再会?
「はぁ...なんでこんな時期に親の転勤が決まるかなー、せっかく今の学校にもなれてきたってのにさぁ?しかもここって3回前住んでた地域じゃんかよ..まあここなら前いた友達にもあえるかも」
「うわっ。アノ子一人でブツブツいってるよ...キモっ」
「まあまあ人には人の悩みがあるんだからそんなこと言っちゃ悪いでしょうに笑?」
「それでもサー・・・」
ん?あの女二人今なんか俺に向けて言ってなかったか?
「あ・・また俺は思ってたことが口に出てたのかよ、あんだけいろんな人に気をつけろっていわれてたのに。」って別にいいじゃんか、第一今すれ違っている老若男女全員俺の人生にこれから関わっていくわけなじゃないんだし、
「..、.ぇ、ねえってば!!!!」
「うわっっっ!」
咄嗟の時って人はこんなよくある反応するものなのかと自分に感心してしまった。
「ねえだから聞いてるの!?」
「なんだようるせえな....」
揺さぶってくる人の手を振り払いつつ振り返ってみると、活発そうな女子がヘッドホンを首にかけてこっちをまっすぐ見ていた。
「これ、落としてたよ」
「あぁ、どうも...って、え??」
その子から渡されたのは紛れもなく俺のスマホだった。
「あれ?俺今も音楽聞いてるんだけど???」
混乱しつつもその子の顔を見るとこれでもかってくらい呆れた顔をしていた。
「そんなに混乱しないでさぁーよく考えなくとも、それに誰が見ても君が付けているイヤホンはワイヤレスでしょ」
「え、あ」
真っ白になっていた頭が急に恥ずかしさでいっぱいになった。
「どんだけ天然なのよ...」
そう言ったのに軽蔑の眼差しを向けたまま何故か立ち去ろうとしない、というよりは俺がそんな時間を与えなかったのかもしれない。
「あのっ、いつ落としてました?」
「いつって、多分この商店街の入り口くらいかな」
「そんな前から?ですか、」
それってもう50mくらい経ってるよな?こんな人混みの中なのによく追いかけてとどけてくれたんだ。
「あのっ、こんな所までありがとうございました!よかったらお礼させてください!」
人から受けた恩はできるだけすぐ返しなさいっていう教えのおかげか普段言えない言葉もこの時だけは自然に出せた。
「ごめん急いでるからー、そんなにお礼したいんだったら今度ここに連絡してくれる?あと君の名前もおしえて!」
「あ、はい。もみじほのきっていいます。楓に月そして秋です」
「ふうん。じゃあ月秋くんまたねー」
その子は一瞬俺の顔を見たあと急いで書いたメモを渡してそそくさと人混みに消えてしまった。
「春花ってどうして下の名前だけ??」
淡い欲望も満たさずそのメモの必要性も知らずに俺も元いた人混みの中に溶け込んでいった。。
「春花なんであんな嘘ついたの?」
「別にいいじゃん!そのほうがほのくんっていう確証もてるんだからさ」
「それだったら春花名字伝えといたほうがよかったくない?」
「いや、これでいいんだよ。今の私をほのくんに知られたくないんだよ」
ほのくんにはまだここには帰ってきて欲しくなかったよ。一生帰ってこないよりは断然いいけどさ。