旅路と別れ道
三つ編みに結び垂らすルクミルの目が開けば、赤い瞳と見詰め合うことになった。長い旅路は山登りよりも過酷には違いないので、三姉妹の一人でも来てもらえれば十分だと思った。赤角人の目は口よりもよく語りかけてくる。言語は異なっても、背中や少し視線を合わせただけで、コミュニケーションが取れるのなら、言葉を相手の場所や距離を測るだけにするのもわかる。そう考えると、タンポポ・タネはルクミルから決して視線を逸らさずに、じっと目を合わせたままにする。小さい声でメーやモーと呟くので、もっと両目を近づけていくと、交叉したデーナの赤い角や、いっしょに温泉に入る風景が頭に描かれていく。
「想いを伝える距離や手段がお互いにあるっていいよね。家族や惑星と離れるのは赤角人のご先祖様も辿った道か。わかった。石像に挨拶したら、出発だ。最後に温泉に入ろう」
「お父さん。私もです。私の触爪だって、熱さには負けませんよ」
「キュミ キュミ キュア キュミ キュミ」
「リーダー。温泉の解析は済みました。足湯の温度と性質なら大丈夫です。二人のご機嫌も取ってあげてください。やってもらわないと、この先の道は進めないですし、騒がしいんですよ」
「ああ! せっかくの温泉だしな。いっしょに入るか。足湯」
赤角人や三姉妹は、初めて会った時のタンポポ・タネと同様にカシアにもチーシャにも怯えていたが、湯でバタ足をして驚かすチーシャや、温かさで花髪の色が変わったり、少しだけ毒づくカシアに、そして恐がりながらもいっしょに入るルクミルの個性に、いっしょに温泉に来た甲斐があったと思うのだった。色とりどり、形様々な芋を焼いたり、蒸したり、捏ねた料理や宝石グラスに入った地下水のもてなし、そして最後に赤角人達から宝石や甘い芋に似た植物の種を受け取れば、いよいよ火山の惑星から旅立つ時がきた。デーナはまた光の道を指し示してくれていたからだ。遠い星や遺伝子の命の光に、タンポポ・タネはまた飛び込んでいくのだった。
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