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コミュ障TS転生少女の千夜物語  作者: てぃー
2章

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34/73

普通の感性

 茶番襲撃事件から一夜明け、深淵の森の最深部。神殿第2層の会議室に俺は居た。


「反省会をする」


 大きなテーブルの一番偉い席につき、眼下に座る三人を見つめる。

 部屋にいるのはヤト、銀鉤、佳宵に俺を合わせた計四人。


「まず良かったところを褒める。最後の戦闘、私が魔法を受けた後の対応はよかった」


 紳士と聖女さんが放った合体魔法。

 あれを直撃した時は、死ぬかとビビったけど意外と何とかなった。


 だけどその時の焦りが夜人にも伝わったのだろう。それを機にヤトと佳宵が【変化】して参戦した。


 ヤトは空の光球を斬り飛ばし、佳宵は周囲に"病"を撒き散らした。病の症状は意識混濁と四肢の不全麻痺。しかし一晩で完治するという不思議病気。


 俺が戦っている時はずっと押されっぱなしだったけど、彼らの参戦だけで一気に状勢が傾いたのは格好よかった。

 ただ、二人とも夜人の山に押しつぶされて、終始埋もれっぱなしだったのは格好悪い。


 そう。ヤト達の参戦は全部後から知った事だ。

 当時の俺は二人が"変化"したことすら気付かなかった。彼等は雄姿を見てくれなかったと凹んでいたが、山で潰されて隠れてれば、そりゃね。


「次、悪かったところ。それ以外全部」


 なんだよ、ヨルンを攫いに来た女幹部って。

 なんだよ、あれは失敗作(笑)って。


 一晩たって冷静に立ち返ると、意味不明すぎた。あの場のノリで面倒な設定作ったなぁと反省。


 そもそもなんで、クソ鳥が俺の味方面して参戦してくるんだよ。全部アイツ等が悪いんだよ……。

 

「ん、どうぞ」


 丁度、会議室の扉がノックされて、コック帽子をかぶった夜人が入ってきた。


 持って来た皿の上には美味しそうな、から揚げが載っている。

 食欲を誘ういい匂いが鼻孔をくすぐる。ナイフとフォークで切ってみると、大量の肉汁があふれ出た。


「おー? ……欲しい人」


 四人の夜人が手を挙げた。というかコック、お前は自分で作れや。

 独断と偏見で、昨日一番の功労者である銀鉤にあげる。


「おいしい? ……そう。おいしいんだ」


 人面鳥のから揚げ。

 一緒に食べると聞かれても、俺は要らない。

 

 だってアイツ等、鳥のくせに首から上はマジで人間だったし。

 髪の毛あるわ、瞼あるわ、歯も鼻も全部人と一緒。鳥の首と人間の首を挿げ替えたと言うのが一番分かりやすい。


 でも殺す。

 アイツ等のせいで、こんな面倒なことになったんだ。責任は命で償ってください。


 そして目につく範囲の鳥を狩りつくせと命じた結果、数百羽の鳥が狩猟されてしまった。

 腐らすのも勿体ないから活用方法を探すように命じたんだが……。から揚げは予想しなかったな。一体誰が食べたいって言ったのかな?


「これで全部消費できる? ……無理? そう」


 銀鉤はとても嬉しそうに食べている。

 まるで美食レポーターのように、大げさに全身を使って感動をアピール。たまに自慢げに周りに見せつけて食べる。

 それを受けてヤトと佳宵がプルプルしてた。なんだろ、欲しかった?


「希望者に作ってあげて。ヤトと佳宵、欲しいなら後でコックから貰うといい」


 ……いる? 要らないらしい。


 なんでや。お前ら欲しがったじゃん。

 今も銀鉤を見て腹立たしそうに頬杖ついてるじゃん。


 コックには他の活用手段を模索するように指示。退出していった。


 別に料理に拘る必要は無い。俺は食べたくないし。

 鳥の他の使い道……なんだろう。肥料とか?


