第57話 刻まれた手掛かり
「ロアを支援してくれた人物の正体も気になるところだが、彼は? 彼は一体、何の罪を犯したというのだろう?」
「ああ、それは斯く斯く然々で……、」
そうだった! ヘイフゥとタニシは名無し男の事を一切知らないので説明することにした。というか俺とイツキも大して知らないのだがこれまでの経緯を語った。当然の事ながら二人は首を傾げるだけで何か腑に落ちていないという感じだった。特にタニシ。首傾げすぎでそのまま一回転してしまいそうな感じだった。
「頭がぁ、こんが、こんがガラガラぁ!?」
「落ち着け、タニシ!」
「まあ、とにかく正体が判明していないというのはわかった。彼が教団に危険視されているのだという事も。」
「ああ、そんな感じ。タニシが預かってきたモノを持ってただけで疑われただけみたいなんだ。」
事の真相を話したらタニシの頭の中がオーバーフローを起こし更に混乱してしまった。それをなだめつつ、ヘイフゥは事情を察してくれたのでホッとした。これでなんとか同行させる事を了承してもらえたと思う。ただの犯罪者だと中々納得は出来ないだろうからな。記憶を無くしただけの哀れな男を救ってやりたいと思うのが人情だからな。
「しかし、彼の傷が見る度に軽くなってきているのは気のせいだろうか?」
「え? まさか……って本当だ。血の跡は残っているけど、腫れとか内出血が引いていってるような……?」
「その武器を手にした途端、じゃないか? ソイツにはヒーリング効果でも付いてるのかもな?」
イツキは武器の機能ではと分析している。確かに俺もサヨちゃんから聞いたことがある。古くから伝えられている武具類には使い手の傷を癒やしたり、あらゆる災厄から身を守ってくれたりする物があるそうだ。
特に神々が作った、とかいう伝説がある物はほぼ確実にそういう効果があるとか何とか。というか、俺もその恩恵に預かっているのは言うまでもない。”勇者の額冠”と”勇者の剣”がそうなのである。じゃあ、アイツの武器も同じ……?
「どういう武器かはわからないが、俺の額冠とかと同じ機能があるのかもな。」
「ウム、そう考えた方が良さそうだ。一時は危ない状態ではあったが、治療の手立てが揃うまでは持ちそうだな。」
「しかも、持ち主のピンチを知らせて光ってたんでヤンスよ! ピカピカって! アニキの剣がミャーコちゃんの近くにあったときみたいに!」
「ん? ああ、そういえば、そんなこともあったっけな……?」
カレルの剣の形をしていたときはそういう現象が発生していたな。あの時は壊れていたから剣自身が「早く治してくれ!」とメッセージを出していたのだろう。特にそれを修理できる力のある巫女が近くにいたから、そういう信号を出していたと考えられる。
じゃあ、名無しが持っている武器も勇者の武器に近い代物なんだろうか? とはいえ、魔王の象徴とも言えるデーモン・コアみたいな物が付いている。ある意味、神魔融合みたいなモンかな? 違うか……?
「でも、名前とかわかんないんじゃ呼び方も困るでヤンスね? いつまでも名無しのゴンベさんだとかわいそうでヤンしゅ!」
「そうだな……。とはいえ手掛かりも何もないと名前を付けづらいのは如何ともしがたいな。」
「……9999……?」
「え? アニキ? 急に数字を言ってどうしたでヤンスか? 何かの回数のカウントでヤンスか?」
「いやさ、そいつの名前のことで手掛かりみたいな物をと思って、考えてたんだけど、思い出したんだよ。9999、って。」
「何故、その数字を?」
「何故か、コイツの後頭部辺りに書いてあったんだよ。9999って。」
「あのタマネギ・ゴリラの”108”みたいでヤンしゅね?」
うん、やっぱり、タニシもヤツのことを思い出したようだ。後から判明したのだが、あの数字は羊によって与えられた通し番号みたいな物だったらしい。
俺の所に忍び込ませて流派梁山泊の技の数々を盗ませるという意味を込めて、戦技一0八計から取った数字だったのだそうだ。この男もそういう類い……なわけないか。羊は死んだし、奴らとは全く似ていない。関係ないだろう。多分……。
「手掛かりはそれくらいしかないから、本人が記憶を取り戻すまでは、フォー・ナインて呼ぶことにしないか?」
「エラくまあ、単純で安易な名付けなこった。」
「別に良いだろ! 悪い意味とか馬鹿にしてる訳じゃないんだから! あくまで仮の名前!」
「良いじゃないか。あだ名のような物と考えて割り切った方が良いだろう。変に凝った名前にしても本名が判明した時に違和感が生じてしまうだろうしな。」
「わかったよ。別に仲間になるとは限らんしな。」
イツキは俺の名付けにイチャモンを付けてきたが、ヘイフゥの説得に納得せざるを得なくなったようだ。俺みたいなアホが相手ならそのまま難癖付けられただろうけど、ヘイフゥには敵わないようだ。しかし、この感じは割とレンファさん的な感性が作用しているな。戦いの時とかは割と厳しめな師父みたいな感じなのにな。
「彼の呼び名も確定したところで、脱出に向けて動き出そうか?」
「ああっ!? 早くダンチョーやキョウナちゃんを助けに行かないと!」
「そうだな。魔王がそう簡単に負けるとは思えないが、何か嫌な予感がするから急がないとな。」
「アニキ! 不安になるような事を言わないで欲しいでヤンしゅう!!」
「悪かった。でも俺らがいた方がいいだろ? 勝率は高ければ高いほどいいもんだ!」
魔王の気配、若しくはシャルルやバ・ゴーン……じゃなかった、オードリーの気配を探るしかない。……少々掴みづらかったが、微量に感じられるのがわかる。おかしいな? 戦っているんならもっと荒々しく気配を感じるようなもんだが……? 様子がおかしい。早く駆けつけないと手遅れになってしまうかもしれない!




