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モブ1

ちょいグロ注意です。

 ああ、やっとだ。やっとあのゲームをプレイできる。このために数週間のデスマーチに耐えて今日から2週間も有給をとったんだ。


 空前絶後のVRMMO「Yours」初めてその宣伝PVを見たときはしびれた。なんたって今までに前例のない完全没入型のゲームで、今までライトノベルやコミックスをみて憧れを抱くだけで終わっていた主人公たちのように、完全に再現された五感の中で自分の武器を手に取り魔法駆使して魔物と戦い世界を冒険することができるのだ。


 サービス開始は今日の14時からでその30分前からキャラクタークリエイトができる。


 倍率も値段もくそ高かったプレイ用の機械コクーンの中に入りつぶやく。


 「GAME START」

____________________________________________


 気が付くと自分は闇の中にいた。闇の真ん中には得も言われぬほどに美しい女性が立っていた。


 おそらくここがキャラクタークリエイトするための場所で、彼女は管理AIみたいなものだろう。


 俺の予想通りこの場の管理AIだった彼女の案内の元キャラクタークリエイトを行う。


 キャラクタークリエイトといっても名前や種族、容姿、ステータスを設定するだけだ。しかも容姿は種族によっては耳が伸びたり体が縮んだりすることもあるみたいだが、本人が直接変えることができるのは基本髪色と瞳の色くらいなので時間はかからない。まあ、ぽっちゃりしてる奴は脂肪をなくすこができるみたいだが、俺には関係ない。


 種族は人間にしてステータスを決定してサービス開始を待つ。


 時間になると体が光に包まれ目を開けると漫画でよく見ていた街並みが広がっていた。

 

 街で情報を集めて、冒険者ギルドもとい傭兵ギルドへ向かう。傭兵としてFランクからのスタートだが俺は必ずSランクの高みへ上ってやる!


 最初の街がランダム選択の中で俺が降り立ったのは、街の近くにダンジョンが存在する要塞都市フォトレだ。街の近くにはダンジョン以外これといったところはないらしく。傭兵として名をあげるのにダンジョンに通うことになるだろう。


 初期資金3万ギルで武器を買おうと鍛冶屋へ行ったが、まともな武器は3万ギル程度では到底買える値段ではなかった。初期武器の木のこん棒ではあまりにも弱いしダサいので、雑貨屋においてあったボロの剣を買う。


 雑貨屋が買い取ったボロの武器などは鍛冶屋に売って鍛冶屋が金属を再利用するみたいだが、数が集まってまとめて売るまでは店頭に置いておくらしい___買うやつはいないらしいが。


 屋台の味の薄いスープをのんで腹を満たし、武器も手に入れたからようやくダンジョンに向かう。


 ダンジョンまで運んでくれる馬車に4千ギルも支払い、3時間かけてダンジョンに到着した。ダンジョンの前に立ち並ぶテントで1万ギルでダンジョン1階層の簡易地図と出てくる魔物の情報を手に入れる。


 _____ダンジョンの入り口に立つ。


 ここから俺の英雄譚が始まるのだと思うと年甲斐もなくわくわくしてしまう。


 奥が一切見えない洞窟の中に入り奥へと進む。するとチリリとなにかを通り抜ける感覚を感じ、気が付くと壁に天井、床とが石の煉瓦で囲まれた迷宮の中に立っていた。


 後ろを振り返ると入り口同様何も見えない闇が広がっていた。ここを進むと外に戻れるのだろう。


 異世界かと思うほどに外とは異なる様相に、より興奮で沸き立っていく。


 このダンジョンの1階層には定番のゴブリンやヴォルフという現実の狼を一回り大きくしたような魔物が出てくるらしい。俺のようなニュービーにはぴったりだろう。


 地図を見ながら魔物を少し警戒して進んでいく。このダンジョンは道幅は4メートルほどであり、構造的に道を曲がる角くらいからしか奇襲は仕掛けられない。だから不意打ちはそこまで怖くないだろう。


 そんなことを考えていると手前から足音が複数してきた。


 警戒して構えると前から現れたのは、ダンジョンを攻略している別の傭兵パーティーだった。


 道の端によりお互い警戒しながらすれ違う。


 ダンジョン前のテントで聞いたのだが、ダンジョンには魔物の討伐を目的としたもの以外に人間を標的としている盗賊などもいるらしかった。


 ただ今回は犯罪者などではなかったのが幸いだった。さすがに対人を生業とするプロ相手に今の状態で勝つことは難しいだろう。


 傭兵パーティーとすれ違って、しばらく歩くとまた前方から何かがやってきた。


 それは体長200cmほどの狼の魔物だった。


 Grrrr____


 「ヴォルフか……」


 想像よりも大きな体に獰猛な鳴き声、獲物を前にした狩人の威圧感に足がすくむ。その隙を魔物が見逃すはずがなかった。


 タッ___


 全速力でこちらに駆けてくる。大きな体に加えて四足歩行だ。離れていた距離は一瞬で詰められる。


 「うっ、うわぁ」


 情けない声を上げながらかろうじて剣を前に出す。勢いそのままに突進し噛みつかんとするヴォルフの攻撃を運よく剣で防ぐことができた。


 しかし、そのまま押し倒され、もとより力の入ってなかった手から剣が落ちる。


 ___ヒッ


 腰の抜けた男が体勢を整えることなど許すはずもなくヴォルフは男の上に大きな体を乗せ押さえつける。


 体長は二メートル、ならば体重は80はくだらない。そんな巨体に押しつぶされ呼吸もままならない。


 ___カヒュッ


 「ぐっ__あぁ」


 ヴォルフはとどめを刺そうと喉元を狙ってかじりつく。


 「う゛ぅ゛」


 生存本能そのままにかろうじて喉の前に腕をねじ込む。


 「う゛わ゛あ゛あ゛ぁ゛」


 鋭い牙、強靭な顎の力で男の腕が噛みつかれる。


 「い゛ぎ゛い゛い゛ぃ゛」


 リアルそのものの痛みとすぐそこまでに迫っている死への恐怖で男からは、目や鼻、口、はたまた股間から汁という汁が漏れ出している。


 ___Grrrrr


「ぐわ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

 

 腕をかむ顎の力がどんどんと強まっていく。


 ___グチャァア


「あ゛あ゛あ゛___」


 とうとう男の腕は引きちぎられ、かろうじて急所を守っていたものは失われてしまった。


 「し゛に゛た゛ク゛_____」


 その刹那ヴォルフは男の喉をかみちぎった。


 ン゛ン゛___ゴポォ


 そして男はこと切れた。


 __________________________________________

 

 八ッ_____ハアッ___ハァッ____


 「い、生きてる……」


 取得した二週間の有給は無駄になってしまった。

 

痛覚も現実同様に感じます。舐めてかかればトラウマ確定です。


 ログイン後初めから持っているもの

木のこん棒、革の服×2、革の靴、30,000ギル、木のこん棒を携帯するためのベルト


 インベントリーなどの便利機能はありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 痛覚再現!?最高です... 死に戻り前提のガンガン行く系のVR小説ばかり読んでましたが、こういうのもいいですね... NPCの発言的に、ログアウト時に体をまさぐられたりなんかあったりしそうで…
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