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理想像と人間像

群れは二、三十匹ほどでケンペキ・ショウを輪に入れて、また寒さを凌ぎあっていく。着ているスーツは人間の技術の結晶で、あらゆる過酷環境に耐えられるので、必要は無かった。しかし、ケンペキ・ショウにとっては思いやるという人間行為がとても嬉しく、ペンギンの背中をさすったり、少し痛い抱擁を受け入れていた。海からは冷たい風が吹き、雪が空から落ちてくる。生身の人間なら一瞬で凍死でもしてしまいそうな環境で、よく生きているものだと、大きなペンギンの背中を軽く叩いた。笑うような声を出すので、思わずつられて笑ってしまった。

精神も言葉も持っているとして、ケンペキ・ショウは一人の人間として語り掛けていた。

「まったく、過酷な環境だな、係長。君たちしか、ここにはいないのか? 敵から逃げてきたのかと尋ねてきたが、まだいるのか? 最も人間ゲノムの光核が指し示すのは君たちだけなのだが」

「ワッ ワッ ワッー」

係長のペンギンが翼の先の手で海の先を指した。真っ黒く巨大な体がそこから勢いよく、飛び出してきた。ケンペキ・ショウが学んだ生物の記憶の中で、恐竜の姿が最も近い。ペンギンの群れに向かってでもくるのかと思ったが、一瞬見えた強靭で長い顎や堅い鱗は海に潜り、消えていった。あれがペンギン達の天敵なのだろうか、確かに巨大な生物だったが、吹雪く海からはもうなにも出てこず、獲物ならば不思議な光景である。


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