瀬くんは真剣だった。

わからないところを素直に聞く。

ノートを丁寧に取る。

時々、英語の例文を勝手に冒険物語に変換する。


その様子が、なんだか可愛い。


(いけないわ。教える側が集中しないと)


ミレイは気持ちを引き締める。


「ここは主語を探すの。文の中心になるものね」


黒瀬くんは真剣に頷く。


「主語……中心……」


その後、彼は小さく呟く。


「僕の主語も最近見失っています」


ミレイは首を傾げる。


「黒瀬くんの主語?」


彼は慌てて誤魔化す。


「人生文法の話です」


人生文法。


意味はわからない。

でも、黒瀬くんらしい言葉だった。


しばらくして、ミレイは彼のノートを覗き込む。


距離が近くなる。


その瞬間、黒瀬くんが固まる。


「どうしたの?」


「いえ。集中力が急激に減少しました」


「疲れた?」


「原因は……言うと危険です」


ミレイは気になってしまう。


「言っても大丈夫よ」


黒瀬くんはしばらく黙った後、真剣に言った。


「生徒会長が近いと集中できません」


ミレイの心臓が跳ねた。


一瞬、言葉の意味がわからなくなる。


近いと、集中できない。


それは、どういう意味だろう。

少なくとも、嫌という意味ではなさそうだった。


ミレイは顔が熱くなる。


「そ、そう。ごめんなさい。少し離れるわ」


黒瀬くんは慌てる。


「いえ、離れてほしいわけではなく」


言ってから、彼も固まる。


ミレイも固まる。


リコが遠くで拍手した。


「今の、二人とも満点です」


ミレイは教科書で顔を隠す。


勉強会はその後も続いたが、二人とも妙にぎこちなかった。


黒瀬くんが英単語を読むたびに、声を意識してしまう。

ミレイが説明するたびに、黒瀬くんが赤くなる。

お互いに集中しているようで、まったく集中できていない。


それでも、帰り際に黒瀬くんが言った。


「生徒会長に教えてもらえて、よかったです」


その一言で、ミレイは全部報われた気がした。


「また、わからないところがあったら聞いてね」


黒瀬くんは嬉しそうに頷く。


「はい。次回クエストもお願いします」


ミレイは笑う。


「ええ。次回クエストも引き受けるわ」



◆オチ


その日の生徒会日誌。


黒瀬くんに英語を教えた。


追記。


教える側も集中力が必要。特に距離感。


リコが読んで言う。


「会長、テスト勉強じゃなくて恋愛実技の反省文になってます」

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