第20話 真実は見えるか?
「で? 無事、有罪判決が下されたんだろ?」
「無事、有罪……じゃなかったんだなこれが。」
「なん……だと……?」
裁判初日は無事終わった。全く味方のいない状況で有罪判決まで力業で持って行かれるかと思いきや……謎の弁護人、レオポルド氏に助けられたのだった。シャルルの提示した勇者簒奪説は証拠不十分となり、不起訴となった。これは牢屋の同居人イツキの予想を大きく裏切る結果なのであった。俺が有罪判決になった上で彼らも事を起こす計画だったらしいが……予定を狂わされる事になったようである。
「なんで……だ? アンタには弁護人すら用意されてないはずだったろ? 形式だけの一方的な裁判にあるはずだろうがよ?」
「いや……弁護人が普通にいたんだが? もしかして、お前らの差し金かと思ったくらいなんだが? レオポルドって人は知ってる? しかも教団関係者で枢機卿の人?」
「知らねえよ! 俺らクロガネ団に教団の協力者はいない! しかも枢機卿だと? そんな上のヤツは俺達の敵であっても、味方であることはない!」
「あ……そう?」
てっきりクロガネ団の協力者かと思いきや、関係はなかったようだ。ますますあの人物の存在が謎めいた存在になってきた。その情報網の凄さから、クロガネ団と関わり合いがあるのかなと思ったんだが。流石に教団を敵視してるんだから、協力関係になるはずがないか。でも、あの人ってどこの勢力なんだろう? 少なくとも異端審問会やテンプル騎士団とは違う様だ。明らかにそれに反する行動を取っているし。
「で? 何者だ、その男は? 弁護人として成立するくらいなら、それなりに有能なんだろう?」
「実は俺もよく知らない。この前、というかハリスの塔が出現する直前に出会ったばかりなんだ。」
「は? 知り合いで肩書きも知ってる割には最近会ったばかりなのかよ!」
「うん、まあ、俺がピータンの前でエルとイチャついてたら、突然現れたのがその人だった。」
「イチャついてた? お前はバカップルか? 勇者がしょうもない事してんじゃねえぞ!」
だってしょうがないじゃない! エルとは久しぶりの再会だったんだから! おまけにパーティーだからテンションが上がってたからついついエルをからかってみただけなんだよ! そこへ水を差すかの如く現れたのがあの人だった。しかもなんか教団のお偉いさんみたいだったから、ちょっとビックリしたもんだ。
「いいじゃないか、別に! 三ヶ月程度別で行動してたんだから! それは置いといて、その人は枢機卿だって名乗ったんだよ。」
「ああ、なるほどな。アンタの仲間の披露宴パーティーなんだったか。あのヘタレ犬も出席したかったって、喚いてやがったな。確かに教団関係者ならあの場所にいてもおかしくはないか……。」
「うん、ジュリアが俺やエルを敵視している連中を完全にシャットアウトしてくれてたから、あの会は成り立ってたんだ。その場にいるって事は敵対関係ではないはず。それでも教団のお偉いさんで参加できるような、俺達を問題視していない人がいたのが意外だったな。」
ジュリアの結婚式は聖都で執り行われたようだが、完全に教団関係者ばっかりだったようだ。とはいえ、互いに敵対関係にあったりする勢力も普通に同席していたようなので、腹の探り合いとかでとてもギスギスしてピリついた雰囲気が漂っていたそうな。なにか戦場のような殺気だった会場だったらしい。
ジュリアが笑いを交えながら語っていたので印象的である。披露宴はある意味、ジュリアのストレス発散の場にもなっていたようだ。「ウチらの結婚式を戦場にしてんじゃねーよっ!!」とか思いっきりシャウトしてのが忘れられない。
「ホントにそこで会ったのが初めてだったから、その人のことは全然知らないんだ。でもなぁ、その後タイミング良く、ハリスの塔が出現したんだよな。なんか狙ってたとか、知ってたとかみたいにタイミング良く現れたんだよ。」
「ハッ、気のせいに決まってるだろ。実は魔族だったとかでもない限りはな。」
「うーん、普通はそう思うだろうな。でも、この後が問題なんだ。蛇の魔王が俺を異空間に引きずり込んでた時にあり得ないことが起きた。」
「ああ、タンブルとキョウナが乱入しに行った場所だな。蛇の魔王の奇襲には驚いたもんだ。あの魔王は潜むのが大の得意だからな。で? その話に何の関係があるんだよ?」
「中でひたすら罠の攻略してたら、あの人に会ったんだよ!」
「は!!??」
イツキは何を言い出すんだと言わんばかりに俺へ疑いの目を向ける。誰だってそう反応しますよね? だって唐突にあの人が出てきたんだもん。何の脈絡もなく。というかあのハゲに案内されて塔の頂上に行ってみたらあの人がいた。しかも、あのハゲの上司であるっぽかった。その事実で更にワケのわからなさは加速する一方だった。
「意味がわからんぞ! なんでそんな所にいるんだよ! 魔王の作ったような異空間にゃ、魔王に匹敵する魔力の持ち主でもなきゃあ入ることなんてできなんだぞ?」
「え? そうなの? それは知らんかったけど、普通にいたんだからしょうがないじゃない。その人の部下もいたんだけど、そいつの補助があったから無事生還することも出来たんだけどな。パッチラーノとか言う名前のハゲ男なんだけど、何か知ってるか?」
「枢機卿にはげ頭の部下? ますます意味がわからん! ん……待てよ? ハゲ頭? パッチラーノ……?」
「知ってるのか? 思い当たるヤツが?」
「いたような気がする……。テンプル騎士団に。名前は少し違うが、”パッチ”と呼ばれている男なら見たことがある。」
「テンプル騎士団だって……?」
あのハゲと同一人物かは定かではないが、似たような特徴、名前の男が存在しているようだ。しかも……テンプル騎士団だと? アイツはそんなエリート組織の人間なんだろうか?
いやいや、俺の知っている調子のいいハゲとは別人なのかもしれないが、同じだったとしたら……。それは大変な事なんじゃないか? あの枢機卿はテンプル騎士団と通じている……? 逆にハゲがテンプル騎士団に入り込んでいるスパイなんて線も考えられるよな? さあ……どっちなんだろう?




