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「凍り付いた命」 都市伝説ネタ11「助けて」より

作者: 雷禅 神衣

年が明けた1月5日。場所は北海道。

つい先ほどまで笑顔だった電車の運転手は、起こってしまった現実を受け入れられないでいた。

何が何だか分からず、到着したパトカーのサイレンだけが耳に響く。

本当に自分がやってしまったのか・・・・。いや、これは夢ではないか?

しかし現実に一切の揺るぎは無い。運転手は踏み切りで女子高生を轢いてしまったのだ。

無論、故意ではない。おそらく自殺だろう。女子高生の方から踏み切りに入ってきたのだと

他の同僚もそれを目撃している。どうしようもなかったのだ・・・・。


通報を受けて到着した警察官と鑑識官の顔には諦めの色が浮かんでいた。

無理も無い。電車に轢かれた女子高生の身体ははバラバラになってしまい、もはや原型を留めぬほど酷い有様になってしまった。

死因は即死。事件状況は自殺と判断された。

警察官の野々村は鑑識の力を借りて、即座に飛び散った肉片の回収に当たった。

足首、腰、太もも、スネ……

そして、腰から上の上半身。やはり即死だったようだ。

「即死だな」

「ああ、酷いもんだよ」

引き渡された遺体を見て、鑑識官の大原が溜息を着いた。

「じゃあ、後は宜しくお願いします」

「分かりました」

そう言うと野々村は大原の乗る車から離れて行った。

自殺の場合、特に電車などによる投身自殺の場合、原型を留めていない可能性が強いため、救急車は呼ばれない。

バラバラになってしまった肉片はそれ専用の車に乗せられ、そのまま然るべき場所へと移送される。

その行く末を見守るのも鑑識官の役目だ。辛い現実だが遺族に会わせなければならない。

大原は既に運び込まれていた女子高生の腰から上の上半身に向かって手を合わせた。

「どうか成仏されますように・・・・」

「・・・・すけて・・・たすけ・・・・」

「えっ!」

大原の目の前で突然小さな声が聞こえた。

驚いた事に切断された女子高生の目が見開き、口をパクつかせながら助けを求めていたのだ。

即死と思われた彼女だが、轢かれた瞬間に寒い北海道の寒気のため、傷口が一瞬にして凍り付いた事で、絶命を瞬間的に免れたのだろう。

まだ意識のある上半身が必至で助けを求めている。

「たす・・け・・て・・・おね・・・がい・・・」

だがその声はどんどん小さくなっていく。当然だろう。何せ彼女の下半身は無いのだから。

現代の医学でどうにかなる問題の領域ではない。もはや助ける事は不可能だった。

もう何をやっても無駄だと分かっていた大原は、出来るだけ彼女の顔を見ないように、そっとビニールシートを被せた・・。



END

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