冬 三日月 作者: 浦田茗子 掲載日:2022/01/06 いくぶん遅くなった日の入りに、かすかに春の気配がする。 ひらけた空を見上げると、ほそい月が出ていた。 それは――、 * ちいさなねこの引っかききず。 いつだってさわやかにあまい、オレンジピール。 すれちがう景色のなかの、だれかのほほ咲(え)み。 美しい耳に、しるしのように光ったピアス。 すうっとひとすじ、切り絵か影絵か。 きらきら瞬くながれに浮かんだ、おだやかな舟。 * ――遠く近く、こころのとびらのそばにある、三日月の空。