銀と小次郎
この作品のキャラは、30ねん前の郵便媒体のpbmアルダインー神々の遺産に登場したマイPCがイメージとなっています。また、番長と書いてはたおさと読む人名は、存在しませ、多分。
ーー緊張はウソのように退いていた。
伊伏銀は夜の歌舞伎町、その裏路地でジャケットにしなやかに右手を滑りこませる。ホルスターに確かな自己主張をするのは、ブローニングハイパワー、二桁の装弾数の自動拳銃としては、クラシックとも云える。だが、控え目に評価しても傑作というべき設計思想だ、銀は自分を中心に包囲の輪を狭める、四人の反社の男たちを前に深々と呼吸をととのえた。
「あんちゃん、ウラミ買うてるみたいやのう、ウデ一本折れば百万やと、見かけによらず大物か?」
鉄パイプを持ったパンチパーマの男が、銀の正面に無防備に立った。
「男を見なかったか? 身長一九〇くらい、たぶん、学ランに鉄ゲタだ」
「漫画か? それともクスリキメてるのか!」
鉄パイプが降りおろされ…なかった。
背後からつき出された腕が、鉄パイプを小枝かなにかのように止めている、原色のライトに照された身長一九〇の男は、無骨一辺倒、獣ならば、アムール虎、背中に背負うは大だんびら、大刀の銘は「駆竜」かる男の番長小次郎!
「すまん、道に迷った、で、こいつは?」
「放してくれ、まるで万力だ」
小次郎は無言で、鉄パイプを解放した。
「覚えてやがれコンチクショー」
「追わんでいいのか?」
「カグヤは、満月までうごかん」
小次郎は、あやすかのように銀に伝えた。
「卑怯な人間としては、相手のフェアプレイ精神はアテにしたくないな」




