第46話 彼は戦えるのだろうか……?
「ちゃちゃっとやっておしまいなさい、ジャック。隊長に次ぐ強力を持つアナタの実力を見せておあげなさい。」
「ゴオオゴゴ!!!」
カボチャ兜は鎖をジャリジャリと鳴らしながら、巨体を前に進ませる。なるほどブレンダンに次ぐ腕力の持ち主か。体格だけならヤツ以上だろう。持っている鉄駕籠といい被っている兜にしても相当な重量があるはずだ。それを難なく装備し動けるのだから、手強い相手なはずだ。これは俺やイツキであっても苦戦は免れなかったはずだ。
「動け! 動けってんだよ! このまま黙ってやられるつもりか!!」
「せめて、降参の意思だけでも示してくれ!」
「……。」
俺やイツキの呼び掛けにも彼は答えなかった。拘束を解かれ、膝立ちでへたり込んだまま名無しの男は動こうとしなかった。目の前に驚異が迫っているのに、それを気にしてさえいない! このまま無惨にやられるのを待っているだけだった。
「グオオ!」
「……。」
カボチャ兜は名無し男の目前で止まり鎖を持っていない方、左腕を振り上げて殴りかかる素振りを見せた。そのまま腕を振り容赦なく殴り付けた。ゴウッ、と風切り音が鳴るほどの勢いで殴られ、名無しの男は大きく吹き飛ぶ羽目になった!
(ドシャァァァッ!!!!)
「ぐ……うっ!!」
「ほう? 即死は免れた様ですな。並みの者ならただジャックに殴られただけで頭部を吹き飛ばされる程だというのに。これに耐えたということは見た目どおり、戦いの心得は持っておいでのようですね。」
ただ技術もない普通に腕を振りかぶるだけという行為ではあったが、この前に見た拳王の拳にも匹敵する迫力のパンチだった。並みの一般人なら首がもげるほどの威力というのも納得できる。首がとれなくても骨くらいは折れそうな勢いではあったが状態を起こそうとしている辺り、怪我らしい怪我はしている様子がなかった。スミスが言うようにアイツは並外れたタフさを持っている!
「以外と手強いようですよ、ジャック? アナタが本気を出すのにふさわしい相手なのかもしれませんよ?」
「グオオゴゴ!!!」
カボチャ兜は一向に言葉を発しようとしなかった。名無しの男も不思議ではあるが、この男自身も謎めいた要素を持っている。不気味なのはあのカボチャの形をした兜だ。あの肉厚に作られ、お化けの顔を模した目や口の形に開いた穴の奥から恐ろしい獣の眼光が輝いているような錯覚を覚える。あの下にはどんな顔が存在しているのだろう? 想像するだけでも恐ろしい。
「う……あ…あ……。」
「ムッ!? この構えは……!?」
吹き飛ばされ、起き上がりカボチャ兜に向き合ったヤツは何を思ったのか、両の拳を肩の高さまで上げて拳闘のようなポーズを取った。これは明らかに相手の攻撃に備えるために取った行動に違いなかった! 殴られたショックで少し記憶を取り戻したのか? それとも本能が無意識的にとらせた行動なのか? それを伺い知ることは出来なかった。
「ほうほう! これは面白い。記憶は戻らずとも、本能的に防御体勢を取ったようですね? これは中々出来ることではありませんよ。その姿勢が染み付く程に経験を重ねていなければ出来ないことですからね。彼は間違いなく歴戦の戦士なのでしょう!」
無意識的に防御行動を取ってくれたのはよかったが、それだけで勝てるほど勝負は甘くない。依然として不利な状況は継続している。なすすべなくやられるだけの状態から一歩進んだだけに過ぎない。勝って生き残るには更なる前進が必要なのだ。
「今のうちに倒しておしまいなさい、ジャック! もし、記憶が戻ってしまうと手こずるかもしれないですよ!」
「グオオゴゴ!!!」
カボチャ兜は攻撃を再開した! 今度も同じで技術もないただのパンチを繰り出す。とはいえ次は猛連打だった! 片腕だけの攻撃だが滅多打ちといってもいいレベルで凄まじい威力の雨あられである! 並みの人間ならとっくに粉砕されている程だったが、名無しの男は無事持ち堪えていた! 苦しげな呻き声を上げてはいるが、例の防御姿勢は全く崩れていない!
「う……ぐ……!」
「むうう!? なんというタフさ!? ただ構えを取っただけでジャックの攻撃を物ともしないとは!!」
「グオォゴッ!!」
さすがに処刑隊の二人も焦りを見せている! 隊の2番目だという強力の持ち主でさえ崩せない防御の牙城に驚異を感じ始めたようだ。カボチャ兜は一通り殴り付けた後、一旦後ろに下がり肩に担いでいた鉄の駕籠を地面に下ろした。とうとうアレを使う決心を固めたようだ!
(ズゥン!!!)
「ジャックお得意の処刑具”死の弁当箱! まるでお昼の食事を済ませるかの様に軽~く相手を粉々にするのです!」
「グオオゴゴ!!!!」
(ジャラリッ!!!)
死の弁当箱だと? てことはやっぱり……あの中に相手を閉じ込めて苦しめるような処刑具なのか? しかも鎖がついてるって事は振り回したり地面に叩きつけて使用するのだろう! まずいぞこれは! あんなのに入れられたらガードもへったくれもない! なんとしてでもアレに捕まらない様にしないと……。




