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10話 目撃

高評価・ブックマーク・感想、ありがとうございます!

親友である歌成に相談するため、昨日の出来事を回想してみたけど、まともに説明できる事が何一つなかった件について。


ぼくにも何が起きているか理解できていない上に、そもそもの発端がぼくの前世の記憶とか、会長の露出云々という秘密に関わってきて話せないのだから説明のしようがなかった。


相談がある、なんて重々しいこと言っておいて下らないと思ったのか、何故か女の子とデートをすると言ってから露骨に歌成の機嫌が悪いし、ここは一旦間を置くのがベストだと、ぼくの鋭い勘が訴えている。


ぼくは、折角のバイキングだから相談は店を出てからにしよう、と提案し仕切り直すことにした。そもそも、相談があると言っておいたのに時間制限のあるバイキングを指定してきた歌成に問題がある気がするけど、今は自然な言い訳が出来たから助かった。


「称賛。美しい俺に相応しい味であった」


甘いものを摂取して、機嫌を取り戻したであろう歌成と共に店を出て、ぼくは、歩きながら事の成行きを説明する。

とは言っても本当のことは言えないので、どうにか誤魔化せないかを考えて設定を生み出した。


『先日、男に絡まれている女性を助けたら、お礼をすると言われて日曜日に会うことになった』というものだ。歌成に嘘を吐いてもすぐバレるので、嘘にならないように、でも事情をぼかしつつ話したらこうなった。

ただ、こういう言い方をしたために、それでデートとか思っちゃうなんて可哀想……という哀れみの目を頂くことになってしまったが、名誉の負傷である。


さて、そこまで傷を負って歌成に相談したいことというのは、デートをする前にやっておくべきことについてだ。

デートコースについては、会長が何やら喜々として決めていたので(当日までのお楽しみと言われた)お任せするとして、それ以外で今から備えておけることがあればやっておきたい。


ぼくのそんな相談に、歌成はぼくの全身をつま先から天辺までゆっくりと見詰めて、ふむ、と頷くと話し始めた。


「改善点1。まず服装がダメだな。今時、小学生の方がまだマシな格好をしている」


「すいません、改善点1からダメージでかいんですが」


1と言うからには2以降もあるのだろう。初回から随分辛辣で真白さん、もう歌成に相談したことを後悔しているよ。

えっ、何も考えずにジーパンとTシャツなんだけど、今時の小学生ってどんなの着ているの?

ぼく、中学生の時からこんな服装だけど、前から思っていたとしたらもっと早く言って欲しかった。


「改善点2。髪型がそのまま過ぎる。朝起きて寝癖直しただけだろ?」


「寝癖を直したことを評価して下さい、お願いします」


友達と遊ぶだけなんだから寝癖を直したくらいで済ませてしまうものでしょ。とはいえ、確かにデートならばそこはしっかりセットしなくてはなるまい。やれるかどうかは別として。


「改善点3。君、女の子と話せるような話題あるのか?陰キャオタ童貞では三十秒も持たんだろ。

君とずっと話してあげるような物好きで優しいのは――俺だけなんだよ」


「えっ、歌成もしやぼくに恨みとかある?」


確かに上手いこと会話できている未来は見えないけども、攻撃力高過ぎません?殺しに来てますよね?

あまりにあんまりな評価に、ぼくは思わず尋ねた。甘いものを摂取したのに、まだなんか機嫌が悪い気がするし、何かぼくが歌成の恨みを買うようなことをしてしまっていたのかもしれない。


「む、否定。ただ正当に評価しているだけだが?」


「じゃあ、滅茶苦茶傷付いたわ」


親友にボコボコにされたので、明日行きたくなくなりました。

ぼくがあまりに落ち込んでいたのか、珍しく慌てた様子の歌成がやや微笑みながら。


「補完。君の良い所は外見的な面ではないからな」


「それ、トドメだね」


フォローに見せかけたナチュラルな外見ディスだよ!!外見的な面で褒めるべき点は一切ないということですよね!?


