2話 出会い
_____コンコンッ
家の扉を叩く。
「こんにちはー」
ギギギッ
建付けの悪い古い扉がゆっくりと開く。そこから出てきたのはみすぼらしい爺だった。
「お前さんはぁ誰だい」
家の主人らしき爺がたずねてくる。
「私はハナビ。依頼があって傭兵ギルドのカイラスの紹介できたの。大森林に行きたいのだけれど魔物のいる森なんか入ったことないから、森の中での知識を教えてほしいの」
「はあ、それは殊勝なことだ、ヒヒッ」
にっこりとして不気味な歯茎を見せくる。どうやら歯はほとんど残ってないらしい。はて、こんな爺が魔物のいる森に入れるというのか、不安だ。
「ハナビや、俺のことはキナ爺と呼びな。それと依頼ってことらしいが、金は要らねぇ。ただ何があっても俺の指示に従うっちゅうのが条件だ。じゃあ明日の朝、傭兵ギルドに集合だ」
「あ、ありがとう。わかった」
不安だがとりあえず明日の朝行ってみることにしよう。ただまだ時間はあるし武器の調達をしたいな。今持っている武器は初期装備のこん棒だけだから。
キナ爺の家に行く途中にあった雑貨屋に樽に刺さった中古であろう片手剣や槍などの武器を見つけたから、そこに行くのがいいかもな。最初の所持金は3万ギルだがボロの装備くらいなら買えるだろう。
雑貨屋に到着し中古の装備を見てみる。ほとんどが刃こぼれしていたりさびていたりボロばかりだ。まあとりあえず私が片手で扱えるサイズの両刃の剣にしようかな。
「店員さん、この剣っていくら?」
「ああ、それなら8000ギルだ。」
あれ?思ったより安いなぁ。
「結構安いんだね」
「当たり前だろ。そんなボロに命預けるバカはいねえよ。嬢ちゃん新人だろ。いくら金がねえっつっても装備はケチらねえことをおすすめするぜ。まあ、それでも買うっていうならそこにある砥石でも持ってきな。嬢ちゃん美人だからサービスな」
「ん。ありがとう。あと大森林に行くのに必要なものはあるかな」
「まあ嬢ちゃんは日帰りだろうから、必須なのは解体用のナイフと素材を入れるずた袋、水いれる革袋に干し肉くらいだな。わかってると思うがちゃんと水は沸かしてから入れろよ。あとは中古だが革の胸当てもサービスしてやるよ。合計で7500ギルだ。」
「ん。ありがとう。大事に使う。」
「んなボロ大事に使う必要ねえよ。ちゃっちゃと金貯めてまともなの買いな。あとはサービス分として……ヘへッ、嬢ちゃんのそのケツ一揉みさせてくれよ」
「キモイ。じゃあね」
「チッ、しけてんねえ」
雑貨屋をあとにして今晩泊まる宿でも探さなくちゃ、寄り道しながらキナ爺の家にも雑貨屋にも行ってたからそろそろ現実で夜ご飯を食べなくちゃいけない時間だ。
ただギルドの近くに宿屋っぽいところがあったから、とりあえずそこに行ってみようかな。
宿屋につくとアズマの宿と書かれている看板が目につく。入ってみると恰幅のいい女がいた。
「いらっしゃい、ここはアズマの宿ていう宿屋だよ。ちょうど一人部屋が一部屋あいてるけど、泊まってくかい?一泊2000ギルだ。朝と夜は飯をサービスしてるから欲しい時はいいな」
「とりあえず3泊するよ。あと夕飯もちょうだい」
「あいよじゃあ6000ギルいただくよ。飯の用意はできてるから飯を食ってから部屋に行きな」
かたいパンと何かの肉が入った塩味のスープだけだったが夕飯を食べて部屋に入る。上質とは言えないがベッドもあるし、机と椅子もある。鍵もちゃんと扉についていたから宿屋としては十分だろう。このゲームはログアウトしても体が残るから鍵がないと困るのだ。
ベッドに横になってログアウトすると、ゲーム内同様現実も空が暗くなり始めていた。
解体用ナイフ:6000ギル ずた袋:100ギル 革:600ギル
干し肉:800ギル
アズマの宿は朝夕ご飯がサービスとは言え、食事もベッドも質が低いので2000ギルは少し割高かもしれません。
旅行などは活発に行われていませんが、家業を継ぐ長男や嫁いでいく女性以外の多くは傭兵になって家を出る上に、田舎からの出稼ぎもいるので宿屋の需要は結構高いです。宿屋で最も低質なのところは、個人の部屋など存在せず、知らない人間同士が同じ部屋で雑魚寝するようなところもあります。