シリアスになれない主人公
大変だ。大変な事が起きた。
聖女さんと平太による考察の結果、なんと彼等は"俺を作った犯人"に行き付いた……らしい。
俺の目の前で二人は【慈善】に対する怒りを露にしていた。
いや犯人も何も……俺の人形を作ったのは夜人だし、でっち上げたのは俺なんだけど。
それでも、彼等は俺じゃない犯人を見つけたらしいのだ。
はぇ~……すっごい冤罪。
(でも冤罪は、良くないよね? その【慈善】って人がどんな人か知らないけど、さすがに駄目かなぁ?)
聖女さん渾身の怒りを向けられる顔も知らぬ【慈善】を考えると、俺の貧弱な罪悪感が刺激された。
聞いた限り、慈善は完全な犯罪者なのだけど、冤罪を解くべきか悩む。
普通に考えれば「その人も違うよ」って聖女さんに伝えるべきなんだろう……けど、そうすると「じゃあ誰?」ってなるよね。うっわそれも困るぅ。
その場のノリと勢いで変なこと言わなければよかったと今更ながらに後悔。
いやでも言うぞ、言うぞ。
慈善も間違いだよって伝えるぞ。
俺は聖女さんの隣に立てる人間でいたいのだ。
誰かに罪を押し付けて、何食わぬ顔で聖女さんと笑い合うことなどできはしない。
そう決心しながら、聖女さんと平太の周りをウロウロ回る。
伝えたい事が有るのに言い出せない陰キャの行動そのものだ。
まぁ、否定した後の言い訳を考えてる最中だから、まだ言えないんだけど。
なんて思っていたら、また状勢が変動した。
突然、日光が遮られるように周囲が暗くなる。
空を見上げると、そこには大聖堂よりも数倍はありそうな巨大なお城が浮かんでいた。
唐突すぎることに皆の目が点になって数秒ほど経過。平太が叫んだ。
「や……やりやがったな【慈善】の野郎! 悪事がバレたから、ついに直接手を下してきやがった!」
下からだといまいち全体像が見えないのだが、城の土台となる地盤が視界を埋め尽くすように徐々に大きくなっていく。どうも城は街に向かって降下してきているようだった。
「あいつ、街に強行着陸する気だ! 城が落ちてくるぞ!」
まじかよ。
体当たりとか、それどんな最終攻撃だよ。
しかもよく見ればお城は何でか知らんが崩壊気味で、黒煙まで上げてる。重量数百キロは有りそうな礫や建材を、雨のように降らしながら急接近。そして三度、平太が声を上げた。
「おい、おい! 誰かあれ防げねぇのか!? 俺は無理だ、まだクールタイム中!」
「む、無茶言わないでくださいよ! 墜落まであと何秒ですか!? 詠唱も魔法陣も何にも準備できません!」
聖女さんがハッとしたように言い返す。
城の直径は分からんが数百メートル。下手すれば一キロ。そこに建造物を支える重厚な岩盤が付いているのだ。
総重量数十万トンを軽く超えるであろう質量攻撃は生半可な対策じゃ意味がない。ましてや、ごく短い制限時間付き。人間の力じゃどうしようもない。
「……なら、私が消し飛ばすか?」
ヤトに怒られたばかりだからか、サナティオがしょんぼり顔のままディアナに聞いた。
だが、すぐ自分で「いや待てよ」と首をひねる。
「もしかしたら冤罪かもしれん。これは不慮の事故で、城を体当たりさせる気じゃないのかも。じゃあまだ城内に無実の人とかいるのかなぁ……?」
「い、言ってる場合ですか!? サナティオ様しっかりしてくださいー! 皆死んじゃいますよ!?」
このまま城が落ちれば、街の死者は数千を超えるだろう。
城は自由落下にはなっていない。ぎりぎりで堪えているようだが、それは時間の問題っぽい。少しずつ落下速度が上がってきてる。
他にも降ってくる瓦礫もあるが、それは街のあちこちから打ちあがる魔法で小さな砂粒まで砕かれていた。街の各地に散った聖職者達が頑張ってくれているようだ。
(え、つーかなに? え? あれ黒燐教団の本拠地なの?)
