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【第4部】勇者参上!!~勇者マストダイ! 不適格勇者を直ちに排除せよ!!~  作者: Bonzaebon
第1章 勇者マストダイ!! 【勇者なのに……〇〇されました。】
25/28

第25話 全ては神の名の下に……。


「ここまで説明したところで火を見るよりも明らかではないでしょうか? 闇術の正当性などこれっぽっちも存在しないではありませんか。あなたはこれでも話を続けるというのですか? 早めに”負け”を認めた方がよろしいのでは?」



 司教が話を進めれば進めるほど、立場が不利になって行っている様にしか見えない。闇術の正当性を述べるのかと思いきや、その有害性を淡々と並べ立てただけになってしまった。それでも、レオポルド司教は表情一つ変えていない。いつもと変わらない冷静さをずっと保っている。その余裕はどこから生まれてくるのだろう?



「いいえ、続けますよ。ここまでで話したのは闇術の中でも最も禁忌に当たる部分でしかありません。その他はどうでしょうか? 例えば、”身体力増強(アクセレイション)、これは自らの身体能力を向上させ本来の能力以上の力を発揮する物だと言われていますね。」


「その術は好意的に表面上だけを見れば、特に悪意のある物とは認識されないかもしれませんね。しかし、その実はどうなのでしょう? 魔族達はその術を使って手足を一時的に延長したり、時には形状を他の生物の物へと変化させることにも用いるそうではありませんか? 最たる例を出せば、本来は存在しない体の部位、手足の数を増やしたり、翼を生えさせたり、皮膚を甲殻類の外殻に変化させるといったことも見受けられる様ですが?」



 アクセレイションといえば、エルが最も多用している闇術の一つとして挙げられるだろう。元々、非力で華奢な体の彼女が身体能力を補うために魔力を消費して一級の戦士並みの働きをしている。


 少なくとも彼女は身体能力向上の目的以外では使用していない。体の形を変化させるみたいなグロテスクな使い方なんて見たことがない。例外があるとすれば、コアが暴走して悪魔の様な姿になったときくらいだ。アレは邪竜の横槍で無理矢理そうさせられただけなので、意識的に使ったわけではない。本人はそんな邪悪な目的で使うはずがないのだ。



「その様な事にも利用できるという事実だけで、”悪事”認定をされるとおっしゃるのですね?」


「その通りです。どの様な使い方をしようと、悪意のある使い方は決して行わない、とは言い切れませんからね。」


「悪意のある使用の可能性がある限りは疑うべきだとおっしゃるのですね?」


「そう言っても差し支えありません。”疑わしきは罰せよ”の精神ですよ。」



 かつて邪な目的で使われたという経緯があるから、同じ物を使えば悪意のある使い方をしたも同然と見なされるのか……。人の心が決して善良ではなく、根底には必ず”欲”という名の悪意が存在する……なんて言説があったな。


 古代の哲学者がそんな概念を作ったそうだが、逆に人の性質は本来善良なものであると言った哲学者もいたそうだ。どっちが正しいとかではないはずなんだが……宗教的に神様が絶対”正義”であることにしとかないと成り立たないから、シャルルもそんなことを言っているんだろうな。



「であれば、これはどうですかな、シャルル殿? その言説を肯定するのなら、武装している人間は全て”悪”とされるのではないですか?」


「ハハ、そう来ましたか。武装即ち武力と称される物を帯びていれば、悪意のある使い方をする可能性があると。おっしゃりたいのですね? 確かにそうでしょう。同じく”力”として見るのであれば、その認識で間違いないでしょうね。」


「それでは”武力”も”闇術”と同等に悪事に利用する可能性のある力であると認めるのですね?」



 確かに武力も人を傷付けたり、物を壊したりする事が出来るって言う部分は共通している。どっちも力であることには違いない。武力の成り立ちはどういうことから発祥したのかはわからないが、少なくとも相手を倒す事が目的で成り立ったに違いないだろう。それをどう使うか次第で、”悪意(殺害)”と見るか”善意(守る)”と見るかは立場によって違ってくるはずであって、どちらも絶対じゃないと思う。



「場合によってはですけどね。町中を抜き身の剣持ったままで歩き回っていたりすれば、疑われるのも無理はないじゃないですか。持っているかどうかではなく、悪意を持った使用をする、と疑われるのがいけないだけなのでは?」


「それは闇術に関しても同じではありませんか? 何も全ての人が疑われるような立ち振る舞いをしているわけではありますまい?」


「ハハ、屁理屈はそのくらいにしておいた方が良いのではないですか? あなたに勝ち目などないのですよ。これから、あなたに引導を渡します。」



 シャルルは武力も場合によっては疑われるというのは認めた上で、レオポルド司教に事実上の勝利予告をした。もうこれ以上は何を話しても無駄、みたいな話の切り方をしているが、ここからどうするというのだろう? 人類の最大の課題とも言えるこの話をどうまとめるというのか?



「全ては”神”ありきなのですよ。その行いが善であるか、悪であるかは”神”だけに決める権利があるのですよ。武力は”神”が人間に与えし力、闇術は魔族共が”神”に対抗するために生み出した、邪なる力なのです。これは揺るぎない事実。異議を唱えることこそ”神”への反逆を疑われても仕方のない事なんですよ!」



 シャルルは毅然として言い放った。レオポルド司教だけではなく、俺の方も見ながら、揺るぎない事実として、闇術を”悪”と断じた。これ以上は反論を許さないと宣言をしたような物だ。反論は神への反逆と見なすとしてきた。こんなのがまかり通るのはここが教団の領域だからとも言える。なんだか、梁山泊から追放処分を食らったときの空気と似ているのを思い出してしまったぜ……。


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