「……で、話を戻す。昨日の事件で、鳥の次に悪かったもの。ヤト分かる?」


「???」


 あんまり分かってない様子だが、暫くしてポンと手を叩いて気が付いた。


 ヤトが近くに置いといたヨルンちゃん人形を指さす。


「そう」


 正解だ。これがあったから、面倒なことになったとも言える。分かってるじゃないか。

 そしてヤトは紙に文字を書いた。


『性能、低かった、謝罪』


「そうじゃない」


「……???」


 ダメだ。こいつ理解してない。

 俺はため息をついて、説明する。


「こんな目覚めない人形、怪しいよね。しかも持ってくるタイミング。最悪だよね?」


 そう言って叱責すると、ヤトは申し訳なさそうに謝罪した。


 うむ。

 こいつら馬鹿では無いから、言えば分かってくれるのだ。


 そしてヤトは紙に文字を書いた。


『次、自意識、つける』


「違う。そうじゃない」


「……???」


 なんでコイツは人形に対して自信満々なのか。目覚めないのが不満とは言ってない。

 お前らが思ってるほど、それ必要としてないぞ俺。勘弁してくれ。


『一杯、在庫、作った』

「え? ……何の在庫?」


 聞きたくない。嫌な予感が止まらない。

 そう思っていったのに、会議室の扉が開いて次々に運び込まれるヨルンちゃん人形。みんな同じ姿形。そして裸。


 なるほど。

 ……なーるほど。


 自分のクローンを量産された気分だ。


「……裸」


 エロさは微塵も感じない。

 この人形はまだ起動してないのか、息してないし、生気も感じない。


 まるで死体だ。そんな裸体が山なりに折り重なったところで不気味さしか感じない。


 で、こんなに一杯いつ使うのさ。

 在庫一杯、壊れても安心? 大は小を兼ねる?


 ……ばーか。お前らばーか。


「処分して」

『!?』


「全部処分」

『!!?』


 一体足りとも残すな! 今から焼却するぞ!

 ヤトと佳宵に縋りつかれながら人形を運び出そうとしたら、しかし待ったが掛った。


「ヨル、分かってない。これ凄いよ?」

「銀鉤……?」


 一日1回しか使えない変化をしてまで、俺に進言する銀鉤。

 彼は子犬姿で一つのヨルンちゃん人形に近づくと、前足で確かめるようにポンポンと叩いた。


「構成因子は足先から髪まで、ぜんぶ生体由来。内臓も中枢神経も完全再現。魂が入ってないだけで、肉体っていう器は完璧。ボク、がんばった」


「お前か犯人」


 銀鉤の首後ろを抓んで持ち上げる。


 褒めて欲しそうに潤んだ子犬の瞳で見つめてきた。上目遣いとは、コイツやりおる。でも言ってる内容がえげつない。


 ダメなモノは駄目。

 裸で折り重なるように倒れている大量のヨルンちゃん達みろ。感想を言え。


「幻想的だね」


 違う。見た人が発狂するわ。

 そう言っても諦めきれない様子で銀鉤が猛アピール。


「でも、でも! 使えるよ! 用途沢山。すごい有用!」


 神殿を飾る部品とか、夜人への褒美用だとか。一杯使えるよと銀鉤が言う。


 ……なに? 褒美用ってなに?

 キミら、俺の体をどう使うのさ。気持ち悪いこと言わないでくれる?


 いや、その前の「神殿に飾る」ってのも理解できない。

 死体を廊下に飾るって感性が分からない。銀鉤がワカラナイ……。


「あと、ボク、常に喋れるようになる」

「……ん?」


 こんなふうに、とでも言うように、銀鉤はモヤとなってヨルンちゃん人形に融けこんでいった。


 あ、これ合体だ。

 俺が銀鉤とよくやる奴。大人姿になる奴。


 そしてヨルンちゃん人形が一回ビクンと大きく震えると、電源が入ったようにむくりと起き上がった。

 体の調子を確かめるように、ぐーぱーぐーぱーと離握手を繰り返す姿は満足げだ。


「ヨルと合体すると肉体の主導権を貰えない。けど他の人なら大丈夫、自由自在。しかも"変化"と違うから時間は無制限。その分、能力制限は大きいけど便利。……ね?」


「なぜそれを早く言わない」


 マジかよ。

 長年の悩みの種が解消するじゃん! 意思疎通がスムーズになるじゃん!


