表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミュ障TS転生少女の千夜物語  作者: てぃー
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/73

エピローグ


 あれから一週間以上たった朗らかな昼下がり。重吾はまだ村に居た。

 ディアナと共に村の広場で座っていた。


「じゃあ、じゃあ! これなんてどうです!? 3世代前の聖女様の名前! たぶん黒髪ちゃんに似合うと思うんです!」

「……うーん、女の子っぽい」

「えぇえええ!!」


 ディアナが重吾の名前を提案し、重吾はピンとこないとお断り。


「……! …!」

「だからそれは読めない。ダメ」


 ヤトが影から【夜の神】の名を猛プッシュ。

 またバッサリ切り捨てられる。


「ごめんなさい、私達もその文字を読めたらいいんだけど……」

「こらヤト。暴れない」


 落ち込んだ黒い腕を慰めるようにディアナが撫でるが、ヤトは触るなと手を振って抗議した。

 どうやらヤトは最近ディアナをライバル視している様子だ。しかし、すぐに日光に焼かれて消えていく。


「でも、よかった……。またこうやって貴方とのんびりできますね」

「……ん。私も、聖女さんの腕の中に慣れてきた」


 戦闘で崩壊した広場や家屋はいつの間にか復旧していた。

 前日まで確かにボロボロだったのに、朝、目覚めた時には直っていたのだ。なぜ一夜にして直ってるのか、誰が直したかは誰も分からなかった。


 ディアナや村人は不気味がったが、それ以外に何かが起きたというわけでもない。

 だが、ここ最近は不思議なことばかりが起こっていることもあってすぐに気にされなくなった。



 重吾はディアナの腕の中で木にもたれ掛る。

 その時、遠くから多くの足音と掛け声が聞こえてきた。


「おらぁ! 走れ走れ! 不甲斐ないぞ、お前たち!」


 広場の中を何十人もの兵士がフル装備で走り抜けていく。最後尾でレイト隊長が怒声を飛ばしながら追いかけていた。


「特にお前だ! 肝心な戦いの時に、森で敵にやられて寝こけていただと!? 一日の不始末は十日の鍛錬で返せ! あと10周!」

「はいっ! 申し訳ありません!」

「いい返事だ! ……そこ! お前は何をしている! 余裕があるな! 貴様も後10周!」

「痛ってええ!! はーい!」


 重吾に気づいた門番のオーエンが手を振って隊長に蹴り飛ばされていた。よくやるなぁと重吾は欠伸しながら兵士を見送った。


「でもあの戦いで犠牲者がだれも出なくてよかったです。黒髪ちゃんのおかげですね」

「うん。私の『力』のおかげ」


 幸い、シオンの襲撃で怪我人こそ出たものの死者はゼロだった。


 黒燐教団の復活を聞いて急行してきた騎士修道会がシオンを聖都に移送していったから、襲撃犯も既にいない。


 激戦を終えて大きな被害がなく、日常を取り戻せたのはまるで神の奇跡だと村人は噂しているが、あながち間違っていないんだろうなぁと重吾は思っていた。


(なあ夜の化身……いや【夜の神】。お前が何かしたんだろう?)


 村の広場が直ったのはなんでだ。夢で言っていた「森で兵士が死んだ」とはいったいなんだったのだ。

 重吾には訳が分からないことばかりだが、ぜんぶ寂しがり屋の神様が関わっていると確信していた。


 返事はない。

 あの時の夢で会ったっきり、再び黙り込んでしまった夜の神に重吾は仕方が無い奴だと笑みを零す。


「うん? どうしたの? 黒髪ちゃん」

「んーん……なんでもない」


 ディアナの手をつかんで重吾は自分の頭に乗せた。さあ撫でろという無言のアピールにディアナは笑いながら黒髪を梳いて応える。

 動作を通して感じる絆や親愛を一身に受けながら、重吾は気持ちよくて目を細めた。


(感じるかな。これが人の温かさだ。……なあ夜の神、俺は約束を守れたかな?)


 この世界に来てもう半月。

 重吾は新しい生活に馴染み始めていた。


 村はいい所だ。

 夜人は面白い人たちだ。

 兵士さん達は気さくで、隊長はしかめっ面が怖い厳格な男だ。


 そして聖女さんは優しくて暖かくて――大好きだ。



 空を見上げる。

 あの戦いの後から続く、澄み渡る晴天が綺麗な大空。


「いい心地ですね。じゃあ、今日はこのままお昼寝しましょうか!」

「うん。このまま……一緒に」


 まるで祝福するように肌を撫ぜる風が周囲を包み込む。

 太陽は今日も明るく二人を照らしていた。









 - end -

















 黒い部屋。円卓が置かれている。

 一つの空席を残して、6人の男女が腰かけている。

 老人、青年そして少女など老若男女様々な人たちだった。


「なあ、【純潔】の奴が捕まったんだって?」

「え、そうなの?」

「ああ、先週な。評議会の一員として情けない……と言いたいが、まあ仕方あるまい。相手はエクリプス司祭だ」


 ざわと、どよめきが沸いた。

 それはエクリプスが戦ったということと、黒燐教団の存在が表に出てしまったことへの動揺。

 誰も純潔の安否を憂いていなかった。


「ほぉ……未来の枢機卿か。それならば【忍耐】や【勤勉】も危ないかもしれんな」

「あぁ? ふざけないでもらいたいもんだ。教皇が相手だろうと、俺が負けるものか。これは純潔が弱かったから――」


 その時、部屋の扉が静かに開かれた。

 

「誰が弱かった、ですか?」


 カツカツと踵を鳴らして入室する一つの影。

 特徴的な仮面とロングコート。【純潔】と名乗るアルシナシオンだ。


「おや? お前さん、騎士団によって移送されていたはずでは……? それにもう処刑時刻のはず」

「なに逃げる程度、大したことはないものですよ。それより本日は大切なお話を持ってまいりました」

「へえ……話と来たか。なんだ期待できそうだな。黒燐教団の存在を明るみに出したことへの謝罪か? それともエクリプス司祭の力についてか? はたまたお前の新しい研究結果――」


 全員の注目が集まる中、シオンは相手の言葉を遮って――


「愛です」


 ――そう断言した。

 部屋中の人たちが静まり返る。


 あい……。なんだろうか、何かの隠語か、はたまたキーワード?


「愛! それは世界を包む優しさ! 私達は間違っていた! 歴史の解明、闇の研究おおいに結構! ですが、そこには確固たる愛が必要だったのです!」


 シオンは大げさな喜劇役者のように大仰に全身を動かして、ようやく気付けた真理を語る。

 周囲の同僚がポカンと呆けた。


「貴方ならわかるでしょう【感謝】。日ごろから全てに感謝している貴方なら理解できるはずだ。この世は愛によって支えられている!」


「え? ごめん……ちょっと……え?」


「ならば今日から意識すればよい! 生きとし生けるもの全てに贈る、(あまね)く愛と融和が世界を救うのです!」


 なんという悲劇! 私達は全て間違っていた!


 そう叫ぶシオンを除く6人の評議員の心が一つになった。


 ――――お前、頭おかしいんじゃねぇの……?


閑話を挟んで第二章に続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] その頭治してあげてよ、可哀想でしょう、百合に目覚めるのはいいけど、行き過ぎは良くない。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