9話
キナ爺との採取生活が始まって期間にして20日が経った。キナ爺からは多くの森の知識を得て、採集後の訓練ではカイラスが毎日付き合ってくれて戦闘の知識もある程度ついた。それとともに体力も筋力もかなりつき森を歩くのに息切れすることも全くなくなった。
カイラスとの訓練では模擬戦をしてくれることもあるのだが、カイラスは片腕しかないにも関わらず全然勝てないのがただただ悔しい。
そんなこんなでかなりこの世界にも馴染んできて、何よりかなりのお金が貯まってきた。これだけのお金があればある程度の装備を整えられるだろう。
ということで今日はキナ爺との採集はお休みで、職人街へ向かう。
カイラスに腕の良い鍛冶師のいる店を紹介してもらったのでその店へ向かった。
その店はほかの店と比べて規模が大きい店だった。その建物の大きさに圧倒されながらも店の中に入る。
ここは傭兵用の武器専門の店らしく、様々な武器が並んでいた。ただ建物と土地の大きさの割には正規品を並べる店舗内の広さはそれほどでもなく、その分鍛冶場などが大きく整備されているのだろう。
「こんにちは。傭兵ギルドのカイラスっていう男の紹介できたんだけど」
店の受付の女中に話しかける。
「カイラスさんの紹介ですか」
「うん、これ」
カイラスから預かっていた狼の描かれた紋章を見せる。
「少しこちら預かりますね。親方に確認してきますので、ちょうど親方は鍛冶作業中ですので少し時間がかかるかもしれませんが大丈夫ですか?」
「うん、待ってるからいいよ」
そう言って女中が裏へ消えていった。その間店に飾られた商品をよく見てみることにする。
これらの正規品は親方ではなくその弟子が作ったものだろうが、どれも素人目で見てみても見事な品ばかりだ。
ダガーにショートソード、ロングソードなどが置いてある。そのほとんどは鉄や青銅で作られたもののようだ。
カイラスに聞いた話によると、親方はホス山脈と大森林に囲まれた地域では随一の腕を持つ鍛冶師であるという。親方は多くの弟子がいて、その弟子たちも多くが素晴らしい腕を持っているらしい。
そうしてゆっくり時間を潰してしばらくして、店の裏からガタイがよく身長の小さい男が出てきた。
どうやら親方はドワーフであったらしい。この街では人間以外の種族をほとんど見ることはなかったので少し驚いた。
「おう、お前がカイラスが紹介してきたやつか」
そういって私のことをじろじろ見てくる。
「ふん、その大きさの剣を扱えるのか・・・・・・俺はガンズっていうんだ。お前の武器屋を作ってやるよ。何がいる?」
「ん、私はハナビ。えっと、今持ってるのがこの剣なんだけどこれと同じ大きさの剣で切るのにも使えるような剣と狭いとこで使いやすい大きさの斧かメイスが欲しいな」
「そうか。そうだな・・・・切れ味を考えるとするとかなり丈夫な素材を使う必要があるが、そこそこ貴重な金属になるからかなりの値段になるが手持ちは大丈夫か」
「うん、お金は薬草採取頑張って50万ギルも貯めたの。だから大丈夫」
「んー、まあ大体80万位にはなるだろうから足りないがカイラスからの紹介だからな。負けてやる」
「ん、ありがとう」
「できるまでは2週間くらいはいるからそれくらい経ったらまた来な」
「わかった。また来るね」
武器でお金を使いつくしてしまって防具はすぐには準備できないだろうがいい武器がそろえられたので満足としておこう。
ホス山脈と大森林に囲まれた地域一帯はもともと一つの国家がありましたが、ガンズはその国で一番といわれるほどの鍛冶師でした。この地域は人族がほとんどでガンズのようなドワーフやエルフのような異種族は少ないです。人族と異種族との交流はある程度行われていて、他の地域では上記の種族だけでなく、獣人などの種族を見ることができます。異種族は大陸の西側のほうが多くみられます。