平太の言う情報によって、いま順調に墜落中のお城が、黒燐教団の本拠地【月宮殿】という事が判明した。しかも城主は【慈善】という。
えー……ひっでぇ。
あいつら、非戦闘員ばかりの街に城を墜とすとかひっでーことするなぁ。
なんか教団リーダーの慈善は「俺の製作者」らしいし……うん。
さっきまで罪悪感あったけど、もういっそ、その人に俺の罪をかぶって貰ってもいいかもしれん気がして来た。こんな犯罪する人なら、後何個か罪状増えても変わらんでしょ。……駄目かな? やっぱ可哀想?
日本人特有の優柔不断加減で俺がうんうんと首をひねっていたら、夜の神の声がした。
―― そうする? ……んー、選択肢だけあげてくる。
あ、え?
夜の神ちゃんはボソッと何か言うと、ちょっとずつ気配が薄くなっていく。……あれ、どこか行くの?
(って、ああ! そんなこと言ってる場合じゃないよ! もうお城が堕ちるよ!?)
聖女さんは頑張って迎撃用戦略魔法の詠唱をしているようだが、間に合いそうにないと力なく首を振った。
聖女ちゃん――ラクシュミのこと――は、気持ちよさそうに夢の中。平太さんは力が出せないと頭を掻いて傍観中だし、サナティオ落ち込み中。ヤト死んだ。
「とりあえず落下だけ止めてみるか。いいかお前たち、攻撃は禁止だ。危ないから城を支えるだけだぞ――行け」
サナティオが片手を上げる。
その途端、街の各所から数百を超す子供姿の下級天使と、数十を超える中級天使が飛び出した。
空を切る軌跡を残しながら地盤の底に取り付いていく。そして、なんとか超質量を持ち上げようと純白の翼を羽ばたかせる。
天使たちは必死の表情だ。子供天使なんかは「うーん!」とか踏ん張りながら、か細い手で頑張っている。
しかし――止まらない。
優に数十万トンを超すであろう巨大建築物と地盤は、彼等の力をもってしても降下速度をゆっくりにするだけに留まった。
何人かの中位天使は魔法を使って持ち上げようとしているが、城は城で対魔法機能も持っているらしく、その効果を打ち消している。
「あー……きびしい?」
さすがに落としちゃだめだよね。
でも神様どっか行っちゃったし……うーん。
(ヤト死んじゃったしなぁ。昼間だから普通の夜人じゃダメだし……うーん?)
最悪ギリギリでサナティオが全てを消し飛ばすつもりらしいから、さほど俺に焦りはなかった。それに何となく"この程度"はどうとでもなるような気がしている。
ただ、サナティオが出来る限り消したくない風だったので、俺の方からも夜人にお願いするべきか悩んでいたのだ……が、その時、後ろから気だるげな声が掛けられた。
「んじゃぁ、私が手伝うか? ちょうど変化してたしな」
「あ、佳宵」
振り返ってみる。
変化してる佳宵と会うのは久しぶりー……と思ったら、何時もと違う佳宵がそこに居た。
なんか変な仮面付けてたのだ。
いつもの狐面じゃない。
佳宵の顔には、牙だけが描かれた怪しさ溢れる仮面が……あれ? それシオンの奴じゃない?
「拾った」
えぇー……どこで拾ったの。
止めてよ似合わない。
佳宵にはやっぱり狐姿が良く似合う。
なんだったら素顔を見せながら、アクセントで頭の横にちょこっとお面付けてる位が可愛くて丁度いい。
「ああ? んだそりゃ、恥ずかしいなぁ。まあ……主が言うなら……いいけどよ」
「ん。可愛い」
「……いいから、やるぞ!」
俺の要望を聞いて素顔を見せてくれた佳宵の顔に赤みが増した。
自分で言った通り恥ずかしかったのか、佳宵はその羞恥を振り払うように一際大きな柏手を打つ。そして両手を大きく広げて手のひらを左右に突き出した。
「喚!」
たった一言。なんと簡単な声かけか。
しかしその効果は絶大らしく、途端に強い地響きが俺たちに襲い掛かった。
震度4ぐらい? 結構揺れる。
だが、それはこれから起きる事の前兆に過ぎなかった。
佳宵が突き出した両手の先――街の外周のさらに先。数キロ遠くの地中から巨大な何かが飛び出した。細長い陰影が空中に向かって伸びていく。
「うわ」
蛇? ウナギ?
