第47話 ”勇気の共有”の謎
「フーン。俺達を倒すためだけにいちいち場所を変えるんだ?」
神の洗濯場と異端審問会の要人を一度に殲滅する作戦、それが今、実行段階に入った。本来はキョウナ達が旅芸人に扮して慰安公演を行い、囚人達を扇動して暴動を起こし、混乱に乗じて一気に占拠するという計画だった。しかし、審問会側に潜入がバレ、俺が強行突入してみんなの脱出を手助けするというプランBに移行することになった。
「ホホホ、当然でしょう? それぞれの場所には適した用途という物があるのです。相応しい場所で決着を付ける必要があるのですよ。特に魔王である貴方なら尚更ね。」
「フーン。あっそ。」
勇者とイツキ達を別の場所に移され、救出・共闘するという作戦までもが潰された。それだけで負けるとは思っていないが、面倒なことになった。それぞれが目の前の敵を倒して合流するのも時間がかかるかもしれない。行き先がわからない以上はどうしても合流までにラグが出来てしまう。その間に援軍でも来られたら更に面倒だ。早めに事を済ませないと状況は不利になる一方だ。
「処刑される勇者を利用してこの場所の壊滅を企んだんでしょうけど、失敗に終わりましたね。あなたの仲間と勇者は他の場所に隔離、我々も元の場所から移動し、別個にそれぞれを叩く事にしました。”勇気の共有”を発動されてはたまりませんからねぇ。」
「オレは魔王だ。あの力が発動しない可能性もあるじゃないか? 元勇者のアンタがその可能性を恐れるなんて、らしくないじゃないか?」
「でも、あなたはあの力が発動すると信じていたでしょう? その確信があったからこそ大胆な計画を実行に移したのでは?」
「否定はしない。オレの勘に従ったとでも言っておく。」
光と闇、その属性の違いにも関わらず発動するのは知っている。勇者の彼女が最たる例だ。あの女はどちらかというとオレ達に近い属性。普通なら反発し合う属性。普通に考えれば悪影響しか出ないはずだ。
でも、あの勇者は違う。あり得ない属性同士でも発動を可能にしているんだ。その理由がどこにあるのかわからなくても、賭けてもいいと思わせるだけの魅力はあった。オレの勘がそう言っている。アイツはオレの敵ではない、と。
「私はあの力を危険視しています。もちろんあなた方のような、反教団の勢力と結託されたら大いに困るからです。ですが、それだけではないんですよ、あれは。」
「何を言いたいんだ、アンタは? 話が見えてこないぞ?」
「最も重要なのはここです。私の仮説ではありますが、あの力は敵味方の区別無しに発動する力なのではないかと考えています。」
「……? そんなことありえるのか?」
「これまでのロアの戦闘記録を分析した結果、そういう結論に至ったのです。一部の者がその様な状況に陥り、敗北を喫する結果になっているのですよ。」
敵味方関係無しに発動する? 荒唐無稽な話にオレは首を傾げざるを得なかった。敵にさえ力を与えると言いたいのか? 馬鹿馬鹿しいにも程がある。勇者に共感した者達がそれぞれの能力を共有するという現象なのに、共感すらしていない敵にも影響を及ぼすなんて事が……? 信じがたい話だ。ワザと時間を稼ぐために荒唐無稽な話をしているだけなんじゃないか?
「事例を挙げねば納得できませんか? その中でも最たる例、フェルディナンドとの交戦記録を以て説明しましょう。」
「あの戦いはフェルディナンドが暴走した結果、滅んだだけじゃないのか? しかも、途中でヴァル・ムングが介入したのが敗因だと聞いたけど?」
「表向きの事象はそうなっているでしょうね。あの戦いの裏事情を探れば決してそうではないことが見えてくるのです。」
「なんか実際に見てたみたいな言い方だな?」
「見ていましたとも。魔術師の目を使って観測してたのですよ、私は。」
「のぞき見だなんて、元勇者のクセに趣味悪いんだな?」
オレは学院内にいた同胞からもらった情報があるから、何が起きていたのかはある程度知っている。結果的にフェルディナンドが死んだのは判明してるけど、死因まではわかっていない。ヴァル・ムングが現れ、一気に事態が好転し戦いが終結した。そこまでしかわかっていない。あくまで外から見ていた人間から聞いた話なので真相までは判明していないんだ。
「あの戦いを決したのは異空間での戦いだったのですよ。フェルディナンドは本体である魂を異空間に置いていたのです。まるで、あなた達魔王と同じようにね?」
「何処まで知っているんだ、その話を?」
「私は魔王の本質を知っているとだけ言っておきましょうか。私の知人にその筋の方がいるので。おっと、話が逸れてしまいましたので元に戻しますよ。ロアは本体の居所を突き止め最終決戦に望んだのですよ。」
「まあいいや。で、どうなったの?」
「彼らは殴り合いという原始的な手段で決着を付けたのですよ。しかも、フェルディナンドが勝利した!」
「なんで勝ったのに負けたんだよ?」
「彼はあの瞬間、格闘の才能が覚醒したのです。そしてあまりにも発揮しすぎた為に力の配分を見誤り、自滅するに至ったのですよ!」
「……!?」
あまりにも信じがたい内容なので、どうしても嘘臭く感じてしまう。とはいえ、あの勇者ならやりかねない行為かもしれない。アイツはどうもフェアな条件で戦うことを好んでいるみたいだからな。
有利な立場で戦うことに引け目を感じているフシがある。それがかえって、フェルディナンドに眠っている力を呼び覚まさせたのか? それがシャルルの言う、勇気の共有の”副作用”的な効果なのだろうか……?




