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平井のエッセイ・日常系とか旅行記とか

【爬虫類注意】我が家の守り神さま

作者: 平井敦史

※写真を掲載しています。苦手な方は非表示設定をお願いします。

 最近めっきり涼しくなってきて、どこかへ行ってしまったようなのですが、今年の夏は我が家の窓にヤモリ様がよく張り付いていました。

 夏頃までは比較的大きな個体が一匹いて、いつの間にかそれと入れ替わるように小さな個体がつい最近まで一匹出没していました。


 これまで、うち(近畿北部)の近辺では、あまりヤモリは見たことなかったんですけどね。

 温暖化の影響? でも、Wikiによるとニホンヤモリの分布域は秋田県以南とあるので、最近までいなかったってことは無いはずなんだよなぁ。


 さて、ヤモリという動物について、皆様どのくらいご存じでしょうか?

 あしの指が吸盤になっていて壁や窓に張り付くことができるトカゲみたいなの、くらいの認識でしょうか。


 Wiki先生によると、ニホンヤモリは爬虫綱はちゅうこう有鱗目ゆうりんもくヤモリ科ヤモリ属に分類されるトカゲの一種です。

 ちなみに、有鱗目ゆうりんもくはトカゲ亜目、ヘビ亜目、ミミズトカゲ亜目に分類されます。ワニやカメは爬虫類の中でも別の仲間ですね。

 先述のとおり、秋田以南の本州、四国、九州、対馬に棲息せいそくしています。

 南西諸島や小笠原諸島には他の種類もいくつか棲息していますが、本州などで普通に見ることができるヤモリは、ほぼニホンヤモリのみです。


 ニホンヤモリは、名前に「ニホン」と付いてはいますが、元々は大陸からの外来種だったようで、人里付近を住処すみかとし、日本国内の原生林には棲息していません。

 夜行性で、民家の壁や窓に張り付き、灯火に引き寄せられる昆虫類を主に捕食します。

「ヤモリ」の名の由来は「家守やもり」で、ハエやカやゴキブリなどの害虫を食べてくれることから、益獣として扱われてきました。


 そんなヤモリの最大の特徴といえば、やはり肢の指の吸盤でしょう。

 正確には「趾下薄板しかはくばん」と言い、「吸盤」とは吸い付く機構が異なります。

 吸盤が、対象物に密着して内部に真空(に近い)状態を作り、気圧・水圧の差を生じさせて吸い付くのに対し、趾下薄板しかはくばんは、その表面に生えた無数の毛のような小突起と対象物との間に生じる「ファンデルワールスりょく」によって吸い付いているのです。


「ファンデルワールスりょく」とは何ぞや、という詳しい説明は、Wikipediaの記事その他をご参照ください。

 まあ簡単に言えば、原子間に働くごく弱い力で、原子間の距離の七乗に反比例します。

 つまり、きわめて近い距離でないと、取るに足りないものとなってしまうのですが、ヤモリの「趾下薄板しかはくばん」の表面には、マイクロメートル(千分の一ミリ)サイズの剛毛が生えており、さらにその剛毛は、ナノメートル(百万分の一ミリ)サイズの毛に枝分かれしています。

 このきわめて微細な毛が、壁面の微細な凹凸と噛み合った時、そこに生じる「ファンデルワールスりょく」は無視できないものとなり、ヤモリの体を支えることができるのです。


 さて、ではこの趾下薄板しかはくばんが人間の手足に付いていたとして、壁に張り付くことは可能なのでしょうか。


 まあ、単純に生き物のサイズを人間大にまで拡大して、何十倍になったから面積比でその二乗倍、体重比でその三乗倍、なんて単純なものではないとは思いますが。

 そのサイズだからこそ可能なこと・最適であること、というのもありますしね。(某火星Gの漫画をディスっているわけではないですよ。そういえば、あの漫画にヤモリの改造人間(または改造G)って登場しましたっけ?)


 日経新聞電子版の記事(ttps://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2705O_X20C12A4000000/)によると、日東にっとう電工でんこうさんという会社がこのヤモリの趾下薄板しかはくばんを応用した粘着テープを開発したそうです。

 もう十年以上前の記事ですけどね。その後どうなったのかは気になるところですが、それはさておき。

 この「ヤモリテープ」、直径数ナノ~数十ナノメートルのカーボン・ナノチューブを1平方センチメートル当たり100億本の密度でびっしり並べたもので、1平方センチメートル程度の面積のテープで500グラムを保持できるのだそうです。

 これはヤモリの趾下薄板しかはくばんの八割程度の性能だそうで、やはり自然の造形物を完全に再現するのは難しいものなのですね。


 ヤモリ並みの趾下薄板しかはくばんが人間の手足に付いていて、1平方センチあたり約600グラム強の重量を支えることができるとすると、60キログラムほどの体重を支えるのに、約100平方センチ必要ということになります。


 ただし、それだけでは単に支えるだけで身動きが取れませんので、動き回るためにはその倍以上必要ですね。

 片手の平と足の裏に各50平方センチ――約7センチ四方ということになりますか。

 あれ、意外といけそうですね。


 まあ実際にそれで壁面をい回れるかどうかということになると、そんな単純にはいかないとは思いますが。

 そもそも、四つん這いになって足の裏をべったり付けるというのは、人体構造的に難しいですし。


 とは言え、完全に非現実的な話でもなさそうです。

 夢が持てますね。


 それでは、ヤモリちゃん(小さい方)の写真を掲載します。

 苦手な方は非表示設定にしてくださいね。






 ガラス窓の裏側から。


挿絵(By みてみん)


 上からも一枚。


挿絵(By みてみん)


 まだ子供のようですが、ニホンヤモリの寿命は5~10年くらいあるそうなので、来年もまた来てほしいものです。

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― 新着の感想 ―
 ヤモリって、可愛いですよね。人に悪さもしないし、まさしく〝家守〟!  あと、小さいヤモリは、確かに「ヤモリちゃん」と呼びたくなりますね(笑)。
ヤモリ、時折見かけますが、よく見ると可愛らしい外見をしているんですよね。 蜘蛛の糸などもそうですが、自然界の生き物のテクノロジーには驚かされるものがありますね。
我が家の庭にもたまに姿を見せてくれるのですが、見つかると脱兎のごとく晦ましてしまいます。感謝の念を伝えたいのに少し寂しいです。
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