視点は頂点で
肩まで浸かると緊張感が解れてきた。熱い温度だったが、磨かれた底の肌触りや鉱物が明るい光を洞窟の中で放っており、黒い山肌とは違い、整えられた浴場の形式をタンポポ・タネは観察していた。そして、二人の赤角人と向き合った。目は固く閉じられたままだが、頭を守るための立派な赤い兜と同化するための黒い肌で生態の一つは伺えていた。その観察できる目を御相手に向けて、言語や意味を引き出せないか、声を掛けた。
「熱い温泉は嫌いではありません。まあ、入ったことがないのが、僕という人間であるタンポポ・タネです。あなたたちは温泉の女将さんとか大将ですか?」
「メ マーモク メメ」
兜のほうが両目を開いて、見つめ合うことができた。一瞬ではあったが、赤い瞳は輝きと熱を持っており、温かい蒸気を目の奥に感じた。必ず目を開けてからというのが、言語を発する際の特徴であり、しかし本当に瞬き程度で輝きが中々、美しい赤色が見られないのが、残念だった。
「メメメ モク ガン」
高く響く声で、一本だけの赤い角はこちらがY染色体の特徴なのだろう。兜とは違って、天を指さずに耳裏から肩まで垂れ下がって湯に浸かるほど、伸びている。頭はしっかりと守られているようだが、二本角よりも柔らかい真っ赤な髪が目立っている。マグマに同化させるための進化だろうかと、燃える塊が流れ、浅黒い肌やその影響で固く鋭い鉄にも映る顎に掛かる髪を一種の芸術品として眺めた。
「リーダー。まず、山登りで二人とも労わってくれています。熱の視線で凝りを取ってくれていますし、感嘆の表情として顔認識できています。言語の意味処理は、目の仕草と動きのほうが、赤い角を持つ方々の重点になっているようです。声の高さと響きに規則はないのですが、リーダーとの距離で適切な音量になっています」
「距離感で一番いい声と音で発しているだけというのは、面白いな。目でそれ以上に語れるというのか。僕にもわかったよ。二人はやっぱり、温泉の女将と大将さんだ。ここの温泉をめちゃくちゃ、自慢してたからな。山登ってきた甲斐があったな」
二人の視線で目や肩の疲れを取るだけでなく、赤い兜の瞳は鉱物の光を強くして道ができており、導くように湯から上がり、照らされた筋肉の背中を見せて、非常にたくましい太腿で進んでいく。タンポポ・タネもスーツを持って付いていくと、あっという間に体も髪も乾いていた。たくさんの宝石が壁に規則正しく、飾られてある広間と思えば、そこの一つに視線を向けて、輝いた箇所の下に入ると姿が見えなくなった。生物の視力を改めて考え直されていると、水色のジョッキの形のものを二つ持って、光の下から見えてきた。真っ赤な兜の頭に、体全体も同じ色で輝いている帷子で筋肉と太腿を覆っていた。
「防護の帷子鎧とは、山に怖れはあったとしても、やっぱり、風呂上りって、コーヒー牛乳だって、弟と妹がいる長男が言ってたんだよな。いただきます。いや、これは! 氷入りの梅ジュースじゃないか。ジン・ハナサカが花粉症にはこれなんだと、飲ませてくれてたんだよね。うめめ」
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