超能力と業力
「ところで、ずいぶん簡単に引き返すな」
小次郎は銀に問うた。
「人狼が二十体以上いる。銃だけでは、倒しきれない」
人狼、星屑により改造された熊のパワーと狼の反射神経を合わせ持つ、戦い以外の事は考えない元人間の戦闘生物。現在の人類の技術では人間に復する術はない。
「そういう算術か、ならばどうする?」
「狩人のハウスに、預けたオートライフルを使う、弾倉ひとつに弾が百発入っている星屑関係の技術で、相手を空間ごと削りとる」
銀の手札はキャリコオートライフル、弾数の多さから制圧火力を期待されたが、構造の複雑さから来る動作不良と、使用しる弾丸の威力が不足したため、早々に火器として不合格の烙印をおされている。知らない小次郎はーー。
「最初から使え」
「目立つ、高い」
「なら仕方ないか」
「ご理解感謝です」
銀はひらひらと手をふる。
「あんたなら、ゾウ狩人の猟銃でも使えそうだな小次郎。ウエザビーのマークⅤあたりどうだ? 素直にバレッタライフルでもいいか」
「残念たが長物は好かん、気持ちだけ受け取っておく」
「そうか。よしここだ」
銀はスポーツ用品の店の前で歩みを止める。裏手に回ると、ドアの脇に、巧妙に隠されたスリットがあった。銀は狩人としてのIDを挿入する、半分程入った所て、カードの表面にタッチ式のテンキーが浮かび上がる。
銀はしなやかな指でテンキーに触れ、所定の暗証コードを打ち込むと、音もなくドアロックが解除された。
「宝探しでも、よほどの荒事にならなければ、ここには来ないけどな。あれから七年かーー火薬がしけっていなければ上出来だが」
中には灰色一色の武骨なロッカーが、整然と並んでいた。銀が選んだロッカーの中には、モノトーンのゴルフバックが無造作に置かれていた、銀は無造作にそれを肩に担う。
唯のバックではない、星屑の応用により、過重を大幅減した、優れものだ。
しかし、これ以上の小型化はできない。今の人間の限界だ。
「行くか」
「ああ」
銀は指刀を眉間にあてる。
「やはり、下水道か地下鉄かは分からないが、十体以上の人狼が集中するのは地下だな、また、地下に向かって伸びている塔がある。やはり星屑関連。複数の強力な力が感じられる、超能力か業力かはわからないが力を持っている」
超能力と業力、どちらも人間が自らのイメージを遍在する、星屑で具現化する力だ。
超能力は、使用者のイメージを忠実に再現する、聞こえはいいが人間のイマジネーションは限界がある。
凄い力はイメージ次第。
無限の力はイメージできないので不可能。
業力は、自分が実践する知識体系が枷であり、自分がイメージする結果に対してどれだけ、複雑な手順を知識体系で要求する通り行なえたかが要求される。
知識体系に関連する力は修業により獲られるが、そうでないち力は振るえない。
銀は霊視を使うが、後ひとつ力を持ってる。それは、後に判るだろう。