いいえ、ワームです……。
「うわぁぁ……」
ミミズの様なぬめりを帯びた外皮をもつ生物が二匹。左右から城に向かって飛び掛かる。
目がなく、手足もない紐状の生き物は、蠕虫らしさ全開で体を胎動させながら土台ごと城に巻きついた。
しかし、その大きさが尋常ではない。全長が数十キロを優に超える巨体のようだ。
尻尾……尻尾なのか頭なのか知らんけど、体は穴から全部出きっておらず、城に巻きついた部分と地面で支えられる部分が繋がれた
力も半端じゃないらしい。鎌首をもたげるように、左右から二匹のワームがアーチ状になって城を空中で固定する。
「な、んだこりゃぁ……!?」
「あ゛?」
平太が信じられないとばかりに、佳宵とワームを交互に見つめた。
それに対して佳宵が「こっち見んな」とばかりに地面を蹴って砂を飛ばす。高速で平太の目にin。目潰しだった。
「うぉおおおお!?」
「誰だテメェ。えぐり出されないだけ感謝しろ」
他人に素顔を見られることが嫌いな佳宵は、ゴソゴソと仮面を付け直す。もうシオンの仮面は飽きたらしい。今度は狐面だった。
一息ついたところを見計らって、城に巻き付いている二匹の超巨大ワームの事を聞いてみる。
「なにあれ」
「あん? 【島嶼喰い】と【国削ぎ】」
「え……二種、類?」
ちょっと待って、あの二匹って別種なの?
まじまじ見るとキモくて鳥肌立つから横目でチラッと見る。
【国削ぎ】と呼ばれたワームの外皮は薄ピンクで皮がぶよぶよと蠢いている。全身からあふれ出る粘液がテカリ光を反射した。……うーん、【島嶼喰い】と比べると、たしかに色素がちょっと薄いかなぁ?
……いや同じだよ! 見た感じ一緒!
しかも、結構どうでもいい情報!
「た、助かったぞ佳宵」
佳宵に突っ込むかどうか悩んでいたら、ぽかーんとワームを見つめていたサナティオが安堵の息を漏らしてお礼を言った。
……ホントぉ? 本当にこれ助かってるの?
たしかに城の落下は止まったけども。
俺が見る限り、なんか天使達が余計慌て始めたよ?
「――!?」
「――!!」
城の周囲に沢山いた天使が、我先にと逃げるように散って行く。
邪神の配下である佳宵を恐れているっぽいのもあるけど、それよりもワームの体についている粘液を恐れている感じだ。
粘着性を持って垂れ下がる液体を避けようと天使さん達は大混乱。空中で衝突事故が多発する。
「ワームの主食は天使だったからな。踊り食いだと更に"気持ちいい"んだとさ……あ、こら喰おうとするな馬鹿。おーい、やめろー」
「そりゃ逃げる」
夜人もそうだけど、天使も基本不滅で生き返るからね。
きっとワームの体内がトラウマなんだろうね、天使ちゃんズ……。
「……あ」
「なに佳宵。『あ』って何? もしかして、あれのこと?」
よく見れば、城の落下が止まった代わりにワームの粘液が垂れさがってきた。
びよーんと体中から何本も街に向かって滴り落ちる。天使も嫌いな粘液の水柱。
「え、あ……いやぁ? 別にぃ? 対処できるから、まっ、いいだろ」
いや街に落ちる! 街に落ちるって!?
何アレ、何アレ! 絶対ヤバい奴でしょ!? 何!? あれに触ると一体どうなるの!?
