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12話

 朝起きるといつもよりも明るかった。昨晩はキナ爺とともに酒を飲んだせいで寝すぎてしまったようだ。飲んだエールは決して上質なものではなかったが、キナ爺とともに飲んだあの味は決して忘れることはないと思う。


 ギルドの食堂で朝食を食べる。もうすでに食堂は開いてる時間だったので、パンとスープとをしっかりと食べられた。キナ爺はもうすでに森に出たのか、今日は休みなのかはわからないが食堂には姿が見えなかった。

 

 どっちみち今日からは一人で森へ向かうことになる。今まではキナ爺がいたが初めて一人で森に入ることになる。油断せず気を付けて行かなくては。


 南門へ向かって門兵にキナ爺は森に出たのか聞いてみる。門兵によるといつも通り門が開いてすぐに森へ向かったらしい。昨晩酒を飲んだにも関わらずいつも通り起きるなんて、キナ爺はさすがだ。


 森に入っていつもより慎重に歩みを進める。薬草はもちろん魔物の痕跡を見逃さないように歩いていく。

 

 手斧で草木を払いながら群生地に向かう。昨日キナ爺にまだ教えてもらっていない薬草の群生地などを簡易的な地図にして書いてもらったので羊皮紙に書かれたその地図を片手に歩いている。


「ん、ちゃんと着けたみたい」


 目的地について薬草をとって街に帰る。


 初めての一人での森歩きだったので少し緊張したが無事に帰ることができた。我ながら立派になったものだな。


____________________


 そうして一人での採取生活がはじまって4日目森の中で魔物の痕跡を見つけた。


 普段はまだ魔物があまり出ないエリアを歩いているのだが今日は珍しく近くに魔物がいるらしい。動物を見ることはあるが魔物の痕跡を見ることはないので緊張する。


「ふう・・・・・・どうしようか」


 キナ爺はいつまでも草取りばかりしているなよと言っていた。今まで通り魔物を避けて動くか、狩りに行くか迷う。


 この痕跡を見るとどうやらゴブリンが3匹っぽいがどうしようか。この辺に出てくる魔物といえばゴブリンかファングボアくらいのものだ。ゴブリンが3匹もいるといえど、まずゴブリンがそれよりも少ない数でいることが少ないのでこれは初陣としてはチャンスなのかもしれない。


「よし、やろう」


 覚悟を決めて狩りに行くことにする。ゴブリンたちがここを通ってからそこまで時間は経っていないので、近くにいるのだろう。


 とりあえずこのゴブリンたちの足跡を追うことにする。


 いつも以上に音を立てないように意識して歩いていく。

 

 そうしてしばらくすると遠くからゴブリンの鳴き声が聞こえてきた。木の陰からゴブリンたちの様子をうかがう。


 ゴブリンたちは周りを警戒することなく、大きな声を上げながら剣を振り回している。剣を持っているのは一匹だけで残りの2匹はこん棒だ。


 あの剣は見たことがあるな。前に一緒に採取に行ったあの男のものか?それならゴブリンたちはずいぶんと狩られずに生き残ったものだな。といってもあの時はゴブリンの集団は痕跡を見るに5匹はいたはずだ。

死んだのか、それとも今は離れているだけなのか。少し警戒する必要があるな。


 しばらくゴブリンの様子をうかがうとともに周囲の気配も探ったがほかにゴブリンがいる気配はない。


 よし、やるか。


 ただ、相手のほうが数が多いのでナイフを投げて遠距離から攻撃しよう。


 はじめは狙った所には飛ばず明後日の方向へ向かっていたナイフを、今ではかなりの精度で投げることができるようになっている。


 ゴブリンたちの視界の外へ回り、一番の脅威となる剣を持ったゴブリンへとナイフを投げつける。


 ______グギャッ


 ナイフは寸分違わず狙った喉元へと突き刺さる。それとともに剣を持ったゴブリンは倒れ苦しみもがき、異変に気付いた残りの2匹がこちらのほうを向く。


 仲間を殺されたせいか怒りをにじませた表情で、2匹は突進してくる。


 2匹は怒りで我を忘れたのかそれとももとより戦闘技術はお粗末なのか、隙だらけの状態で走ってくる。


 取り回しの良さをとって、剣は使わず左手にはメイス右手には手斧を持って迎え撃つ。


 まず先に私の方へ到達しそうな左のゴブリンから攻撃する。私に向かってこん棒を横腹に向かって振り下ろしてくるのを一歩下がってよける。


 走ってきた勢いのまま振り下ろした一撃がよけられて前につんのめる。その隙に左手に持つメイスを頭に叩きつけた。その一撃だけでゴブリンの頭は大きく凹み潰れてしまった。

 

 その死体をこん棒を振りかぶり私を叩こうとしていたもう一匹に向かって蹴って叩きつてやる。


 そうして大きく隙をさらしたゴブリンの首に斧を振り下ろす。斧はゴブリンの首を半ばまで断って息の根を止めた。


「ふう・・・・・・・・・」


 初めての戦闘に緊張したが、殺すことに抵抗はあまり感じなかったな。なんだかんだこの世界に馴染んできているのを感じる。何より現実世界よりもこっちのほうが私に合っている気がするし、現実は友達一人もいない空虚な生活な一方、こちらでは人とのつながりにも恵まれている。私が生きるべきなのはこっちの世界なのかもしれない。


 そんなことを考えながら、ゴブリンの討伐証明としてゴブリンの左耳を解体ナイフで切り取る。殺すのに抵抗を感じることはなかったが、死んだゴブリンから耳をとるのは気持ち悪かった。臭かったし。


 ゴブリンの耳と剣を拾って街に戻ることにする。今日は初めての魔物狩りで精神的に疲れてしまった。肉体的な疲労はそこまで感じていないので、ずいぶんと体力がついたなと自分でも思った。

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