4話
起きて朝食を食べ、ログインする。
昨日はキナ爺を待たせてしまったため、昨日よりも二時間も早く起きた。窓から見える空が白んでいる。この時期は4時半過ぎにはこんな明るいんだな。
最初はキナ爺の見た目の印象から不安を感じていたが、それがおこがましいほどの経験と知識を昨日は感じた。そんなキナ爺の知識を教えてもらえるのだ。待たせるわけにはいかない。
かたいベッドから起き上がり部屋を出る。女将はまだ起きていないようだ。
朝食はあきらめて、ギルドへ向かう。傭兵ギルドは非常時の戦力となる存在なので一応24時間稼働している。さすがにギルド併設の食堂などは開いていないだろうが。
ギルドに到着し、食堂の席にでも座ってキナ爺を待つことにする。
「え?あ……おはよう」
なんとキナ爺はもうすでにギルドに来ていた。食堂の席に座り皿にのった野菜をかじるキナ爺に近づく。
「ああ、今日は早いな」
「うん。でももう食堂も開いてるの?」
「いんや、この時間は仕込みをしてるだけで開いちゃいねえよ。ただ早く出るために仕込みのいらない野菜と塩もらって食ってんだよ」
「そうなんだ。じゃあわたしも朝ごはんまだだから。もらってくるね」
野菜と塩はたった100ギルで買えた。ちょっと味気ないけど何も食べないよりはましだ。
「今日は昨日引き上げたところに行くからな」
「うん、よろしく」
門は日の出、日の入りに合わせて開閉するらしく、もうすでに開いていた門を門兵にあいさつしながら通り抜ける。
今日もまた息を荒くしながらなんとか森を歩く。
「ほうら、それ。こいつはアミュルっていう草でようく嗅いでみると、ツンと鼻につく臭いがするだろう。これを魔物は嫌がるんだ、魔物は鼻がいいからな。この草をすりつぶしたのを石とかに塗って野営地の周りに撒いて置けば、魔物除けになる」
今日もキナ爺から植物の知識を得ながら歩き、ようやくリンサの群生地に到着した。
昨日同様採取して、帰路に就く。今日は幸い魔物の痕跡は見つからなかった。
キナ爺は戦闘力がないし私も戦闘経験もないうえ森での活動の経験も薄いので、今は魔物に遭遇しないのが吉だろう。
無事に街に到着し、ギルドへ向かい換金をする。
キナ爺とともに換金をしに受付をしに行くと
「おいっ!なんでこんな薬草の値段が安いんだよっ!ちゃんと取って来てやったんだから。そっちも仕事をしろよっ!」
私と同じような革の服を着た男が受付をしていたカイラスにいちゃもんをつけている。
「あんたがとってきたもののほとんどがなんの需要もないただの雑草だからな。お前こそまともに仕事ができちゃいねえ。そのうえ薬草の取り方もなっちゃいねえ。報酬はこれが妥当だよ。出直して来な」
「チッ、クソが」
男はあきらめたのか振り返り食堂の方へ向かっていった。
男を無視して私たちは換金し始めた。ちなみに今日の稼ぎは8000ギルだった。
「おい」
突然後ろから声がかけられ振り返る。
「おい、なんでこんな女と爺がこんなに薬草を取れてんだよ。俺は必死に森の中を歩き回ってこれっぽっちも見つけられなかったんだぞ。おかしいだろ」
「いんや、おかしくはねえよ」
「なんだ爺。てめえ、もしかして薬草の群生地とかを秘匿してんじゃあねえだろうなあ?そうじゃなきゃこの採取量は説明がつかねえ。そいうんもんは人のために教えてやるもんじゃねえのか?」
そんなことはない。薬草の群生地の場所もキナ爺の大切な飯のタネだ。私にただで教えてくれてるだけでも親切なことなのだが、それでもこの男にもやすやすと教えることはないだろう。
「ああ、教えてやるよ」
「え?」
「じゃあ、明日の朝ギルドに来るといいさ」」