熱い温泉 怖れる視線
ノベルアップと小説家になろうに同時投稿
この声に驚いたようで、一瞬のまばたきで、赤い二つの目を確認できた。角も赤いものが逃げなかったのは、温泉の中で足を入れたままだったからだ。とりあえず、腰に提げている剣銃とバイオミーの子機を目で確認してから、様子をこのまま窺うことに決めた。バイオミーからで割れ目にいる数は三で、同じ形状の角を持っているとのことだった。衣服かどうかはまだわからないが、黒いタイツに見えるものと、浅い黒の膨らみとしっかりとした骨盤のラインに沿って、赤い薄着のドレスをきつく貼り付けているようだった。引きが強いのではと声が聞こえて、タンポポ・タネは頷いた。まずは、御相手の出方に合わせることにし、その目で見てもらおうと、一旦口を閉じて、じっと湯の色を見つめたままにした。こつ、こつと近づいてくる音がこの洞窟の中で響いてくる。黒く固まった火山の色と同じ足が目の前にきて、響かせた音の正体が細いくるぶしとたくましい太腿を支えている蹄だとわかった。黒い宝石が記憶の中の足袋のように形作られ、この岩や石の中に踏み込んでいく音だったのだ。そのまま、この湯の中へも入っていき、向き合うことになった。
「足湯だって、いいよね」