「てっ撤回。決して外見が悪いと言っているわけではなくてだな」


「もういいよ、悲しくなる」


確かにぼくは、歌成みたいに自分の容姿に絶対の自信を持っているわけではないし、人間の魅力は、決して外見だけで測れるものじゃないっていうのは賛同するけど、一個くらい、一ミリくらい、どこか褒めてくれても良いと思うんだ。

自信満々の顔で、君の良い所は外見的な面ではないからな、って最悪の補完だよ!


「か、解決策1!この俺が真白の服を選んでやろう」


傷付いたぼくが拗ね倒していたら、歌成が服を選んでくれることになった。いつも違う服着てるようなオシャレさんの歌成ならば、安心だ。こいつはこんなでも男なので男のファッションも分かるはずだし。着ているところは見たことないから勝手なイメージだけども。


そんなわけで、二人で足を運んだのは男性向けのファッションブランド専門店。カジュアルなブランドで、学生のお財布事情でも購入出来る範囲のお値段に抑えられていることから、今、高校生の間で人気のブランドだという。そういうファッションの流行って皆知っているものなのだろうか。

ちなみにぼくはこのファッションブランドを知らなかったので、歌成のそうした説明には知っている感じで頷いておいた。故に、ブランド名も覚えていない。


「選定1。これが良いだろう」


店内を物色して数分。歌成がササッと選んだ服を渡してくる。自分のを選ぶときは何時間も悩んでるのに、ぼくの時だけ早いの本当、歌成って感じ。ちなみに褒めてはいない。


「最適解。とりあえず全身黒にしておけば良い」


「適当過ぎんか」


「否定。可もなく不可もなく、相手に不快な印象を与えない無難な服装だ」


一朝一夕でオシャレは身に付かない。

どんなに良い服を完璧にコーディネートしても、それはそれを身に纏う人の気持ちや立ち振舞で大きくその印象を変えてしまうから。まずは初心者コーディネートとして、歌成は考えてくれた様なのだ。それにしても早すぎた気がしないでもないが、ここは歌成の意見を素直に聞いて試着してみることにした。


試着して鏡の前に立つと、やっぱり可もなく不可もない感じではあるものの、着替える前と比べると断然良くなったような気もする。


「推薦。それで多少はマシになっただろう」


満足そうに腕組をしてどや顔している歌成さんを見るに、やはりそれなりには仕上がっている様だ。


納得したぼくは、そのまま一式を購入する。カジュアルなブランドと言ってもやはり一式買うとそれなりのお値段になるが、物が良いからか満足感がある。これからも服を買うときは歌成に選んでもらおう。


散々言われたものの、これで明日はなんとかなりそうな気がしてきたから、お礼にクレープでも奢ることにした。さっきケーキを食べまくっていたはずなのにまだ甘いものを食べたいという甘党っぷりには呆れるが、クレープ一個でご機嫌になってくれるのならばありがたい話だ。


近くにある公園のキッチンカーでクレープを購入して、ベンチに座る。

沢山の種類があるクレープを選ぶのに、ぼくの服を選ぶよりずっと長い時間を掛けた歌成さんに驚愕したものの、出来上がるまでじっと店員さんが作っている様子を見ていたのが可愛らしかったので許した。わくわくが溢れてたね。


「催促。一口くれ」


「じゃあ、お前のもな」


お互いにクレープを差し出してそれぞれ一口齧る。小さい口で精一杯なるべく多く食べようと頑張る姿は男とはいえ、これまた可愛らしい。別に欲しければ二口でも三口でも食べていいのだが、こういうのは一口で食べるから良いんだろうな。


そんな風にのんびりと、平和に、公園のベンチでクレープを食べていたのだがーー



「お前、こんなところで何をやっている」



ーー目の前に、美人がいた。より正確に表現するのであれば、ブチギレた美人である。


女性にしては高いスラッと伸びた背丈。艷やかな黒髪のポニーテール。ぼくを睨むその瞳は丁寧に磨かれた黒曜石のよう。


紛れもなく、生徒会副会長・二階堂 薫(状態:激おこ)であった。


「随分と楽しそうだな、デートか?――ところで私はお前が聖歌と付き合っていると聞かされているわけだが?」



この人本当に毎回登場のタイミング悪過ぎませんかね!?



ご覧頂きありがとうございます。


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[良い点] 男とデートして何が悪いんですか?(すっとぼけ)
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