第56話 ハイクでバショウした結果……、
「ふう、これでよしと!」
「ハッ! 処刑人が逆に処刑台に縛り付けになるたぁ、とんだ笑い種だな。清々したぜ!」
気を失った不可視の鎌の連中を縄で逆に処刑台に縛り付けてやった。小さめな二人は楽だったが、カボチャ兜はでかいのでしんどかった。名無し以外の四人がかりでやっと、というレベルだった。しかもコイツだけ力が強いのでわざわざ縛り付けをする意味合いがあったのかどうかは正直疑問なところだ。まあ、多少の時間稼ぎにはなると考えるとしよう。
「というか、二人とも! 俺たちの居場所が良くわかったな?」
一段落ついたところで、救出に来た二人に聞くことにした。なんか奇跡的なタイミングで乱入してきたし、こんな閉鎖的な場所へどうやって入ってきたのかが気になっていた。タニシはともかく、ヘイフゥは手がかりすらつかめなかったろうに?
「お前の使う技、天破奥義”異空跋渉”を使わせてもらった。」
「そうそう! ”ハイク・バショー”でヤンス!」
「それ違うから!」
相変わらず空耳ィーヌなタニシはほっといて、まさか俺と黄ジイ以外であの技を使う人が現れると思わなかった。ああ、でも”勇気の共有”の効果があれば不可能ではないのか。とはいえ俺でも居所のわからない人の所に移動するのは困難だ。あの時、フェルディナンドの本体の元へ移動するときも苦労したくらいだし……。
「お前の気配が感じ取れなかったから、探し当てるまでこの監獄をさ迷う羽目になった。その最中、タニシ君と偶然出会った訳だ。」
「ああ、タニシと合流できたからか……ってそれだけじゃ無理か?」
「フム、その通り。彼もお前達や仲間の行方がわからなくなっていた。そこで手助けとなったのが、そこの彼が持っている不思議な武器だ。」
「コレ? コレが手がかりになったの?」
「ああ。それは飛び切り強い力をどこかに向けて放っていたのでな。まるで持ち主の危険を知らせているかのように光っていたのだ。」
「光ってた……?」
ココに辿り着いた切っ掛けがコレですか? あの名無しの持ち物に助けられた、と? 確かにアレは異彩な気配を放っている。今はもう光ってはいないようだが、怪しい輝きを持っている。
なにか、やっぱりアレに酷似していると思わずにはいられない。気配の質は異なるが、デーモン・コアに似ている感じがするのは間違いない。そりゃ、こんなものを持っていたら捕まるよな……。
「その武器の放っている気配を辿れば持ち主の元へ辿り着けるのではないかと思ってな。試してみれば、上手くいったというわけだ。」
「確かに俺の気配はそこの処刑台に封じられてたっぽいからな。一か八か、それに頼るしかなかったってことか。」
「それよりも、このヘタレがなんでこんなモンを持っていたか、という事の方が気になるな。」
「こ、これは、ある人に頼まれてたんでヤンス!」
「誰だよ、ある人って?」
「あの、アレ! 名前も知らない人でヤンしゅう!」
「名前くらい聞いとけよ、このタコ!」
イツキにキレられるタニシ。やっぱ、口調とかの感じがファルに似ているなコイツは。それはさておき、こんな意味不明な物をいきなり手渡されたら誰だってテンパるだろう。ある意味、デーモン・コア相当のブツを託されたんだからな。超絶高価なお宝とか、大量破壊兵器、ウン万人殺せるほどの毒薬とかを渡されたようなものだ。普通の人間が落ち着いていられるわけがない。
「ああ、でも、特徴は覚えてるでヤンス? 金髪でオールバックな髪型でナイスミドルな聖職者の人だったでヤンス!」
「まさか……!?」
「思い当たるヤツがいるのかよ?」
「ああ。イツキ、お前には話してただろ? 俺の弁護人をしてた司教の話を。正にタニシの言った特徴と一致しているんだ。」
同一人物とは限らないが、果たして、そんな曰く付きの一品を持ち出せる人間はどれだけいるのだろう? そのモノ自体が捕まる原因になったんだし、オードリーやシャルルが大切に保管していそうなもんである。
ましてや、デーモン・コアに酷似してるのだから封印なり、破壊なりしていてもおかしくはない。でも名無し男の正体の手がかりがなくなってしまうのだから、普通に保管されていたのだろう。それなら、あの人が騒ぎの隙を見て持ち出したのだろうか?
「ハハ、まさか、そんなんで同一人物とは限らないだろ?」
「いや、そういう見た目の人はあの人だけだった。少なくともあの裁判の時は。しかも、それが様になってたし、なんというか……カリスマ性を感じさせるっていうか、な? なんかあの中で一番の大物みたいな雰囲気さえあった。」
「そうそう! スゴい人感のオーラがプンプン匂ってたでヤンス!!」
「オーラってのは匂わないだろ……。」
オーラは匂わないと思うが、何か香水の様な匂いがしたのは嘘じゃないと思う。まあ、宗教のエライさんだし、身だしなみに気を遣っているからだろうな? やっぱ、そういうところからしても、只者ではない感は凄かったな。貴族や王族とも違う、大物とか首領みたいな……?
「その人物の名は?」
「司教のレオポルド・ダ・ヴィッチさんだ。今回、俺を弁護してくれたし、ジュリアのパーティーにも出席してたんだ。」
「彼女の知り合いということか……。憶えておこう。」
どういう経緯かはわからないが、俺らを二度にも渡って手助けしてくれたのは間違いない。何者なのかはジュリアに聞いてみればいいだけなので、正体を知るのはそれからでいい。何にしても今度会ったときは色々お礼をしなくちゃいけないな。




