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王女と護衛  作者: きだおさむ
3/4

第3話

アリシアの護衛生活も、5年が過ぎた。


そのころ、地方で謀反が起こった。

北方の豪族オリヘン家のイバンが、王国に反旗を掲げたのだ。


イバンは勇猛な騎士だったので、何度も勲章を与えられた。

最初の授与式の後の食事会での、彼の作法はヒドいものだった。

人々は彼を笑った。

その後も、彼は勲章を与えらえるような武功を上げた。

だが、彼は授与式には出たが、その後の食事会は辞退した。

アリシアの父親も彼を説得したが、彼は「田舎では必要ない」といって作法を覚えようともせず、貴族社会とは距離をとった。


そして国王は彼を地方に追いやった。

「信頼するおまえに大事な地方を任せたいのだ。おまえ以外に任せられるものがいるだろうか」

言葉は美しいが、イバンは戦いに明け暮れる日々の中でそれが偽りだと気づいた。

以前の同僚は都で出世していく… だが自分は?

その彼が謀反を起こした。

「奪わずんば得られず」

それが、彼の得た教訓だった。


多勢に無勢ですぐに鎮圧される、との周囲の予想に反して戦線は拡大した。

イバンは北方の蛮族と組んで、その数を増やしたのだ。


アリシアの父親エンリケも兄ロドリゴも、鎮圧に向かった。

しかし、イバンは無敵だった。


兄ロドリゴから聞いた話では、イバンの戦い方は無茶苦茶だという。

民衆の家や畑に火を放ち、盾突くものは騎士であろうと民衆であろうと皆殺しにする。

およそ騎士にはあるまじき行為だ。

ロドリゴはその光景を見て涙したという。

「すべてのものが灰になってしまった。人も家も畑も村も町も。すべての思いも、美しかったものも」


こんな話も聞いた。

捕らえたイバンの部下を処刑しようとすると、その男がいった。

「命だけは助けてくれ。降伏したものを殺すのか」

ならば奴隷にと思い命を救おうとしたが、隙を見て斬り付けられ、首を取られた。

また別の話では、イバンの部下たちは、戦闘の最中に砂を顔めがけて投げつけ、その隙に斬りかかって来たという。

さらに別の話では、肉親を人質に取り、脅して降伏したものを皆殺しにしたそうだ。


ロドリゴはいった。

「騎士なんて名ばかりで、ヤツは野獣と同じだ。でも私たちはその野獣と戦わなければならない。ならば私たちも野獣になるしかない」

「彼らに勝てるでしょうか」

アリシアがいうと、彼は答えた。

「人殺しの大好きな野獣から、私たちはすべてものを守らなければならない。これは困難なことだ」


ロドリゴが死んだと伝えられたのは、それからすぐのことだった。

彼は野獣には、成りきれなかった。

アリシアは人知れず涙を流した。


「死んでしまえば、誇り高く戦ったかどうかなんて、誰にもわからない。勝つことだけがすべてだ」

イバンが語ったという言葉だ。

戦いは都の貴族にとっては昔のことだったが、地方のイバンにとっては現在進行形のことなのだ。


「始めたら後戻りなんてできない。全員殺すまで終われない」

これもイバンが語った言葉だという。

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