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熱い温泉 怖れる視線
額の半分には色は同じだが、結ばれた髪の束が五本、肩まで下ろされている。閉じられたままの二つの目の他に、バイオミーの子機の光量で耳や口と人間として認識できる部位があるのは交叉対象だとタンポポ・タネは考えた。黒い火山に同化するための全身の皮膚の色と赤い毛と角も、マグマの危険を表すとも捉えられた。太く、たくましい角や足の筋肉に比べて、顔の輪郭は細く、長い線で顎を囲っていく。中心を真っ直ぐに、筋の通った鼻が高く備わっていた。口元は固く閉じられて、まだ何も発してはいない。その高い鼻に沿って、細く見えるも、鋭角に力強く支えている骨格の顎へと流れるラインの横顔を向けたのは、周りを観察しているのだろうか。目が合わないどころか、まだ開けられてもいないのが不思議だった。顔はタンポポ・タネと向き合ったまま、動いていない。
「えっ? 見えているの? それで」
ノベルアップと小説家になろうに同時投稿