『廃棄、却下?』


 ウキウキと言った感じでヤトが訪ねてきた。


 いや、廃棄するって。

 これは廃棄。決定。


 性能はいいよ、話せるようになるのは便利だね。

 でも、なんで俺と同じ見た目の人形使うの? 新しく別な器作ればいいじゃん。


『!!?』


 いや、なんでそんなショック受けてるの?







 そんなことが有って、会議は一度中断された。

 喋れるようになる事が判明したから、ヤトと佳宵にもモヤの体で人形に取り憑いてもらった。


 俺と同じ姿の人形は今利用する3つだけ残して、後はどこか一室に押し込んでおいた。処分待ちだ。


 おんなじ顔の人間が4人で会議とかホラーだが、そこは大丈夫。

 俺と銀鉤が合体した時同様に、合体後の見た目はヤト達の意思で変更可能なのだ。


「ん……できた。これどう?」


 銀鉤は俺を更にロリロリした感じになった。たぶん10歳ぐらいだろうか、頭の上に生えてる犬耳と尻尾が特徴。

 あ、狼なの? ごめん。ずっと犬扱いしてた。


 不満げに頬を膨らませて、にへっと笑う銀鉤。


 なんだ、あざとい幼女じゃねぇか。と、思ったら銀鉤ってオスらしい。

 え、じゃあお前、今TSしてるのか? ……俺の仲間か?


「なあ、狐面していいかー? 駄目か? え、駄目なのか……」


 佳宵は俺を少しだけ成長させた感じだ。

 俺の見た目が中学生ぐらいなら、佳宵は高校生くらい。


 側頭部に狐面を付けてるが、恥ずかしいのか顔に装備したがってる。でも顔にそれすると不気味で嫌だからダメ。


 あと佳宵の姿は目つきが悪い。

 ぱっと見、不良の女の子かなと思う見た目。

 言動を知れば、やっぱり不良だって確信できる。そんな佳宵さん。


 そして最後。ヤトなのだが……


「これでよろしいか主。玉体をそのまま拝借できれば、快然なのだが……」


 ヤトの合体、下手である。

 前の二人に比べて容姿変化がスッゴイ下手である。


 なんだろう、顔の造形が崩れてる?

 何故か目の焦点が合って無いし、眼孔もくぼみが強いせいで目の下がクマみたいに見える。肉付きもあんまりよくないし、血色も悪い。


 うーん……あれだ。薬漬けでおかしくなってる人って感じを受ける。

 その姿を取られると、ぶっちゃけ怖い。


「……慙愧の至り。私は斯様な小手先の技術は好かぬ故」


 ヤトの姿も20台前半位の年齢だろうか。俺の大人verと同じくらい。ただし病的。


 佳宵が「下手くそー」とか煽っているが、ヤトは申し訳なさそうに身を縮めるばかり。銀鉤は我関せずで自分の体の匂いを嗅いでいる。


 うむ。


 うむうむ。


 ……なんで、みんなヨルンちゃんの面影残してるん? 素体の人形がヨルンちゃんだったから?


 まあいいや。

 とりあえず、みんなにずっと聞きたかったこと。制限時間もあって聞けなかったことを尋ねてみる。


 彼等にとって俺はどういう存在なのだろうか? 一体、俺を何だと思って従ってくれているのか。あるいは前の世界の事を認識しているのか?


