理想像と人間像
空で待機している船のメッカーに巨大な生物データの照合をお願いし、ケンペキ・ショウはペンギンの群れを観察することにした。どうやら群れはすべてオスらしく、彼らはこの惑星の寒さを寄り添い合って生きているようだ。植物もなにもない分厚いだけの氷の上を歩き、海の中にいる小魚を長い嘴や小さい手で取って食べている。係りが決められていて、食事係や前衛係や夜守係、細かく分担されている。よく目で見てわかるのもそうだが、鳴き声にはたくさんの意味があり、過酷な環境で生きていくためには必ず群れの力が必要であり、それがそのまま豊かなコミュニケーションや寄り添い合える共感の能力につながり、言語として成り立っているのだ。地球の言語データを使えば、彼らから驚くほどの情報が伝えられるのだ。
「人間とはなにかと、考えさせられるな。君達の寄り添いの中に見つけたぞ。だからこそ、私も伝えよう。私は人間ゲノムを残す使命を託されたものだ。メッカー、船からルーナを出してくれ。彼らに、そしてルーナにも人間を見てもらおう。お互いのゲノムにさらに寄り添いや共感が発現すれば、人間を残すことになるのだ」
宇宙船のアームからスーツを纏った巨大な人間のモデルが一体降ろされた。バイザーが着いたフードを被り、片膝をついている。ペンギン達は皆揃って、顔を上げて見つめた。
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