16話
訓練場で体を動かした後お昼ご飯を食べに行く。今日はどこで食べようか。
いままで街の中をそこまでしっかり見て歩くことがなかったので、どこの飯屋がおいしいのか全く分からない。どうしようか・・・・・・・・・
「いいこと思いついた!」
ガンズに紹介してもらったお礼をまだしていなかったしガンズに昼を奢るとしよう。そのついでにいい店を教えてもらうのだ。我ながら名案だ。
ということでギルドに向かう。
「カイラスお疲れ。お昼まだ?」
「おう、こんな時間に珍しいな。昼飯はまだだ。ただちょうどそろそろ腹が減ってきたところだった」
「そっか、それなら良かった。カイラスにはガンズを紹介してもらったお礼をしたいなと思ってね。一回ご飯をご馳走したところで到底釣り合わないけど、とりあえず今日一回ごはんを奢るよ」
「そりゃ、ありがてえ。ご馳走になるぜ。それでどこで飯にするんだ」
「それがね。この街でどこのお店がおいしいのかわからないから、カイラスが行きたいところでいいよ」
「そうか、じゃあとっておきにウマいとこに連れていってやるよ」
「おー、たのしみ」
カイラスに連れられてたどりついたのは街の北側にある立派な店だった。北側に来るのは初めてだな。この街広いし、移動がなかなか大変なのだ。
「立派な店だね」
「ああ、ここの肉がうまいんだよ。この店は大森林の魔物の肉じゃなくて西のホス山脈にいるスリープっていう魔物の肉の料理を出すんだ。これがうまくてな、じゃあ入るぞ」
店に入ると、他の安い店と違ってかなり店内が清潔に保たれていてかなりの好印象だ。そして何より、肉の焼ける香ばしい香りが店内に漂っていて食欲がそそられる。
「わあ、素敵なお店だね」
「だろ?」
そしてカイラスは店員におすすめのセットを二人分頼み、それが完成するのをしばらく待つ。
「お待たせしました」
そうして店員が持ってきたのは。大きなラムチョップが2つ豪快に皿に盛られたものとミネストローネのような赤いスープ、そして白パンだ。白パンはこの世界で初めて見た。今まで見てきたパンは大麦やライ麦でできた固いパンだったのでとても新鮮で楽しみだ。
「うおお、すごい。おいしそー」
「死ぬほどうめえから、たんと食えよ」
「いただきます___あむっ」
まず最初にラムチョップに齧りつく。ハーブの匂いを感じる豪快な肉から肉汁が溢れんばかり湧いてくる。香ばしく焼かれた肉はかぶりつけばかぶりつくほどより食欲を沸き立ててくる。
「んっ~、おいしいっ」
ここまでおいしいものはこの世界では一度も食べたことはなかった。なんならこの世界の食事に期待するのをやめようと思ったりすることもあったが、そんな思いが吹き飛んだ。
次にスープに手を付ける。これもまたおいしい。赤い見た目にそぐわずあっさりめのスープはどっしりとした肉によく合っている。
スープを飲んでそのまま白パンを頬張る。これも当然おいしい。
この世界で初めて食べた心から美味しいと言える食事を味わう。ただ幸せな時間もとうとう終わりが来てしまう。
「あぁ、もうない・・・・・・でもほんとおいしかった。またこよ」
「満足したみたいで良かったぜ。俺も満足だよ。じゃあ会計頼んだぜ」
「うん」
そして会計を行う。
「たかい・・・・・・」
その値段は二人分で15万ギルもした。おいしかったけど高すぎるよ。毎日でも食べたいクオリティだったがたまにのご馳走になりそうだ。
「高かったけどほんとにおいしかったよ。こんなにいいところを紹介してくれてありがとう。それにあんなにいい値段のするところでご馳走したんだからもうチャラでいいかな」
「おいおい、いいけどよぉ。まあ俺はこの街のうまい店を知り尽くしてるからな、これからも俺のお気に入りに連れてってやるよ」
「ん、楽しみにしてる。じゃあ午後のお仕事もがんばってね」
カイラスと別れてまた一人に戻る。これからどうしようか。
特に浮かばないがとりあえず領主の屋敷を見に行ってみようかな。どんな豪邸に住んでいるのか気になるし、暇つぶしにはいいだろう。
歩いて街の中心部にある領主の屋敷へ向かう。街の中心部はかなりの富豪が住まう地域だ。店も金持ち御用達のいい店が多い。これが領主の屋敷なのではないのかと思えるほどの邸宅がいくつもある。しかし本物は少しレベルが違った。領主の屋敷は屋敷というよりもはや宮殿と言って差し支えないほどの規模の建物だった。
屋敷の周りには衛兵が歩き回っており、防犯もバッチリだ。こんな屋敷に一度は住んでみたいものだ。実際住んだら広すぎて不便そうだが。
次は教会にでも行ってみようかな。この街にはオズワルド教というこの世界を創造したとされる神を主に崇拝する宗教の教会が存在する。創造神を信仰するだけあって土着信仰などではないかなりポピュラーな宗教なのではないだろうか。
教会は領主邸よりも東側にあるのでそちらに向かう。
教会の建物はかなり豪著で、教会の権威を象徴するのに余りある代物だった。外から見てこれなら中はどれほどのものなんだろうと思い中に入ろうとする。
__________入れない。
入ろうとしているのは礼拝堂で一般に開放されているはずだ。なんならわたしが入る前に一般の住民が中に入り祈りに行った。
謎の壁のようなものに遮られてどう頑張っても入ることができない。ただこれが見られるとなんだか良くない気がするので、離れることにしよう。
それにしてもどうして入れなかったのだろうか。特にこの世界で悪いことはしていないのだが・・・・・・
もしかしたらあれか・・・・・・私の種族が関わっているのだろうか?私の他の人と異なることなんてそれくらいしかない。まあ、種族関係なく異世界人全員が入れないのかもしれないがそれはおそらくないんじゃないかと思う。
だから私のオズという種族のせいだろう。名前もなんだかオズワルドという創造神に関わりがありそうな感じだし、関わりがあるのなら入れないのが逆に不思議だが。種族が原因と考えるのが妥当だろうな。
 




