第59話 馬車馬のように働いてもらいます!
「グアアッ!!!」
「クッ! 回復魔法で治せるからって、随分と無茶をやるね!」
魔王の一撃を受け止め、回復を終えた後、ブレンダンの猛攻が始まった。兜の力によって自分の体の限界を無視して形振り構わない攻撃を仕掛けてくるのだ。自分の体を壊しかねない力の使い方をするので、本人の技の技術とかひったくれのない攻撃の連打を浴びせてくるのだ。その姿はまるで狂戦士……というより、血に飢えた野獣のようだった。
「これじゃまるで、お前達の否定している魔族や分別のない獣人みたいじゃないか? こんなことをさせて恥ずかしくないのかよ?」
「恥ずかしいも何も、それなりの行為をしでかした人間ですからね。人権等という物は”お預け”みたいな扱いですよ。それに野獣には野獣を以て制するというのが当たり前の考え方でしょう?」
「とことん、クズな考え方だな!」
「人聞きの悪い事を言わないで下さいよ。あなた方魔族には特に言われたくない言葉です。」
相変わらず教団ってのはクズだな。裏で非人道的な行為を平気で行う。しかもそれを表向きには見えないレベルで隠蔽してるから質が悪い。せいぜい外に漏れてくる情報は都市伝説程度の噂話でしかない。信者達にもそれは根も葉もないウソだと流布しているため、そういうことを言ってはいけないという風潮を作り出してもいるのだ。
「いつまでもそんな戦い方が出来ると思うなよ。」
(ガギッ!!!)
「クッ! 掴まれた!」
どうせ自分の力で体が壊れるんなら、いっその事オレの方から壊してやろうと思った矢先! 人間にはとても出来ない様な反応速度で棍棒を義手で掴んで受け止めたのだ! しかも、この前戦ったときよりも力が強くなっている。本人の身体能力に比例してパワーが上がっているように感じる!
「フフフ、驚いているでしょう? 彼の義手が以前よりも増して力が強まっていると。」
「別にこれくらい。それよりも、以外と頑丈な事の方が驚いたよ。」
「その義手は対魔族、引いては魔王とも渡り合えるようにと”工房”の皆さんが開発した物です。塔であなたと対決したデータを元に更に出力向上が図られていますからね。前のはオードリーが壊してしまったので、以前から開発していたモデルに差し替えたのです。この前の物とは別物ですよ。」
「そうかい。あの時のオレの強さを参考にしているのか! どおりで強いはずだ!」
「あなたの強化形態に合わせた調整が成されています。もちろんそれだけではないですけどね?」
本気の時のオレに対抗できるようにパワーアップさせているんだな? この状態で棍棒を掴まれたままでビクともしないのはそういう理由らしい。加えてシャルルはそれ以外にも秘密がありそうな含みを持たせている。何か力が入りにくいとさえ思えるんだ。
「例の闇の力を抑えるための細工してるんじゃないの? 力が思うように入らない。」
「でしょう? その義手には特別なコーティングが成されているんですよ。”闇抑制技術”がね。要は審問会や一部の騎士団の部隊で導入されている”対魔”装備の発展型なのです。黒塗りの防具や衣服に”闇の因子”感染防止の処理がされていますが、その先を行く技術なのですよ。」
「つまんない悪足掻きみたいな事してるね。呆れるよ。」
「力なき者たちでも魔族に対抗できる力を分け与える事ができるようにと、開発されたものですよ。今まではこの場所のような建造物等にのみ利用されていましたが、装備品にも導入できるレベルに達したのです。」
ギリギリと棍棒を掴まれ、握りつぶそうと圧力を高めている感触が伝わってくるが、無駄な行為だ。デーモン・コアその物なコレを壊すことはできない。とはいえ、力がどんどん抜けていくような感触があるから早い内に抜け出さないといけない。
「”闇抑制技術”は闇の力を周囲に発散させ、力の収束を妨げる効果があるのです。なのでドンドンあなたの力は弱まっていく。いずれは魔王とは呼べないほどの弱小魔族に変わり果ててしまうかも?」
「いつまでもそんなことが出来るなんて思うなよ!」
そこで一気に棍棒を振り上げる様に持ち上げた。もちろん相手の義手が棍棒を掴んだままなので、それごと持ち上げてやったのだ。ヤツの巨体が宙に浮き、シャルルと回復女は驚きの表情を見せている。オレがこんな力を出せると思っていなかっただろうな。そのまま宙に浮いたブレンダンを棍棒ごと地面に叩きつけてやった。
(ズガァァァン!!!!)
「グハッ!?」
「た、隊長!?」
「まだこのような力が出せたとは……!?」
ブレンダンは受け身すら取れずに地面に叩きつけられた。やっぱり理性を失っているから、本人が身に付けた戦闘技術が活かせていないんだろうな。これだったら、前のままの方が強い気がする。無理矢理強化をしても、それを最大限に活かせる理性がないと意味ないよね?




