第52話 どうせならひと思いにやってくれ。
「ガッシャーーーーン!!!!!!」
「ぐふっ!?」
「二回目! 普通ならこの時点で確実に死んでますよ! さあ、三回目はあるのか?」
為す術もないまま、名無しは二回目の叩き付けを食らった。明らかに一回だけで致命傷を受けそうな威力なのに、二回目もまともに受けてしまっては、ますます生還は困難になる。まだ名無しは呻き声を上げているから、生きているのは間違いない。次の三回目までになんとかしないと、確実に死んでしまう!
「異常なタフさですね? この方、魔族か何か何ですかね? そうじゃないと説明が付きません。あのタマネギ頭の人造人間もビックリの耐久力です。」
「グオゴゴ……!?」
「ふむ、ジャック? アナタもそう思いますか? 明らかに常軌を逸したタフさですもんね? アナタにも匹敵するほどの強さを秘めているかも知れません。」
「グオ!!」
「自分の方が強いって? 失礼、失礼! 身内を前にして相手の方が強いなんて言ったのは間違いでした! アナタの方が強いに決まってるじゃないですか。」
スミスとカボチャ兜はここまでの経過に驚きの声を上げている。言葉を話さないカボチャ頭とのコミュニケーション手段が気になる。謎だ。それはともかく、あんな酷な刑を二回も耐えたというのは処刑人の奴らからしても異常な事態であるらしい。名無しの耐久力を見て魔族を連想したようだ。
しかも、あのゴリラ野郎のことを引き合いに出している。奴らはアレ並みかそれ以上という風に判定している。確かにそうかもしれない。タフさだけでは説明の付かない何かがあるのは間違いない。もしかしたらアイツと同じように再生能力を持っているからかもしれないのだ。
「タフさなんて、どうでも良いことですね。気にしないでおきましょう。刑の執行は変わらず行わないといけないのですから!」
「グオゴ!!!」
(ジャラリッ!!!)
名無しの耐久力に疑問を持った奴らだったが、気を取り直して刑の執行を再開し始めた。鎖を持って鉄駕籠が引きずられると、中のアイツも小さく呻き声を上げながら身じろぎしていた。まだ、生きている。苦しげであり命も風前の灯火と言える状況ながら、何か耐え抜こうとしている意思が感じられるのは気のせいだろうか?
「グオゴゴゴ!!!」
(ガチャリ、ビューン、ビューーン、ビューーーン!!!!)
カボチャ兜は鉄駕籠を高速で振り回し始めた。彼の死まで刻一刻と迫る中で、何か手立てはないか、と必死に考えた。せめて何か長引かせたり、気を逸らしたりすることでもしたい。とにかく、このままストレートに刑の執行を行わせるわけにはいけないのだ。その時、俺の頭の中に苦肉の策ともいえる妨害策がひらめいた。
「なあ! ちょっと聞いてくれよ、処刑人さん?」
「はぁ? 何ですか、こんな時に? これから刑を止めろと言われても困るんですけどね?」
「あのさ、俺らもこの後、刑を執行するんだろ? だったら、いっそのこと一片にやってくれないかな、って思ったんだけど……?」
「何を言いますのやら……。どうせならひと思いにみんな仲良くやってくれとおっしゃるのですね?」
「ハハ……まあ、そういうことかな? それをコッチにぶつけりゃ俺だって普通に死ぬと思うよ?」
「アンタ、何言って……!?」
俺はそのまま鉄駕籠をぶつけろと言った。それなら手間も省けるだろう、と提案した。気が狂ったかのような発言に対してイツキもあきれ果てているようだ。でも、苦し紛れの策みたいなものしか思いつかなかった。
下手に手加減するようなやり方を頼むよりは、俺も潔く死を選ぶ選択を提示した方が奴らも受け入れるだろうと思ったからだ。それに……俺が危機的状況になれば脱出するための奇策でも浮かぶんじゃないかと思ったわけだ。いつだって追い込まれたときこそ、何かを起こせてきたわけだし、それに賭けてみようと思ったのだ。
「いいでしょう。結果的には同じ事になるのです。ジャック、その鉄駕籠を勇者にぶつけておあげなさい。」
「グオゴ!!!」
スミスは意外にもあっさりと俺の提案を受け入れ一片に片付ける方向に転換した。カボチャ兜もこちらに向き直り、狙いを定めながら回転の勢いを強めていく。さあ、問題はここからだ。ここからどうやって抜け出すのかと集中力を高めた。高速に緩みはないのか、とか処刑台を倒す事は出来ないかと動かしてみる。でも……流石にどうにもなりそうにない。このまま名無しと仲良く死んでいくしかないのか……?
(ヒュッ……コロン、コロン!!)
「ん? 何ですかこれは!?」
(ボンッ!!!)
「ううっ!? 何だ、この煙!? ゴホゴホッ!!」
「グオ!? ゲホゲホ!!」
何やら丸いものが転がってきたと思ったら、それが破裂し、煙を噴出させた! アレは煙幕丸……? 俺の故郷では敵から逃げたり攪乱する目的で使われる物だ。こんなのが出てくるって事は……俺と同郷の人以外あり得ない! 誰か来たのか? こんな訳のわからない場所にどうやって……?
「戦技一〇八計が一つ、鶴刺一閃!!」
(バギャン!! ガッシャアアッ!!!!!)
「グオガッ!?」
聞き覚えのある声と共に、金属が破断するような音が鳴り響いた! 煙幕の中で何が起きているのかわからないが、奇跡的にあの人が助けに来てくれた事は間違いなさそうだ。しかし、こんな所へどうして? ここまでやってきた経緯も気になるし、俺の居場所がどうしてわかったんだろう?




