17話
そそくさと教会を後にする。これ以上手掛かりがないのでどうして教会に入れないのか、私の種族は一体何なのかはこれ以上詮索することは難しい。これ以上無駄に考えるのはやめてまた別のところに行ってみることにしよう。
街の西側には主に畜産を行っているエリアがある。そっちのほうに行ってみようかな。教会からは街の反対側になるので時間を潰すにはいいだろう。
のんびり街を眺めながら歩いていく。こうしてのんびり街を歩いたのは初日以来初めてだが、こうしてみると忙しなく住人が活動しているのが見える。それに加えてプレイヤーっぽい人も見かけた。今までそこまで気にしてこなかったがこの街には案外プレイヤーがいるらしい。一緒に森を歩いた男はプレイヤーだったが他にもプレイヤーがいるとは思わなかった。
そしてようやく畜産エリアにたどり着いた。この街は都市国家というだけあって街一つがかなり広い。端から端まで歩くのに数時間かかることだろう。
畜産エリアでは動物の豚や牛、ヤギなどがいる。この街はそこそこ北の方にあるらしくすこし涼しい。
そのためか乳牛のような品種の牛もいる。私が買った燻製チーズは彼らの乳から作られたものなのだろうか。それともヤギのものからだろうか。
街の北の畑エリアで労働しているのは農奴が多いがこの畜産エリアでは、平民が労働している。そして彼らの身なりも悪くない。そしてかなり管理もしっかりしているようだ。街で売っているのはほとんど魔物の肉でここで育てられただろう動物たちの肉は見ることがないので、これらの肉は金持ちに卸されているのかもしれないな。
この世界の畜産物をもう少し味わってみたいものだ。お昼に美味しいご飯を食べたのでこれらの肉の期待値もそれなりに高いのだ。
のんびりと牧草地で草を食む家畜たちを見て癒しを得たので帰ることにする。なかなかいい暇つぶしになったな。
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ギルドに戻るころにはもうそろそろ夕飯かという時間になっていた。ただ夕飯にする前にギルドで荷運びの依頼を出しておく。
明日、森に行って帰ってくる頃に森の入り口で待っていてもらい獲物を運んでもらおうという算段なのだ。まあ、獲物が取れなかったとしても金が少し無駄になるだけだ。
依頼を出しておいて食事を済ませ寝ることにする。今日は1日街を練り歩いて楽しかった。森で採集したり狩りをするのもいいがこうやって観光するのも悪くなかったな。
いつかは街を出ていろいろな景色を見るために冒険するのも悪くないかもしれない。そうするとキナ爺やカイラスたちとお別れすることになるので寂しいが。
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朝起きていつも通りのギルドへ向かう。荷運びの依頼は案外人気らしく昨日依頼を出してすぐ受ける人が見つかったので安心して森へ行ける。
一緒に朝食を食べたキナ爺と別れて森で狩りに行く。前のファングボアで味を占めたので薬草採取ももちろんするが狩りを行う前提で動く。
魔物の残した痕跡を見逃さないように集中して歩く。視覚だけでなく聴覚も嗅覚も意識していく。
__________見つけた。
といってもただの鹿のもののようだが、足跡にフンまである。フンを見るにここを通ってからあまり時間は経っていない、運がいいな。
足跡を追って歩いていく。しばらくして獲物を見つけることができた。といっても逃げ足の速い鹿相手に剣で行くわけにはいくまい。投げナイフでもダメージに欠ける。
手斧を足を狙って投げるのが最善だろうか。弓みたいな遠距離攻撃の手段がそれくらいしかないのでこうするしかないな。
手斧を投げる練習ももちろん行っているので自信はある。
鹿が私とは別の方向を向いてそちらに意識を集中している内に、手斧を思い切り後ろ足めがけて投げる。
投げた直後飛び出し、斧が後ろ足の膝を直撃しすぐには動けない鹿のとどめを刺しに行く。作戦通り上手く狩ることができた。
すぐに血抜きをし始め、血抜きをしている間周りを警戒しておく。血抜きが終わって鹿を引きずりながら森を出ていく。
依頼通り森の外で待っていた運び屋の手押し車に鹿を乗せて街へ帰る。これからもしばらくはこんな感じで狩りをしていこう。
鹿を解体場に持っていき査定してもらう。鹿は6万ギルになった。ファングボアと比べればはるかに安いが巨大だったファングボアと比較するのは酷だろう。この鹿はメスで尚且つ小さめだったのでなおさらだ。
ただこれからの獲物運搬がどうにかなったのは良かった。森の外までは自分の力で運ばなければいけないが、それは仕方がない。運び屋を森に連れていくことも可能だが、狩りを始めたばかりで運び屋の護衛までをする余裕はない。これからもこの調子で頑張っていこう。
 




