第28話 謎が謎を呼ぶ……。
「デーモン・コアだって? バカ言ってんじゃねぇ。あんな物がゴロゴロそこらに転がってる訳がない。何かの見間違いだろ?」
「マジだって! お前らが来る前に異端審問会が大騒ぎになってたんだぜ。やばいモンが見つかったってな!」
イツキが怪訝そうに他の受刑者達に事の詳細を聞き出そうとした。そんな風に疑いたくなるのも無理はない。イツキにとってデーモン・コアは身近な存在だからだ。自分の仲間が所有しているので本物の事をよく知っている。知っているからこそ、ありふれた曰く付きの品とは訳が違うのがわかっているのだ。この世には基本的に12個しか存在しないはずの物だからだ。
「そいつぁ、そんな物騒な物を持ってフラフラとほっつき歩いてたってんだぜ? 見るからに危険人物だったそうだぞ。」
「外部の情報をよくそこまで知ってるもんだな? いつのタイミングで心をまっさらに洗浄されるのかわからないっていうのによ。」
「看守どもの間でも話題になって位なんだぜ? だから俺らの耳にも入ってきたんだ。」
「どうせ俺らはまっさらにされるってのが前提になってるから、ここでの漏洩なんて気にしちゃいないのさ。冥土の土産にでも聞かせてやるってなぐらいにな。」
なんで刑務所の中で情報が出回ってるのかと思いきや、”死人に口無し”上等なノリで外には漏れないからこそ、そういう事になっているのを理解した。外に出るのは記憶を消されてからとか、命を落としてからになるというのが当たり前な環境だからこその扱いなんだろうな。とはいえ他の囚人の情報なんてそんなに出回るはずがない。よっぽどな大事件だったと見える。
「で? こんな木偶の坊の白痴野郎がそんな物を持って何をしてやがったんだ? まさかコア結晶でお手玉遊びとか大道芸に使ってた訳じゃあるまいしな?」
「ハハッ! お前、犬のクセに面白いこと言うのな! 残念だがアンタの冗談ほど現実は面白くなかったんだ。ただただ呻き声を上げながら……丁度、今みてえな感じにほっつき歩いてただけだそうだぜ。」
「ああ……コイツ、捕まる前からそんな感じだったのか……。」
もしかしたら捕まった後に、「あうあうあ~」な状態にされたのかも、とも考えたがそうではなかったらしい。普通にコアのような物を持ち歩いてたんなら、怪しまれて連行されるのは確定な状況だったのだろう。しかし、一体何故、この名無し男はそんな状態になっていたのだろう? 誰かに記憶を消された上でほっぽり出されたのだろうか? 自分で記憶を失うなんて事はありえないし……。
「おい、コアの様な物って言ったよな? コアはコアだろう? 基本的にはデカめの宝石のような形をしてるって言うじゃないか?」
「ああ? それがよ、その世間一般のデーモン・コアの形じゃなかったそうだぜ。なんつーか、武器みたいな形してたとか……?」
「武器みたいな、ってなんだよ? まるで武器以外の物にも見えるみたいな言い方じゃないか?」
「知るかよ! 俺らもただ聞いただけだから、実際見てねえんだよ!」
「なんでも、槍……? みたいな形だったそうだぜ? あくまで一番近い形状の物がそれだったってだけだそうだがよ。」
「何? 槍? コアでできた槍? 穂先にでも使われていたのか?」
名状しがたい、”槍”の様なモノであったらしい。名前を与えるなら槍ってのが一番しっくりくる様な物体だったわけだ? 確かにコアくらいの大きさなら、イツキが言ったように槍の穂先なら無理はないかもしれない。後は短剣とか小型の刃物にするなら武器として成立するかも?
「槍の穂先っつーか、でっけぇ針みたいな形ではあったそうだぜ?」
「針? じゃあ、馬上槍みたいなものか?」
「う~ん、それも違うらしいんだよ。 先端は針だったらしいが、それ以外の部分は得たいの知れないカラクリとかみたいな形をしてたらしい。それがあるから槍と断定できねぇんだとよ。」
「なんかカラクリの部分にボウガンみたいな引き金とか取っ手までついてたそうだぜ? ますます意味がわかんねえよ。どんなモンなのか気になってしょうがねぇ!」
ますます話がワケワカメになってきた! 槍かと思ったら、変なカラクリ的なものが柄になってて、グリップとか引き金が付いていると? なんかコアの槍を発射して攻撃したりするんだろうか? いやいや、そんなのありえないだろ? コアなんて貴重品を矢とかみたいに湯水のごとく使い捨てにするだなんてとんでもない!
昔っから、デーモン・コアの類似品、通称”賢者の石”を作ろうとしてフェルディナンドさえ必死になってたっていうのに……消耗品扱いですか? ヤツに見せたらブチキレるのは間違いないだろう。多分今頃、草葉の陰でシクシク泣いてると思うよ?
「う……あ……、ス……リー……マ。……キュ……ブ?」
「意味不明な物体を持ってた上に、本人はこの有り様ってワケよ。そりゃ、異端審問会も頭を抱えるだろうさ。」
「お前、一体何者なんだよ……?」
相変わらず、名無しの男は意味不明な単語らしき言葉をブツブツと呟いている。その割にはいつの間にやら、食事を完食していたようだ。皿の中身は空っぽだ。そこでふと俺はコイツの頭のツムジに視線をやった。そこには驚くべき事に4桁の数字の刻印、タトゥーらしきものが付いていたのだ! ”9999”? これは一体何を意味しているのか? でも、なんか、これと似たようなモノが付いていたヤツがいたような……?




