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王女と護衛  作者: きだおさむ
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第2話

ある日、王女に衣装室に連れていかれた。

「アリシア、おまえはどの服がいいと思う?」

「私は武術ばかりでしたので、服についての知識はありません」

「いいから! 選びなさい!」

わからないながらも、王女に似合いそうな服を選んでみた。

「これなどでしょうか」

すると、王女がいった。

「なら、それを着なさい」

「どういうことでしょうか?」

「おまえはいつもみすぼらしい恰好をしているから、これをあげるわ」

「こんな高価なものをいただくわけには参りません」

王妃にも訴え、なんとか辞退したが、王女にそんなふうに思われていたことにショックを受けた彼女は、身だしなみに注意をするようになった。


護衛となって1カ月ほどした頃、国王主催の狩りが催された。

久々に会った父親から近況を聞かれ、戸惑うことばかりだというと、父親からはじきに慣れると告げられた。

「おまえならできる」

何の根拠もないのに、自信たっぷりにそういう父親に、アリシアは「親バカだな」と思うとともに、その信頼をありがたくも思ったのだった。

狩りは、勢子と犬が向こう側から鳥を追い立てるのを、こちら側から弓で射る。

不規則に動く鳥を射止めるのは難しいが、アリシアも5羽ほど仕留めることができた。

このアリシアの姿が王女は気に入ったらしく、自分も馬に乗りたいといいだした。

もう少し大きくなってから、と何とかなだめて、その場は収まった。

しかし、その後もアリシアは、王女に馬に乗せることを求められ、人目を盗んで、その要求に応じたのだった。


「手綱は軽く握るだけ。足でしっかり体を支えてください」

馬に乗る王女を内心ハラハラしながら、アリシアは指導した。

王女がケガでもしたら、アリシアはどうなるかわからない。

人懐っこく優しいボニートという名前の馬を選んだ。

ボニートは食いしん坊で、与えるといつまでもエサを食べる。

賢い馬で、エサを入れる桶をひっくり返して「もう無いよ」と見せてやらないと納得しないのだった。

王女もそれを見てボニートを笑った。


国王は城内に庭園を持っていて、春には花が咲き乱れた。

ある日、王女が国王にねだった。

「今日の昼食は庭園で食べたいわ。いいでしょう?」

娘の希望に、国王も従った。

庭の芝生に豪華なシートが敷かれ、料理が運ばれ、皆で食事をした。

食事後、国王と王妃、王女は花や木を鑑賞され、感嘆の声を上げた。

若い男の侍従武官が、王女の馬役をして、彼女は国王にねだった。

「私も本物の馬に乗りたいわ」

しぶしぶ国王はそれを認め、王女とアリシアの秘密の馬の練習はこれで終わりとなったのだった。


国王はチコという犬を飼っていた。

国王が城に戻ってくると、シッポを振ってチコが出迎え、手袋を咥えて王妃のもとへ走る。

チコは城内のものに愛されていた。

アリシアもチコを可愛がり、王女もチコにエサを与えた。


ある日の朝、アリシアが城内に入ると、侍従武官が話しかけてきた。

「昨夜は大変だったぞ」

「何かあったんですか」

「イザベラ様がおまえを呼べ、といって聞かなかったんだ」

深夜だからと、なんとか押しとどめたそうだ。

王女に会うと朝の挨拶もそこそこに話し出した。

「恐ろしいものが出た。ベッドの私に黒い怪物が襲い掛かってきたのだ」

おそらく夢だろう、夜勤の侍従武官も侵入者は見当たらなかった、といっていた。

「では、私が今夜は泊まってイザベラ様を守ります」

「そうか。では、頼むぞ」

昨夜寝ていないせいか、王女はその日、居眠りをしないようにずっと気を張っていなくてはならなかった。

居眠りをしようとすると、家庭教師が咳払いをした。

すると王女は、ハッと目が覚めるのだった。

夜が来た。

心配そうにベッドからアリシアを見る王女に、彼女はいった。

「安心してお休みください」

その日、王女は心配でよく眠れなかった。

突然、隣のアリシアが待機する部屋で、騒ぎが起こった。

「アリシア! どうした!」

彼女は王女にいった。

「昨夜の犯人を捕まえました」

アリシアが手にしていたのは、犬のチコだった。

チコはフンフンと鼻をならし、シッポを振った。

犬は昨夜同様飛び上がってドアの取手を押し下げ、部屋の中に入ろうとしたのだ。

昨夜は王女の反応に驚いて、すぐに出て行ってしまったというわけだった。

王女はあきれた。

そして次の日から、また一人で眠るようになった。

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