「主は主であろう。闊大(かつだい)にして(うけ)はしげたる夜の空。そして我等が生まれ出ずる源にして還るべき闇の底。前の世界……? 敵神と殺し合っていた時代の事だろうか?」


 ヤトの言である。

 半分以上、意味不明なのでスルー。


「あー……私は小難しい事は気にしねぇからな。あんまり考えねぇや。とりあえず……気にしねぇや」


 佳宵は駄目な子。


「うーん……ん。ボクがヨルを何だと思ってる……ってなに?」


 銀鉤は理解してない様子。

 

(聞いてみたはいいけど、情報が皆無なんですが)


 俺もあんまり自分の情報は開示したくない。元人間ですとか、絶対言えない。

 夜の神はこの身に宿ってるみたいだけど、俺自身は【夜の神】じゃないのだ。つまり、こいつ等の主そのものではないのだ。

 なのに全幅の信頼を置いて従ってくれるのが不思議だった。


 まあ、日々の態度から嫌われてはいないと思うから、とりあえず良しとする。藪蛇になると悪いので話題を変えよう。


「夜人いま500人いるけど、ヤト達以外にも姿が有った方が便利?」


「首肯。私達が主力であったが、ほかにも"変化"が使えるモノは存在した。未だかつての力を取り戻してないようだが、(したた)めさせて頂ければ、感佩の外に無い」


 ヤトが同意したので、俺も許可する。


「いいよ。ただ、私の姿の人形は認めない。他のを使って喋るように」

(しか)と。奴等の依代は、簡易品を用いよう」


 ではその辺の準備は任せる。

 他に喋れる人が居るなら、後で自己紹介と顔合わせはしっかりしたい。人形は何時頃できるだろう?