「結!」
「……おー?」
しかし、粘液は寸前の所で止まったようだ。
佳宵の第二魔法によって、粘液は石のように固定された。いや、よく見ればワームの体も完全に石となっている。ピンクだった肌が灰色に変わっていた。
「こいつら脳みそ無いからな。放っとけば天使に喰いかかるだろ、ついでに石像にした」
「殺したの? いいの?」
「また育てるわ。あー、でも卵残ってたかなぁ?」
あ……。
この怪物ワームの育ての親だったんですね佳宵さん。凄い趣味ですね佳宵さん。
さて。
巨大な空中城と、それを支える二本の石製アーチ(ワーム風)という悪趣味なものが、南都の新しい象徴として追加されたわけだが。
聖女さんとサナティオは神妙な表情で作戦会議を開いていた。
「突入するべきです。敵の首魁自ら突撃して来たのだから、ここで迎え撃つ他有りません」
「いいや様子見に回るべきだ。内部に敵影は見当たらない。無駄に刺激せず、住民の退避を優先する」
「……5時間はかかります。その間に敵が動かない保証がない」
「ならば動いてから迎え撃て。落ち着けディアナ。お前はヨルンの犯人を見つけたことで、気付かぬうちに興奮しているぞ」
「っそれは!」
攻勢派の聖女さんと、守勢派のサナティオの論争はサナティオ勝利で終わった。
いきなり突撃は血気盛んすぎるという事だろう。サナティオが安心させるように、ディアナの頭をぽんぽん撫でる。
「安心しろ。ここまで来たら私も手伝うさ。だから――」
と思ったら、サナティオの手が止まる。
ゆっくりと月宮殿の方を向き、冷や汗を一つ。
「……前言撤回だ。これは、突撃が正解みたいだな」
その言葉と同時に空中の城から多数の影が飛び降りた。
目の無い犬、巨大な昆虫の体に触手が生えたもの。人間っぽく見えるけど、肌が全部溶け落ちているもの。粘液状の生物に見えるが眼球が無数に浮いているもの。
他にも色々な不気味としか言えない生物が、次々街に降り立っていく。
「各員天使は全力で住民を守れぇえ!!」
サナティオの指示によって、天使たちは再び規律だって動き出した。敵の着地と同時に天使が飛び掛かる。
一人ひとりの力は天使の方が強いらしい。奇怪な生物群に対して、天使は優勢に戦っていた。しかし……なんというか、絵面が酷い。幼気な天使が、醜悪な化物に襲われてる図。うーーん、酷い。
「っ……はぁ、はぁ! な、なんなんですか、あれは!? あの化け物は!?」
「コイツは不味いんじゃねぇの? 闇寄りの俺はいけるし、ディアナも耐えきったけど……普通の人間がアイツ等見たら発狂しかねんだろう」
「ああ、早く殲滅しないとまずいな。だが数が多すぎる。どうも城内で無限発生している様なのだが……だめだ! 天使達が対処できる範囲を超えるぞ!」
うーーーん。これでハッキリ分かったけど、黒燐教団って素直に超極悪犯罪者では?
さすがにこれは俺も怒りがわいてくる。
「佳宵」
「あー、街も全滅していいなら?」
「……」
「じょ、冗談だよ。やんねぇって、んなこと」
じとーっと睨んだら、佳宵は深く考え込んだ。
そして自分なりの考えを教えてくれる。
「敵の戦力逐次投入がめんどくせなァ。一気に来てくれたら、人も化物も一纏めに昏睡させられんだけど……あー、んー」
ガリガリと頭を掻いて最適解を探す佳宵だったが、ふと顔を上げて俺を見ると言った。
「あ……悪い。時間切れだわ。んじゃ、また夜にな」
そしてポンと夜人姿に戻ると、日光に焼かれて消えていく。
えぇえええ。どういうタイミングぅ!?
