第10話 残る一人の勇者候補とは……?
「アンタの身の上話を聞かせてくれないなら、テンプル騎士団の事を教えてくれよ。思うつぼとか言ってたのは何なんだ?」
ブレンダンの過去や命令違反した上司の正体が気になるところだが、本人が言及を拒否してるんだから仕方ない。ここで無理矢理、暴力に身を任せて乱闘するわけにもいかんしな? 処刑隊の皆さんに止められるしフルボッコにされるのは俺の方だろう。俺が枷をはめられている上に相手のガタイが良すぎるので絶対負ける。ならどうするか? 他の話題を振るしかないでしょ?
「ああ、教えてやるよ。身の上を話すよりかは気が楽だ。何しろ奴らへの嫌がらせにもなるからな。」
「そこだけ聞いてると、ただの嫌なヤツみたいに聞こえてくるぞ。」
「実際、ワルの看板をしょって生きてんだから当然の事だろうが。つまらん揚げ足取りをするんなら聞かせてやらんぞ。」
なんだか天邪鬼な感じなヤツだな。悪ぶってるから何も教えてくれないと思いきや、異端審問会の裏事情を教えてくれた。そうかと思えば自分の過去に何かあることを仄めかしたクセに話さないとか、ひねくれてるとしか思えない。でも、基本的に気に入らないヤツに不利になるような事は積極的にやるようだ。めんどくさい奴め。
「奴ら神殿騎士団は教団の中で最も最強の力を持つ勢力だ。武力、発言力、権力、あらゆる意味で全ての勢力を上回る。次点の異端審問会でさえ奴らから顎で使われる様な扱いだ。まるで掃除屋みたいな扱いで異端者狩りをさせやがるんだ。」
「お前らが使い走りみたいな扱いされてるのか!?」
「その癖、大きな獲物の時だけはしゃしゃり出てくると言うわけさ。お前を捕縛するための勅命を出してきたのもそういうことなんだろうぜ。」
「え? 法王からの勅命を送りつけてきただけじゃないの?」
教団で最強最大の勢力がテンプル騎士団なのか。あ、でも最大とまでは言ってないか? どう考えたってクルセイダーズの方が人員は多そうだし、最大規模ならそこらで見かけるはずだしな。あくまで法王の守護と聖都の警護が主な仕事なんだろうから、権力だけはデカいエリート集団なのかもしれない。何処の国でも最高権力者に近しい連中が牛耳っているのは変わらないのだろう。俺達の国で言えば、宦官のポジションに当たる組織のようだな。
「勅命を送りつけた上で様子を窺ってるのさ。ババアがどういう行動を取るかをな。ちょっとでも神殿騎士団の意にそぐわぬ動きを取れば、異端審問会が監査を受ける羽目になるだろう。そうなっちまえばババアであろうと失脚・処刑のコンボでお役御免となるだろうぜ。」
「なんか見張られてるみたいじゃないか……。」
「奴らの目はどこにでもあるのさ。スパイなんてそこら中にいると思っておいた方が身のためだぞ。」
まるで本当に宦官とかと同じじゃないか。あちこちに密偵を放って様々な情報を得ていたり、その他勢力を監視していたりする悪辣さがそっくりだ。でも、そういう隙のない絶対権力なんて腐敗してしまうのがオチだ。「絶対的権力は絶対腐敗する」なんて言葉もあるくらいだしな。誰か特定の人物だけが独裁体制を敷いているに違いない。とすればテンプル騎士団のトップがそうだったりするんだろうな。
「まあ、ババアも何かしらの策は考えているんだろうよ。奴らの目を出し抜くための手段をよ。」
「アンタが裏切って、脱出を考えてるのとおんなじか?」
「あんなババアと一緒にするな。俺には俺のプランてもんがあるんだ。」
「ああ、そうなの。」
監視をされているのはわかった上であのオバさんも何かを企んでるわけね。ヘイゼルに勇者候補としての功績を与えるための工作でも考えているんだろうか? あの娘はエルだけじゃなくて、俺にも実家を炎上させた恨みを持っているだろうから、色々と屋敷の敵みたいな形で処されるかもしれない。俺をニセ勇者が呼ばわりしていたしな。
「ところで何処の勢力も勇者候補を持ってるなんて話があったが、テンプル騎士団にもいるのか?」
「当然。ジアーナ・トップフォースという名の騎士がそれだ。神殿騎士団の総長、ヴィーチェスラフの娘でもある。」
「えぇ!? そこの勇者候補も女なの?」
「教団では何かしら転機となるような出来事が起きるときに現れる人間ってのが大体女なのにあやかってのことだ。ジンクスとか験担ぎをしたがるのが宗教組織だからな。前にも言ったがバックグラウンドとかが重要なんだよ。しかもそれだけじゃないぞ。強さも折り紙付きだ。聖剣の使い手でもあるから競合相手では一番手強いと思うぜ。」
またか。プリメーラとヘイゼルに次いでこっちも女性だ。しかも騎士団出身だからか、戦闘力も高いようだ。他二人はまだ駆け出しだから実力は足りないが、聖剣を使いこなすくらいなんだからそれなりの強さなのは間違いなさそうだ。
もし俺が勇者の座を剥奪されたらこの中の誰かになるんだろう。そう簡単には譲るつもりはないけどな。カレルとの誓いもあるから簡単には明け渡すわけにはいかないんだよ……。