 そう尋ねると銀鉤が得意げにテーブルへと身を乗り出した。


「低品質でいいなら3時間。製造工場は作ってるから、早いよ」


 ……これ工場製品なのか。

 というか、そんな量産するつもりだったのかお前ら。


 深く聞くと怖すぎるので聞かないけど、俺の姿の人形はこれ以上の増産を認めない。あと完成品は絶対破棄するように命令する。


「なー、1人ぐらいダメか? なー」


 佳宵が口をとがらせて不満顔だが、ダメ。

 だから何に使うんだよお前。欲しい理由を言え理由を。


 そう聞けば、三人とも目を逸らした。

 ……絶対許可できないわ、これ。


 夜人(こいつら)の価値観が本当に分からないので、こっちがおかしくなりそうだ。

 踏み込むべきじゃない場所はスルーしよう。


 お前らが今使ってる依代も臨時品だからな。それは後で破棄して、ちゃんと作り直せよ。


「さて……じゃあ、反省会の続きする」


 気を取り直して、会議を再開。


 まずは情報共有だ。

 「ヨルン」の出自に関して、悪の組織――黒燐教団の出身という扱いにする事を確認する。


 昨日のノリで決まってしまった事だが、偽装工作はしっかりやった方がいい。

 この神殿にも所々に黒燐教団の証である【三つ目印】を刻んでもらう事とする。


「えぇ……やだ、やだ」


 銀鉤がしょんぼりと反対してる。恐らく彼等にも神話生物としてのプライドがあるんだろう。ごめん。

 でも偽装が必要なくなった時に外せる場所でいいから。取り換えられる扉とかでいいから。


「やだぁ……」


 渋々と言った感じで銀鉤が犬耳を萎れさせながら頷いた。言葉と動作が合って無い。


 そして、俺は教団に囚われていた少女Aだから人前で敬う事はしないように。

 三人ともその姿で人に会うことは恐らく無いだろうけど、どこからバレるか分からないし注意しておく。


 他にもいろいろと話し合いを進めていく。

 そして、最後。一番重要な事。


「じゃあ……どうやって村に帰ろう」


 俺は攫われた存在だ。

 一晩明けたし、サラッと「脱走して来たよ」と言って帰ってもいいのだが……受け入れてもらえるかな。


 昨日の様子を見る限り、俺が戻るとまた襲撃あると思って受け入れてくれないかもしれない。


 それに、聖女さんも泣かせてしまった。

 対面した時に申し訳なさ過ぎて、いつも通り振る舞えるだろうか……。


 そう言ってヤト達に相談したのだが、一笑に付された。


「杞憂であろう。奴等は所詮、力なき懦弱な敗残者。すべて脅せば済む話」

「そっそ。なんなら反対する奴は洗脳すればいいんじゃね? 私が村人全員、白痴にしとくか?」


 ちょっと二人は黙ってて。

 なんでこんな暴力的なのこの二人。


 小さな犬耳少女を抱きかかえて頭を撫でる。

 癒しは銀鉤しかないよぉ……。


「ヨル、村に帰りたい? 追い出されたくない?」

「……村に愛着はある。でも、大事なのは聖女さん。彼女と一緒にいたい」


 村人から嫌われるのは傷つくけど諦めが付く。元々仲良くないし。


 俺が一緒に居たいと思うのは、聖女さんだ。あと兵団の人たちも優しいから彼等もいれば、もっと楽しいだろう。

 逆に言えば彼等がいるなら、別の場所でもいい。

 

 でも彼等も仕事だろうし簡単に村から離れる事は出来ない。だから、彼等と共にいる場所としてあの村は大切なのだ。


「じゃあ良い手がある。相手に利と害を天秤に掛けさせればいいよ。丁度、便利な設定があるし」


 そう言って、銀鉤がアドバイスをくれた。


 昨日の襲撃犯は闇の陣営によるものだ。

 このまま帰れば、俺はそれを招いた存在として疎まれる。それは避けられない。


 だから銀鉤は、俺がそれを上回る"利"を提供すればいいと提案してくれた。追い出すよりも利があるなら、村も俺の滞在を受け入れるだろうと。


「……て、天才か」


 わしわしと銀鉤を撫でまわす。

 喉を鳴らして喜んだ。


「襲撃の危険に勝る村への利益が必要。でも、ただの村人は危険な場所から逃げたいのは当然で、人口流出の恐れは大きいよね?」


「うん」


「そうなると、ヨルが求める村が維持できないかも。だからそれも対策するよ」


「うん」


 自信満々に喋る銀鉤。

 彼は色々な可能性とか想定しうる展開を話してくれた。


 そして、ついに具体的な方法を語る。


「まず、村に死病を撒き散らすよ」

「うん。……うん?」


「放っておけば必ず死ぬ病気。手足の先から腐るとか、骨だけ溶けるとか、出来るだけ凄惨なモノがいいね。苦痛も長引けばもっといい」


「なんだ? 私の仕事か? いいぜぃ、やってやる」


 佳宵が鋭い歯を覗かせて嗤う。


「これは昨日の戦闘で撒かれた呪いから発症する病気。人間じゃあ解呪は不可能で、村人は一晩の内に十人ぐらい死んじゃう」


 待って。


「昼夜問わず聞こえる患者の呻き声。その症状はあっという間に村人全員に伝播する。赤子が死んで、老人も死滅。大人も死に瀕し、絶望に包まれる村」


 ちょっと待って。


「そこに現れるヨル。なんと闇の力で症状を押さえつける。でも完治はさせない。ヨルから離れれば再発。死んじゃう」


 なるほど。

 銀鉤が言わんとする事は理解した。

 

 村が俺を受け入れると襲撃のリスクがある。

 でも受け入れないと、病気で苦痛の果てに死ぬと……。しかも俺から離れると死ぬから、村からも逃げられない。

 

「ヨルは村に入れる! 村人は生きれる! win-winのハッピーエンド!」


 俺の膝の上で盛り上がる銀鉤。

 いや……バッドエンドじゃないかな?


 全然、利害の取引してないじゃん! 俺が裏で追い詰めるだけじゃん!?


「なるほど……首魁は闇の組織。主は救世主というわけか。良い作戦だ」

「私の出番があるのも分かってるじゃねぇか犬。昨日いいとこ無かったし、久しぶりに新しい奴つくるかぁ!」

「えへへー」


 まさに和気藹々といった会話。

 村人の事を一切考えない思考回路に頭が痛くなる。

 

「あー、もー……」


 これ、もしかして俺が夜人の制御ミスれば世界が危ないやつ?


 天井を仰ぎ見る。


 誰かまともな感性を持ってる人いないのー……?



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