そうこうしている内にも化物と天使たちの戦闘は続いているのだ。
家屋が破壊される音も断続的に続くし、被害はドンドンと拡大中。天使が避難もさせてるから、物理的な人的被害は少ないのだが、どうしても化物を視界に入れて発狂した人が続出してしまう。
「……では、私がやってみます」
この混乱にそう言って名乗り出たのは、やっぱり頼れる聖女さんだった。
彼女はなんだかマーブル模様になってるロザリオ――聖具ミトラス――を握り込むと、深く祈りを籠める。サナティオがそれを制止した。
「待て止めろ! あまりその聖具の力を引き出すな、人間の限界を超えかねん! それにその聖具は汚染されて――」
「いいえ。エリシア様の力が引き出せるなら、この程度の汚染なんという事はない。さっきそれを教えて貰いました。……それに、ちょっと無理しても守りたいじゃないですか。私の手の届く範囲にあるならば」
「何を言って――!?」
制止を振り切って、聖女さんはミトラスの能力を開放する。
ミトラスから放たれた極光が、世界を覆い尽くした白の世界。
時の流れすら遮られて誰も動けない空間で、何故か俺だけが普通に立っていた。
……なんかこの光景見た事あるような、無いような。
ああ、村でシオンと勘違いで戦っていた時にあったのか。
思い出していたら、あの時と同じようにミトラスから光が飛び出してきた。
何か近寄ってきたので恐る恐る指で触ってみる。わ、ぷよんと動いた。
「……人懐っこい」
ぐるぐると俺の周りを飛び交う光の玉。なんだか楽しそう。
それはその内、名残惜しそうに去って行く。そして聖女さんの体内に入り込んだ。……あれ、お前帰る場所ミトラスじゃないんかい。
「――っ!」
「おい! 大丈夫か! おい!」
そして時は動き出す。
聖女さんが苦し気に呻いた。
サナティオが慌てて近寄るが、大丈夫だと手を向けて制止する。
「私は、まだ大丈夫。それよりも街全体に結界を張りました。これで最低限大丈夫でしょう」
聖女さんは言う。
化物の力を抑える結界だと。これで「見た者を発狂させる」能力や、戦闘力を激減させる事が出来るだろうと。
「すみません……。私がもうちょっと頑張れれば、闇を消滅させる結界も張れたんですけど……」
「問題ない。お前はもう休め、後は私がけりを付けてくる」
「……いいえ。サナティオ様には街の守護をお願いします。これは敵を弱めるだけで、無力化したわけじゃない。いまサナティオ様が天使たちの指揮から離れると、防衛戦が崩壊しかねない」
それに、と聖女さんは続ける。
「私だって怒ってるんです。ヨルちゃんに酷い事した人を一発位殴りたいんですよ」
「……ふ。それもそうか」
サナティオが理解したという風に頷いているが……。
いや。いやいや。
『ふ……』じゃねぇから!
聖女さんを敵陣に突入させるとか、お前その意味分かってますの!?
敵の首魁は街に化物を投下する下種野郎だぞ!?
それに聖女さんだけ突撃させるとか正気かテメェ!? 敵の手に落ちたら聖女さんどんな目に合うのか分かんねぇぞ!?
「だめ……聖女さん、だめ」
いやいやと首を振りながら聖女さんの服を引っ張って制止する。
城の落下から今までは俺もすぐ隣に居たからのんびりと見てられたが、敵陣突入とか俺は許しませんよ!
「……大丈夫だよ。私が全てを終わらせてくるからね」
いやいや。
「安心しろ。俺もまた戦えるようになったから同行しよう。慈善は俺の仲間だった男だ。なら俺が放っとく訳にはいかねぇだろう?」
いやいやいや!
黙れ佐藤! お前、サナティオに雑に負けそうになってたじゃん! どこに安心する要素あんだよ!
「ヨルン、行かせてやれ。ディアナは騎士だ。譲れない矜持がある者を騎士と言うのだ。ならば、騎士の戦いは誰にも制止できるものじゃない……それに中級天使も護衛に付けるつもりだからな」
サナティオうるせぇ!
俺はヤトから聞いて知ってるぞ! くっ殺系女騎士が騎士を語るな! 黙ぁっとれ!
でもいくら俺が否定しても聖女さんの決心は揺るがない。
あーもう! こうなりゃ最終手段だ。俺は聖女さんの背中に張り付いて宣言する。
「なら私も、付いていく……!!」
「ダメだよ」
「駄目だろ」
「いいや、お前はここに残ってろ」
こんなのオカシイだろぉ!!
無理です!
ヨルンちゃん視点でシリアスは無理があります!




