1話 アリスタの街
周りを見渡してみると石材と木材によって築かれた美しい街並みに様々な人が行きかっている。中には無骨な装備を身に着けた者もいる。土や風、人の行きかう匂いに肌には風をしっかり感じ現実そのものだ。新たな世界へとやってきた感動をよそに街の散策と情報収集をすることにする。なにせ最初の街はランダムなので街の名前すらわからないのだ。
綺麗に舗装された大通りを歩く。少しわき道にそれると舗装されていない道が蜘蛛の巣を張るように通っている。今は昼時とあってか大通りのわきには食べ物を売る屋台がいくつかある。そのひとつで特に威勢のいいおじさんが売っている串焼き肉を買ってみる。
「串焼き一つください」
「あいよ。ひとつ200ギルだ」
「この街には初めて来たんだけど、この街の名前はなんていうの?」
「アリスタっていうんだ。ちなみにこの肉は町の南にある大森林っつう、でかい森の中にいるファングボアの肉だよ。この街の傭兵の多くは大森林に出て魔物を狩って、肉とかの素材を売って生計を立ててんだ」
「ありがとう。ためになったよ」
屋台のおじさんの話によるとこの街は、南部には大森林、西にはホス山脈、北にはホス山脈から流れるエルメス川という大河、東にしばらく行くと海があるらしい。周りにいろんな自然環境があって冒険するのが楽しみだな。
大通りをしばらく行くと大きな建物が並ぶ通りにやってきた。どうやらいろんな職業のギルドがあるみたい。でもやっぱり最初は冒険者ギルドだよね。ただ私が想像していたのとは異なって、冒険者ギルドはなくて同じような立ち位置の傭兵ギルドがあるみたい。
傭兵ギルドの中に入ると男たちが数人昼間から酒を酌み交わし、カウンターには受付なのであろう人間が複数いた。片腕のないいかついスキンヘッドの男が暇そうにしていたので話しかけてみる。
「こんにちは」
「ああ、見かけない顔だが新入りか」
「そう、傭兵ギルドっていう看板をみてとりあえず入ってみたんだけどここはなにしてるとこなの」
「はぁ、んなことも知らねえってどこの田舎者だよ。ただ看板の文字を読んだっつうことは文字は大体読めるみたいだな。傭兵ギルドっつうのはまあ、便利屋みたいなもんだよ。街の雑用をこなすやつもいれば、町の外で魔物を討伐して稼ぐやつもいる。まあこの街のほとんどの傭兵は大森林にいって採取や魔物討伐、森の調査とかをやっているがな」
「まあ、なにをするにしてもギルドにはいりゃあ身分証代わりになるライセンスがもらえるからとりあえず所属するのがいいと思うぜ」
「じゃあ、所属する」
「あいよ。じゃあこの羊皮紙に名前を書きな。」
私が羊皮紙に名前を書いたのを確認するとその私の名前の横にFという文字が書かれた。カイラスという男の説明によると傭兵にはランクがあって一番下が「F」で一番上が「S」らしい。まあ、Sはあまりにも別格なので一般にはAが一番上と考えておけばいいらしいが。
「この羊皮紙はなくすなよ。たけえからな。これを依頼なり納品なりをするたびに受付にだしな。これで実績を確認して昇格させたりするからな」
「うん、気を付ける」
「ねえ、傭兵がここで依頼をだしてもいいの?」
「構わねえが、何を依頼するつもりだ?」
「大森林に行ってみたいんだけど森の中なんて歩いたことないし、いろいろ教えてもらいたいの」
「めずらしいこというじゃねえか。ほとんどの人間はんなこと気にせず森にいくっつうのに。
まあそれなら良い伝手があるからここを訪ねな」
というとカイラスは私に行き先をかいたメモをよこしてくれた。
「ありがとう」
「新人には森の中をなめてかかるやつが多いからな気をつけろよ」
「うん」
カイラスに別れの挨拶を告げ、大通りへ出る。傭兵ギルドは街の南部のほうにあり、私のスタート地点は北側だったらしい。メモによると私に森の歩き方を教えてくれる人物は街の西側にいるらしい。ただ西側は少し治安の悪いエリアだ。気を付けて行こう。
特に危惧していたことは起こらずに目的地についた。そこは少し古いこじんまりとした家だった。
_____コンコンッ
NPCとプレイヤーに差異はほとんどありません。プレイヤー側で特別といえるのはすでに歴史から消えてしまった種族として始められる点と潜在能力値に種族基礎値に加えて割り振れるボーナスポイントが20固定という点だけです。
基本的にNPCは5~15ポイントほどのボーナスポイントが個人の才能に合わせて割り触れています。ただし世にいう天才という者や歴史に名を残すような人物は20はおろか30ものボーナスポイントが割り振られていたりします。
ギルドに関しては、様々な職業や資格を管理する組合のようなもので多種多様なギルドが存在します。傭兵ギルドのように来るもの拒まずなギルドも多いですが、協会や王権などと関わりが深い特権集団としての側面も持つギルド(例:魔術ギルド、錬金術ギルド)もあります。そのため、魔法や魔術、錬金術は一般には敷居が高いです。